いったいこの恋どうなるの - アシガールの感想

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アシガール

4.754.75
画力
4.00
ストーリー
5.00
キャラクター
4.00
設定
4.75
演出
3.75
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いったいこの恋どうなるの

4.54.5
画力
4.0
ストーリー
5.0
キャラクター
4.0
設定
4.5
演出
3.5

目次

ぐうたら女が覚醒する

唯の残念ぶりがすごい。でもけっこう気持ちわかる。勉強も、部活も、恋も。すべてがよくわからないもので、どうがんばったらいいのかもわからないし、なぜがんばるのかもわからない。踏ん切りを自分でつけることはできなくて、それでも進んでいかなくちゃならないってことがなんか違う世界の話のよう。先生からも、親からも、友だちからも、食い意地がすごいことと足が速いこと以外に褒めてあげられる部分がないと思われていた唯。彼女が戦国時代へのタイムスリップを通して、忠清様のために体を鍛え、戦を学び、誰かを思いやるということがどういうことかを戦国の育ての母や家臣たちから教わっていく。

それはもはや命がなくなるかどうか、というものなのに、唯はなぜかとても楽観的。病気かもしれないってくらいに何も考えていなくて、その場で「何とかしよう!」と全力を尽くす。どう考えたってあの美男子すぎる忠清様と恋仲になるのは無理だ…と思っていたから、まさかこんな甘い展開になるなんて、予想だにしなかった。唯は確かに残念な奴だけれど、忠清にとっては退屈しないうえに、450年先の未来を見せてくれた唯一無二の人。一人で生きていたら、絶対に見ることのできなかった世界を見ることのできた忠清のことを思うと、その命がすでに終わっていることが受け入れがたくて、悲しい。唯の写真を大事に持っていたであろう、忠清さんのことを想って、唯の家族みんなが何と言葉で表現したらいいのかわからない悲しみに包まれたとき、同じく出会ってしまったことを少し悲しく思った。

弟の尊様

すべては唯の弟、尊が天才で、タイムマシンを自作できてしまったことが始まり。最初は姉の突飛な行動のために起きてしまったことだけれど、恋した唯を止めることができず、燃料がなくなるまで何度も過去への移動を手伝ってしまう。そこには、尊だけは姉を大事に想っているってことが伝わってきて、姉のことを本気で心配したり、姉ががんばっていることを応援してあげようとしたり…姉弟愛が感じられて、いつも感動しているよ。君がいたから、唯は過去に行き、忠清と出会い、今までできもしなかった努力を自然とやって、どうにか忠清様を救おうと奮闘するようになった。尊がそういう人じゃなかったら、唯はぐうたら生活のまま、なににも希望を持てず、努力する価値も知らず、生きていったかもしれない。

尊は望んで過去へ行くマシンを作ったわけで、頭が良すぎるからおもしろい。驚いて動揺していても、解決策を一生懸命考えて捻り出す。何にも代えがたいブレーンだ。おもしろかったのは、忠清が初めて現代にやってきてしまった時の話。落ち着き払って病室にいる忠清。瀕死の状態だったはずなのに、目覚めたら見たこともない世界にいる。焦ってもしょうがない。よく観察し、ドンと構えて、成り行きを見定める。その姿勢に感動している尊が…いいなーって思った。さすが戦国時代の武将、考え方や肝のすわった精神は、現代にはないものだし、尊が尊敬するのも無理はないね。冷静に説明する尊、それを理解しようとする忠清。焦っておかしくなるでもなく、淡々と進める2人のやり取りはおもしろかった。唯とは全然違うんだもの。

忠清様のフェロモンにやられる

しかし、忠清様のフェロモン、最強だよね。唯があんなふうに描かれているのに、忠清様だけはあの美男子ぶり。もう男からみても惚れ惚れする、色男だ。そのうえ、民のため、臣下のため、城を守ると決めて戦に出る。焦りも見せず、悲しみも見せず、そこにあるのは冷静な態度・物腰だけ。その偉大さが素敵…!

唯が許嫁になろうとは、よもや思いもしなかった。大事な家来であることには変わりないけれど、そこから恋に広げるとはびっくり。どう考えたって、見た目のスペックが違いすぎるし…ただ、唯の一生懸命さ、あなたのために尽くしますという精神、その性格のダイナミックぶりと、未来からやってきて自分を守ろうとしてくれているという奇跡…いろいろなものを含めて考えて、忠清様はもう唯を手放すとか無理だよね。彼女のおかげで、いくつの戦で勝ってきたか。いくつの命を守ることができたのか。(詳しく言えば、唯のおかげだけじゃなく、尊の道具のおかげでもあるが…)それが恋と結びつかないほうが、難しいのかもしれない。

なんだかんだ、苦難を乗り越えるたびに唯の見た目も変わってきている気がするしね。かわいく、大人っぽく、勇ましくなっていると思う。表紙の絵のクオリティも相当高いし、実はめっちゃ絵がうまいんだろうね、作者さん。唯のキャラクターを考えたら、差をつけなきゃならないだろうけど…。忠清様の兄、成之殿は若干「信長協奏曲」を思い起こさせるテイストだね。アコ様の顔も絶妙なところをついているなー…。忠清様の容姿のきらびやかさがとにかく目立つ。

戦国時代とはいえ人である

戦国時代だからとはいえ、考える力とか、対応力っていうのはさほど違いはなかったのかも…って考えるようになった。その時あるもの、その時までに得られていた伝統をふまえ、その時できるベストをいつも尽くしてきたんだなーって思う。

それに、唯は自分の息子ではないのに、敢えて引き取って自分の子ども同様に扱ってくれたお母さま。彼女の懐の広さ、助け合い精神、女だからと容赦しない心意気と、真に唯が求める道を歩けるようにサポートする大和なでしこの心がすごく良くて、だから女がいなきゃ時代は作れないんだよね!って思った。彼女を娶った将軍もまた、いい目を持っていたと言える。

戦に望んで参加する者もいれば、望まない者もいる。生き延びる人がいれば、死んでしまった人がいる。だからこそ日々覚悟して生きていかなくてはならなくて、昨日まで幸せだった生活が、次の日には一変して地獄と化すこともあると、戦国を生きていた人たちは知っているんだよなーってしみじみ思う。覚悟もなく、のうのうと生きていられる時代は幸せだけれど、何かを生み出すバイタリティみたいなものって、ハングリー精神・どこまで自分を追い込めるかにかかっているし、それができる人が成功をおさめているのは事実。がんばらなくちゃならないよねって思うね。歴史系の漫画ってそういうやる気を引き出してくれる物語だ。

絶対一緒にはなれないから

これから物語がどう進むか?を考えると、やはり唯と忠清が末永く生きていくことは…難しいよね。タイムマシンで行き来できるのは一人だけ。逃がすことができる人間が一人だけなら、唯は忠清を現代に逃がそうとするだろうけれど、やっぱり忠清があるべき場所へ唯を返そうとすると思う。思いあっていて、結婚を約束しても、いつかは死んでしまうだろう。唯の大切な家族、尊や両親のこと、そして唯自身のことを思えばこそ、彼は命を捨ておいて、唯の幸せを願う気がする。

万が一、どうにかハッピーエンドにするのだとすれば二通りほど、想像できる。1つは、唯が戦国時代に残って、2人で生きていく道を行くこと。尊のほうからタイムマシンを何年か越しで再度つくってもらい、燃料も多めに作ってもらって、会いに来てくれればうまく物資の調達ができる気がする。もしくは、唯が現代に戻ったとき、忠清にそっくりすぎるほどそっくりなイケメンを見つけること。そして今度はその彼にアタックすることをがんばっていくこと…ちょっと嫌だけど、それなら唯らしい気もする。

全然くだらなくなんかない。これほどまでに、心の底からどうにかしたくて動くことがあるなら、立派だって思える。そんな漫画が「アシガール」。ドラマになるくらい、いい話だ。

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他のレビュアーの感想・評価

とにかくウケる

めちゃくちゃ面白い!久しぶりのクリティカルヒットでした!まず設定の女子高生が戦国時代にタイムスリップするっていうのがいいし、歴史ものの漫画特有の重さも全然ない。少女漫画なのにただのギャグ漫画的な要素が強いくて、何回読み返しても爆笑でした(笑)主人公のゆいも全然やる気のない、どか弁弁当をかついで学校にくるような女の子。その子が戦国時代の若君に一目惚れするっていうストリーなんですが、若君に近づくために足軽になります。そしてなぜかみごとに周りに女であることがバレず、その下りに関する絡みもいちいち面白い。後先考えずに突っ走るゆいは、みていて清々しいです。女子高校生というより中2の男子みたい(笑)でも、ゆいを見ているとポジティブすぎて、人生あんまり深く考えすぎない方が上手くいくのかな〜なんて思ってしまいました。どんなときでも、明るく前向きなのは大事ですね(笑)前進あるのみ、当たって砕けろ精神と、...この感想を読む

5.05.0
  • maamaa
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  • 566文字

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