純愛を超えた純愛
勇気のいる決断
音楽プロデューサーである石川啓吾は、かつての恋人が亡くなってからというもの、曲が書けずに自堕落な生活を送っていた。そんな啓吾と女子高校生の叶野真生との純愛物語というだけならこのドラマもごくごく当たり前のドラマだと思います。ですが、彼女がHIVつまりエイズに感染しているというのがこのドラマを最大に盛り上げる要素となっています。そして、援助交際という当時かなり問題になっていた話題を取り上げる事で、未成年者への警告という意味もあったのかもしれません。無関心な父親と不倫に走る母親という設定もかなりリアルです。そして、真生が援助交際をした理由も、チケット代が欲しかったからという単純なものでした。性行為はないという男の言葉を間に受けた彼女はホテルに連れ込まれそうになり抵抗します。しかし、日常を変えたいという思いから、一度だけと好きでもない男と性行為をしてしまうのです。でも、こういう女の子は当時かなり多かったのです。その理由も真生のように他愛ないものでした。もし、彼女の家庭がもう少しマシだったら彼女はこんな事はしなかったでしょう。その後、運命とも言える憧れの啓吾との出会い。更には気持ちが通じたという喜びから真生はすっかり援助交際の事は忘れていたに違いありません。そして、幸せの絶頂で聞いたHIV宣告はまだ若い彼女にはあまりにも残酷すぎます。そして、彼女は後悔した事でしょう。たった一度の軽い気持ちが自分の運命を変えてしまったのですから。そして、愛している人に真実を告げる恐怖。もしかしたら、一番怖い事は、愛している人にも感染させたのではないかという恐怖。しかし、啓吾は大丈夫でした。安堵する二人ですが、周囲がそんな二人の邪魔をします。特に、啓吾の亡くなった恋人の妹であるカヲルは何かと二人の邪魔をします。なんか、こういう設定が入ってくるとちょっと韓国ドラマみたいですよね。どうして日本人って三角関係とか、元カノの存在とか好きなんでしょう?こういうドラマにはそういった設定はいらないんだと思うんですよ。ただ、二人がどれだけ相手を思いやっているかが分かれば、それで良いと思うんです。それでも、最終的には真生が無事に赤ちゃんを出産して、結婚式までこぎつけたところまでは良かったんです。でも、まさか式の前に真生が旅立つなんて、それはあんまりではないですか?ドラマの内容も良かったし、主題歌も良かったけど、この最終回だけは納得出来ません。せめて、ちゃんと結婚式を挙げて欲しかったです。
リアルでした
真生役の深田恭子さんは、この時はまだデビュー間もない頃で、その初々しい演技が逆にリアルでした。現在の深田さんからは想像もできないぐらい演技もたどたどしく、笑い方もぎこちなく見えました。でも、だからこそドキュメンタリーにも似たリアルな演技に見えたんだと思います。もし、演技経験豊富な女優さんが演じていたら、もっとわざとらしくなっていたんじゃないのかな?でも、こんな難しい演技をデビュー間もないというのにこれほど完璧に演じた深田さんを見ていると、現在の活躍も納得出来ます。この時から彼女の才能は花開いていたんですね。とれから啓吾役をされた金城武さんはアジアで活躍されていたそうで、日本のドラマに出るのはこれが多分初めての事だと思います。綺麗な日本語のアクセントと、どこか日本人とは違う容姿が更にドラマを魅力的にしてくれました。なんだか本当に音楽プロデューサーに見えてきて、深田さんと並んだ時の身長差もバランスが良かったです。周囲を固めていたのがベテランの方が多かったので、逆に二人の演技が良い意味で目立っていたのかもしれません。ドラマが終わった後も、お二人の姿を見る度に最終回を思い出していました。
ドラマを盛り上げる要素
このドラマを盛り上げたもう一つの要素は、LUNASEAさんが歌う「IforYou」にあったと思います。元々このバンドの大ファンだった私は、主題歌をLUNASEAさんが歌うと聞いて喜びました。ボーカルの隆一さんの声はとても壮大で、物語のテーマとも良くあっていました。出だしの、「ねぇ、本当は誰も。ねぇ、愛せないと言われて」という一節は今聞いても泣いてしまいます。きっと啓吾の心を代弁するという意味で作られた曲だと思うんですね。真生の事を全力で守って上げたいという啓吾の気持ちが歌詞の中に溢れていて、特にサビの「心から君に伝えたい」という部分に来ると、胸が締め付けられる想いがします。そんな風に曲を聞いただけでストーリーが分かるというのはすごいですね。時々、CDで聞き直しても、やっぱりその度にドラマを思い出すんです。もう、ドラマと曲が一体化しているような感じがするぐらいです。内容が良くても主題歌が悪いとそれだけで冷めてしまうので、このドラマの主題歌がこの曲で良かったと心から思います。
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