純愛映画のバイブル的作品 - ある愛の詩の感想

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純愛映画のバイブル的作品

4.54.5
映像
4.0
脚本
4.5
キャスト
4.5
音楽
4.5
演出
4.0

目次

これぞ純愛映画

現在でもいわゆる「純愛映画」と言われる映画は数多くありますが、この『ある愛の詩』ほどの純愛映画はないと思います。1970年に公開されたこの映画は、実はエリック・シーガル氏の未完の小説を原作としています。その後、映画の完成の後に脚本をベースに小説は完成という作品です。発表こそ小説の方が早かったのですが、実は映画の方が先に完成していたんです。この映画が公開された時には、当たり前ですが私はまだ生まれてはいませんでした。ですが、母親が大好きな映画で、あまりにも素晴らしい作品だというのでレンタルで借りて見たのが一番最初の出会いでした。代々ハーバード大学出身という絵に描いたような御曹司であるオリバーと、普通の家庭で育ったジェニファーは、大学のアイスホッケーがキッカケとなって知り合います。急速に惹かれ合う2人ですが、オリバーの父親は大反対。元々オリバーとこの父親の関係はこじれていたのに、この事で更に険悪になってしまうのです。しかし、オリバーは家を捨てて彼女を選びました。と、ストーリー的には平凡な気がしますが、なんと言っても2人の初々しさがとても素敵なんです。父親の反対を押し切って、オリバーはジェニファーと結婚します。しかし、ジェニファーだって辛いんです。だって自分が原因でオリバーは父親と絶縁状態になってしまったんですから。なんとか仲直りして欲しいジェニファーは、オリバーとケンカになってしまいます。家を飛び出して行くジェニファー。オリバーはそんな彼女を追いかけます。捜して、捜して戻ったアパートの前にジェニファーがいました。そのなんとも愛らしい事。現在では、携帯電話というものがあるので、まず行き違いになる事がありません。切なさを演出する時に、携帯電話ではなかなか伝わらないでしょう。そうやって慎ましやかに暮らしていた2人ですが、ある日、悲劇が訪れます。ジェニファーが24歳という若さで白血病を発症してしまうんです。そして、高額な医療費を父親に援助してもらおうとしていた矢先に、彼女は亡くなってしまいます。しかし、彼女はオリバーに「愛とは決して後悔しない事」という言葉を残します。父親とは若いできたものの、オリバーの心は愛する者を失った哀しみに満ちています。思い出のスケートリンクを見つめるオリバーの後ろ姿と舞い降りる雪が、更に切ない気持ちにさせます。これですよっ。これこそ純愛ですよっ。壁ドンなんて足元にも及ばない純愛だと私は思います。

切なすぎる名曲

この映画を最大に盛り上げたのは、あの切なすぎるテーマ曲ですよね。数多くの映画音楽を手がけて来たフランシス・レイ氏によるもので、彼はこの曲でアカデミー賞を受賞しています。その後、アンディ・ウイリアムス版も発売され、日本でも尾崎紀世彦さんがカバーされています。あの美しく切ないメロディーは、聞く度に胸が締め付けられるような気持ちになるのですが、それでも何度でも聞きたい名曲です。作品がヒットした最大の理由は、映像とこの曲が合っていたからだと思います。

時代は癒しを求めていた

この頃、日本では銀座でマクドナルド1号店が、名古屋ではケルタッキーフライドチキンの1号店がそれぞれオープンして、やっと戦争の貧しさから豊かになろうとしている頃でした。女性達のファッションもカラフルになり、ロングヘアーが大流行となった時代。アメリカはベトナム戦争の最中で、経済的にも停滞していました。所得格差は広がり、人々の心も荒んで行ったに違いありません。そんな時代に作られたこの作品は、ある意味、時代を象徴する作品だったのかも知れません。人間はわがままな生き物です。平和な時にはバイオレンスものやアクション映画を好みますが、戦争や経済の停滞などが続くと精神的な癒しを求めて、人情話やドキュメンタリー映画を好みます。これは、私の勝手な見解ですが、ドラマや映画を見ればその時代が平和だったかどうかが分かります。現にバブルの時代には、ファッショナブルな衣装に身を包んだ男女がただ単にオシャレな会話をするだけというトレンディドラマが大流行しました。今思い返すと、なぜ流行ったのかさえさっぱり分かりません。意味不明な言葉が流行したり、海外から来たオシャレな食べ物を食べる事に、人々はステイタスを感じていたのです。しかし、バブルが崩壊した後は途端にトレンディドラマは姿を消して行きました。言うなれば、トレンディという言葉自体がもうトレンディではなかったのです。その代わり、人情的な話しや動物に癒しを求めるようになりました。こんなふうに何が流行したかで、その時代がいかに平和だったか分かります。この映画が日本で公開された時には日本は好景気のスタートを切ったばかりでした。まだ貧富の差が激しかった頃だからこそヒットしたのかもしれません。主人公の男性の豊かな生活よりも愛を選んだ姿勢に共感したのかもしれません。

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