届かない現実もリアルに伝えてくれる - 青空エールの感想

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青空エール

4.254.25
画力
4.00
ストーリー
4.00
キャラクター
4.00
設定
3.50
演出
3.75
感想数
2
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届かない現実もリアルに伝えてくれる

4.54.5
画力
4.0
ストーリー
4.0
キャラクター
4.5
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3.5
演出
3.5

目次

大介とつばさの二人三脚

野球部の男子と吹奏楽部の女子。この組み合わせは鉄板とも言えるね。応援する人とされる人。勝ってほしい・がんばってほしいって思う気持ち、すごく母性に近いし、ドキドキは恋愛にも部活への情熱にもリンクする。お互いに支えあい、刺激しあいながら、恋もして…毎日毎日、レギュラーになる・うまくなる・がんばるって声を掛け合える相手がいるって、どんなに心強いだろう。始まりは恋だったのか、憧れだったのかわからないけど、山田大介が小野つばさの背中を押し、小野つばさが山田大介の背中を押して、辛い事から逃げないと心に決めさせてくれたことは間違いない。始まりから全部一目惚れと言えるのかもしれない…。

青春の青い空、甲子園の透き通った空を思い浮かべて、音を鳴らす。こんな爽やかすぎるシチュエーション、なかなかないよね…すごい青くて、風が気持ち良すぎて、まぶしくて…大人になったら、なんとなく「そうそうそうだったよね」で片付けてしまうような気持ちの昂りも、あのときは本当にそれしか考えられないくらい大切で、貴重だった。一生懸命やっても夢が叶うかどうかは非常に難しくて、努力がなかなか報われないつばさ。初心者のつばさががんばっていて、経験者でしかも全国大会へも近い水島や先輩たちもがんばっている。絶対手を抜いていない。それでも、つばさが誰よりがんばっているんじゃないか。できない分を追い越すために、誰より真摯に、誰よりも時間を使っているんじゃないか…そう思ってしまう物語だ。

真っすぐであることから背けたくなる

大介とつばさは本当にまっすぐで、心が洗われまくる。若干穿った見方をする城戸だったけれど、大介とつばさに触発されてすっかり熱い男に。動機はヒマリへの恋心であるため不純とも言えるが、気づいたのは自分自身。そこが偉いし、尊敬できる。ヒマリもまた、つばさ、大介、城戸のことを変な目で見ることなく、部活に一生懸命な友達を心から応援している感じが非常に好印象。つばさと大介は、信頼できる友だちにも恵まれていることが非常に大きい。それも、自分からつかみにいって手に入れた友だちなのだから、嬉しいよね。がんばっていなければ手に入らなかったものばかりがそこにはある。

ただ、このまぶしすぎる真っすぐさは、呼んでいるほうからすると目を背けたくなるものでもある。「がんばったってどうせ…」この呪いのような言葉が、成長するほどにちらつくのだ。頑張れば叶う夢がいかに少ないか。現実的に足りないものばかりを考えて、挑戦しようとできない。失敗することをできるだけ少なくしようとして、常に成果を求めて、失敗すればすべてを失うと思う。その怖さが何らかの成功につながることもあるし、行動の妨げになることだってある。大人になるほど、きっと真っすぐであることが難しくなってくる。

時々自分の歩いている道が正しいのかどうか、それを確かめるための機会を持つことは重要だ。他人からの評価はその時代・人によってどうなるかわからない。大事なのは、自分自身の中に自律させるシステムを持ち合わせているのかどうかということ。青春の漫画は、何歳になったって心に響く作品ばかりだ。

正しく叱ってくれるときもあるし理不尽なときもある

部活の先輩であろうと、先生であろうと、親であろうと、みんな感情があって動いていて、焦っているときもあれば、穏やかなときもあり、怒りたいときもある。その中でみんなの心を一つにしなければ完成しないのが吹奏楽部や野球部などのチームが大事な部活動。その中では、1つの目標が定まっているから強く結びついていき、ほころびができてしまった時の反動が大きかったりする。最初は叱りながらも誠実さがあった先輩が、自分のメンタルが乱れてしまったときに、他人に同じように優しい教えを説いてくれるとは限らない。みんな人であり、いつも悩んで苦しんで生きているし、叱られたことが自分に思い当たることであって納得できる日もあれば、絶対そうじゃないと叫びたくなるような理不尽さを持っている日もある。

その中でどのように歩いていくかが大事。大介だって、つばさだって、心から大切にしたいからこそ正直に言葉を発したのに、それが多くの反感を買って輪を乱してしまったときがあった。というか、いつもそれ関係で何かしらこじれていて、2人の高校生活は嬉しい事と苦しいことが半分ずつ存在しているようだった。悲しいことがあっても前を向く。部活動に一生懸命取り組んでいる人たちは、たぶん悪い人たちじゃないんだよね。一生懸命だからこそ何かがこじれてしまうことがあって、立ち直れないくらいに傷つけあうこともある。それは誰も手を抜いていないからなんだ。そういう真面目で懸命な部活に所属したつばさと大介は非常に恵まれているよ。

真面目で裏がないことがどこまで伸びるか

実際、つばさのように完全吹奏楽初心者の人が、高校からトランペットを始めるってなって、全国大会に出場するまでにこぎつけるだろうか…まぁ、ソロではないんだし、間違いのない演奏で、そこに気持ちが乗っかったら、成功するのかもしれないよね。吹奏楽のことは詳しくないし、実際初心者から始めるなんて無謀なことだとは思うけど。でもつばさみたいに誰より努力できる子が近くにいてくれたら、どんな練習だってがんばれそう。

何より、どんなアドバイスにも反抗することなく、すべてをそのまま返そう・考えようと努力できる子って、本当に無敵だと思う。何をやらせても、ある程度まではきっと成長すると思うんだ。素直で、元気で、一生懸命な子がうまくならないわけがない。どんな部活動でも、そういう子たちが欲しいと思うよ。能力があっても性格が悪いとハブられるし、少し足りないくらいがかわいがられるよね。ブラックなところではいじめられてしまう可能性が高いけど、志高き部活ほど、クリーンであると思うんだ。そして、代々後輩を育てる伝統が染みついていると思うんだよ。

ただ、つばさと大介みたいに、全国大会への切符をつかめる高校生なんてほんの一握り。あらゆる努力を尽くすこと、環境を整えること、自分の事だけじゃなくあらゆることに目を向けること…。そのすべてができて、ようやくスタートラインといったところだろう。

がんばってる人を見ると泣きたくなる

同じ高校生のときは思わなかったのに、オトナになってこういう漫画を読むと、すごい泣きたくなるんだ。どれだけ打ちひしがれようと、怖いと思っても、「あの人がいるから」と思って勇気を出せる若人たち…。カッコ良すぎる。感動しているというよりかは、自分になくなってしまったものを持っていることが悔しくなる気がするよ。応援しているのに、どっかでは成功しないんじゃない?そんなに甘くないんじゃない?って言いたいんだよ。どっちにしろ、がんばってみなくちゃたどりつけない世界なのに、知ったふうな気持ちになって上から目線に諦めればいいと言ってくる…そんな人間にはなるはずじゃなかったのに。そういうハッとさせられるものが、この「青空エール」にはあると思うんだ。

高校3年間をかけて、じっくり深まっていく青春。すでに付き合っているような関係性だった大介とつばさが、高校1年生から比べてどんどん美しく成長していくのもまたいいよね。つばさは髪を伸ばしてかわいく。大介は体格が良くなって顔が凛々しくなって。こうやって、成長していくんだなーとしみじみさせてくれる。

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