だからこんなにも涙が止まらない…!『女王の花』の素敵な魅力を語ります。
賢く強い主人公、亜紀が生み出す感動
この作品がここまで私たちの心を動かすのは、主人公亜紀がただのか弱い少女ではないからでしょう。亜紀は賢く、強いのです。多くの命や責任を背負って、自分の力で戦うのです。
描かれる戦や人間関係は、リアルで残酷。所詮少女漫画と侮るなかれ。だからこそその中で必死に考え、戦い、自分を押し殺して強くあろうとする亜紀に、私は涙を流さずにはいられません。「亜紀、頑張れ」「大丈夫、もうすぐ薄星が来るよ」と、気がつけば心の中で必死になって励ましています。
もしも彼女が、ただ薄星に守られているだけのか弱い少女だったらどうでしょう?そうなれば感動なんてもちろん生まれないし、薄星に対するときめきも何もありません。「心配しないで薄星 私が必ず助けてあげる」そう言って自分の腕を躊躇わず傷つけるような彼女だからこそ、亜紀を支える薄星の存在の大きさが大きくなり、2人のやりとり一つ一つに重みが感じられ、私たちの心は揺さぶられるのです。
美しい空の描写に惹き込まれる
この漫画で描かれる空は、なぜこんなに読んでいる人を惹きつけるのでしょうか。たびたび登場する空の描写に魅力を感じるのは、きっと私だけじゃないと思うんです。
亜紀が何かを決意した時、誰かに思いを馳せる時、ふっと過去を振り返った時、そんな時に現れる空がいつもものすごくきれいで、それを見るたび泣けてきます。さらに、空高く飛ぶ鳥であったり、円を描くような雲であったり、私たちの心をすーっと作品の中に引きずり込むような力があります。
昼間の空の青や夜の空に浮かぶ月の色など、白黒の画面を見ているはずなのに着色されて目に浮かぶのは、それだけ心に訴えかける描写だからでしょうか。
この作品で空はかなり重要です。これがあったから、最後の薄星の言葉が一層深く心に刺さったと思います。
「目をあげて この世は美しい」
ぐさり。もう本当にぐさりと心に刺さりました。そうだね、美しいね。亜紀、頑張れ。
“さよなら“ではない“再見“に涙
この作品では多くの登場人物が死んでいきます。そこは、どうしようもなく現実的です。しかし、青徹にしろ翠蟬にしろ薄星にしろ、自分は役目を果たしたのだというように笑顔で最期を迎えるのを見て、読んでいる私も少し救われる気がします。
特に素敵なのは、彼らが死を“永遠の別れ“と捉えていないところでしょうか。
青徹は遠く離れた亜紀を想いながら「再見(さらば)」と呟きました。
翠蟬は光に微笑みかけて、「先に行って待ってる」と言いました。
そして薄星は側で見守る亜紀に向けて、「再見(またね)」と微笑みました。
身分に縛られて生きる彼らにとって、もしかすると死は自由を意味するのかもしれません。死んで初めて、ただ好きな人と結ばれることができるのかもしれません。
でもそれだけではなくて、再見という言葉や最期の笑顔の中には、残されるものを励ます意味が込められているように思えるのです。「自分はこんなに幸せだよ。またいつかあなたに会えるのが楽しみだ」
というニュアンスのメッセージ。それを思うと、この人たちはなんて素敵なんだろうと涙が出ます。
“さよなら“ではなく“再見“。これはとてもこの漫画らしくて、愛に溢れた表現だと思います。大好きです。
結末の破片を実はいくつも知っていた
『女王の花』を読んでいて一番気になるのは、やはり最初のページに書かれている誰か目線の言葉でしょう。「~は言いました。」から始まるプロローグのようなあのページです。私はあの謎だらけの言葉が大好きで、新刊が出るたびに1巻からの全ての言葉を見返していました。
“女王様“の言葉であったり“王様“の言葉であったり“怪しい商人“の言葉であったり。きっと本編に繋がってくるのだろうと思いながらも、いつまで経っても意味がわからず、「最後までよくわからないまま終わるのかもしれない」なんて思ったりもしました。
それが、なんと全て物語の結末に結びついていたんですね。
最終巻で全てが繋がったときはもう鳥肌がたちました。「ああ、そういうことだったのね」と、また1から全部読み直してしまいました。例えば“怪しい商人“のことは完全に蛇波流のことだと思いこんでいましたから、書かれていたのがそんなに未来のことだとは思いませんでしたし。
こういう結末を暗示する仕掛けがあると、より続きが気になって楽しみになるんです。ヒントがあるからこそ逆に結末が読めなくてワクワクするんです。全てが繋がったときの何とも言えない興奮は、漫画に対する愛着をさらに強くしてくれます。
この仕掛けは、きっとしっかりとしたストーリー構成がなければできないことだと思うのです。これは私がこんなにもこの作品を大好きになった理由の一つです。
少女漫画の枠に収まらない!出会えたことに感謝です!
実は私はこの作品に出会うまで、少女漫画というジャンルにほとんど触れてきませんでした。というのも、少女漫画というと毎度お決まりの展開で進められていく恋愛ストーリーというイメージが強かったからです。
しかし『女王の花』は1度読んだらすっかりハマり、生まれて初めて単行本を全巻買い揃えてしまいました。空で言える台詞もたくさんあります。
亜紀と薄星の恋に胸を打たれ、恋愛ものにも少し興味を持つようになりました。
本当に私の価値観が変わった漫画です。出会えたことに感謝です!
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