衝撃的でとても怖い。
目次
ゲームの原作に応募し、選ばれた主人公が実際のゲーム制作に関わる…物語はそこから始まります。
しかし、そのゲーム制作に関してはすべてが謎。なぜなら、そのゲームは全身をプロトタイプで覆われ、実際に物語の中に入り込んでゲームをするという画期的なもので、その開発はアメリカで行われているという以外、すべてが企業秘密で謎に包まれている。小さなプレハブの制作会社に呼び出され、契約書のサインをし、ゲームを体験する現地へと、目隠しをされ、窓の無いヴァンで向かいます。ヴァンは建物内に止まり、そこから目隠しされたまま地下へ。目を開けた時、そこはとても近代的な場所で、とても高度なゲームの研究がなされています。思っていた以上のゲームプロジェクト、実際にゲームを始めると未だかつて経験した事のないその精度に主人公はゲームの世界へと熱中していきます。
ところが、一度目のゲームを終わった主人公は色々な引っかかりを感じます。
その小さな引っかかりが謎となり、どんどん物語の随所に残され、どんどん大きく膨らんでいき、ついには同じくゲームに関わったバイトの女の子が殺されたのではないか?という疑惑に広がっていきます。時間軸がどんどん歪んでいき、その時間軸の中に読者もどんどん巻き込まれていき、読み進めながら手に汗を握り、続きが気になってページを繰る手が止まりませんでした。ページを繰る手が止まらなくて、一気読みというミステリーファンには最高の展開です。ストーリー展開だけでなく、登場人物の人物描写がまた秀でていて、個人的には小説を読むに至ってかなり重要な部分で、ストーリーが面白くても、人物描写が深くないと、物語の面白さが半減しますが、そこはさすがです。
結末はすべてはゲームの中での事・・・なのですが。
主人公も読者も、一体どこまでが現実なのか、ゲームの中の事なのか分からなくなります。私はこの物語を読んだ後、もう一度最初からすぐ読み返し、それでもまた、どこまでが現実で、どこまでがゲームなのか分からず、主人公のように読みながら恐怖に陥ります。最初に読んだ時も衝撃的でしたが、何度読んでも衝撃です。個人的に最も読み直した作品の一つです。大好きな作品です。
主人公の最期、私だったらどうしただろう・・・、誰をどう信じただろう・・・と何度も、読み返すたびに考えます。最後、現実とゲームの中で錯乱した主人公に、ゲーム会社の人間が「実際はこんな場所ゲームをしたんだよ。今までずっとゲームは継続していたんだ。」と主人公に説明する部分はある意味衝撃的で、読んでいてもとても混乱の中で安心などできない。悪い夢が覚めた後、その夢の中でまだもがいているような、そんな感覚です。実際は悪い夢から目覚めた時はほっとするのですが・・・。(この物語の中ではそうはいきませんでした・・・。)
いつか、この物語のようなゲームが開発されるのでしょうか?でも、私は絶対したくないですが。汗。
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