独裁という設定に度肝を抜かれる!
独裁者だらけの世界で
タイトルにもある独裁。この日本国において良い印象の言葉ではありません。しかし、そこを逆手にとったのが、この漫画の魅力。独裁術という血文字を使った能力として描く新しさにシビれました。物を血文字で操るという能力で、人によって操れる対象が変わりますが、そこには当たり前のように人も含まれ、独裁術という言葉を見事に表現しています。
また、敵も味方もみんな独裁者。そんなに独裁者がいては大変な事になると感じたように、初回から終盤まで重要人物と思わしき人物がバッタバッタと死んでいきます。独裁者がいるとこうなると教えて下さっているような内容になってます。現実では一人でも大変な事になりかねませんから。
急展開の連続、やや急ぎ過ぎなような気がして・・・
漫画のトレンドとして、人の死、特に重要人物があっさり死ぬ事で読者に驚きを与える手法が多く観られるようです。この作品でも初回から教官がびっくりするくらいあっさり死ぬ事に始まり、バタバタ味方が死んでいきます。若干、やり過ぎなような気もしましたが、主人公に近しい人達はしっかり生きている事には安心できました。
また、全19話完結とかなり短くまとめられております。時代背景や自国と敵国の設定、主人公の生い立ちなど、掘り下げれば掘り下げるほど味の出る設定が盛り込まれていると感じますが、かなりシンプルに消化した感があります。もう少しゆっくりと進めても良いように感じてしまいました。特にキャラクターの掘り下げ方が欲しいと感じます。逆に言えばそれだけ主人公にスポットを当てた作品であるとも言えますが。
それでも、王道バトル漫画!
しかしながら、この作品は王道バトル漫画であると言えるほどの完成度は秘められています。主人公の無双ぶりしかり、全ての中心に主人公がいる設定しかり、初回から続く激しいバトルしかり。伏線もしっかり回収し、当初の目的をしっかり達成する主人公。一気読みに適した、非常にまとまった作品でしょう。正に王道バトル漫画ここにありといった印象です。
しかし、だからこそ、もっとゆっくりとした展開と濃密なバトルも観たかった事は事実です。独裁術を駆使した戦闘だけではなく、戦争という形のバトルや、国同士の争いを俯瞰的に観るような描写が欲しいと感じます。独裁という新しい設定に負けないような、王道の中にも邪道な点を駆使した、一風変わった作品として描いてもよいのではと感じる作品でした。
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