妄想女子にはたまらないシンデレラストーリー - ラブセレブの感想

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ラブセレブ

3.753.75
画力
4.00
ストーリー
3.50
キャラクター
4.00
設定
3.50
演出
3.50
感想数
2
読んだ人
2

妄想女子にはたまらないシンデレラストーリー

3.53.5
画力
4.5
ストーリー
3.5
キャラクター
4.0
設定
3.0
演出
3.5

目次

「女子の夢・妄想」を表現

この作品を読むと非常に既視感を感じるのは、同じ新條まゆ氏の作品、快感フレーズや覇王愛人に非常に似通った展開だからだろう。

平凡な女子高生が、ある日突然イケメンのアイドルなり、金持ちなりマフィアなりに関わって、恋人関係になり、あっという間に人生が変容していく。そんな女性なら一度は願う玉の輿のような妄想、ラブセレブもその類の作品である。

快感フレーズや覇王愛人との違いとして、ラブセレブはあこがれの対象となる主人公藤原銀蔵の金持ち具合や権力とやらの描写が非常にあいまいである。音楽の才能で一財を築いた快感フレーズの大河内咲夜や、香港マフィアのボス黒龍に比較すると、銀蔵は祖父や父親が政界や財界の権力者というだけで、なぜ16歳なのにこんなに好き勝手ができるのかという疑問にぶち当たってしまい、いまいち彼がどう凄いのかよくわからない。

そういう意味では、ちびまる子ちゃんに出てくる花輪君が、親の職業が何なのかわからないがとにかくとてつもない資産家なのだ、という「夢を与えてくれる金持ち」という設定であれば、子細なことはいいじゃないかという、妄想特有の曖昧設定とも言える。

そういう設定をしっかりしてくれと思う人には向かないが、妄想の中なら何でもありだし、イケメンで金持ち、何でも願いをかなえてくれる人ならよいという世界観にひたるには、深く考えずに読む分にはエンターテインメント性のある作品だと思う。

高校生である必要性

この作品の性的内容を考えると、連載当時少女コミックに掲載されていたようだが、小学生から高校生が読むものとしてはかなり刺激が強いと思う。青年誌の様なあからさまな絵的性描写はないが、雰囲気やセリフだけでここまでのエロスを描ける作家は珍しいのではないだろうか。

性描写だけではなく、高校生であるはずの銀蔵の鶴の一声で芸能界に圧力をかけられるなどの描写があるが、この作品を最初読み始めた際、主人公のキララはともかく、銀蔵が16歳だとは誰も思わなかったのではないだろうか。

金持ちで大きな権力を持つ男性とのシンデレラストーリーを描く場合、年齢設定は本来20歳以上にした方が、特に男性の側の財力などを描く際には都合がい。ラブセレブでも、特に男性主人公の銀蔵については、親の七光りだけで権力を振りかざす16歳より、すでに社会的地位を得た大人として描いた方が、セレブとしての表現の幅が広がったようにも思う。

快感フレーズの大河内咲夜もそうだが、高校生設定にしてしまうと、外車の運転も無免許運転になってしまうし、飲酒も違法行為になってしまう。(そのせいか、ラブセレブでは車をお抱え運転手が運転している。違法行為への配慮かと思われる)

一方で、読者層を意識するにあたり、大人との恋愛よりそんなセレブが同じクラスにいたら?という読者の共感や夢を重視した結果、多少設定が破たんしても16歳にする必要があったのだろう。学生には夢がある作品と言えるが、大人が読むと少々無理を感じる部分ではある。

藤原銀蔵と丸鬼戸零二

ラブセレブを読む読者層だと、世代的にも週刊少年ジャンプで1992年から連載していた、梅澤春人氏のBOY(正式表示はOに斜線)HARELUYA IIは読んだことがないという人は多いと察する。

しかし、BOYを読んだ人なら、ラブセレブの銀蔵の行動は、まさしくBOYに出てくる悪党、丸鬼戸零二そのままでは?という既視感を覚えるだろう。丸鬼戸と銀蔵は、よくわからないが政財界に影響を持つ金持ちで親の力により、ある程度物事が自分の思い通りになってしまう点、寝たい女は誰構わず自分のものにしてしまう点では共通している。違いがあるとしたら、作品の中でその悪事が正当化されているのが銀蔵、正当化されていないのが丸鬼戸と言える。もっともビジュアルの点でも丸鬼戸はいかにも悪そうな顔をしているが、銀蔵はイケメンである点なども違いはある。

やっていることはほぼ同じなのに、扱いが違うだけでこうもキャラの立ち位置が変わってしまうかという点では興味深い。BOYのように、悪党にも使われているキャラ設定なので、銀蔵に万人の女性か好感を持てるか?というと、好き嫌いが二分しそうなキャラだと言える。

天真爛漫で憎めない、しかしもう一つ何かが欲しい

ラブセレブの中園キララも、快感フレーズの雪村愛音も、覇王愛人の秋野来実も、天真爛漫で憎めないキャラであり、かわいい系の女の子という共通点がある。セレブを虜にしてしまう理由づけとして、遊びで付き合っていた女性より擦れたところがなかったとか、ドジを放っておけないとか、意外にセクシーな一面もあるだとかが共通している。キララについてはアイドルとしての資質だったり、愛音は作詞の才能、来実は根性や母性など、それぞれ美点についても描かれているのだが、連載中に複数の男性から異様にモテて奪い合いになるには、あまりに彼女たちは凡庸すぎる、という印象がぬぐい切れない。

普通の女の子が自分に投影しやすいキャラである一方、それがゆえにカリスマ性に乏しいのだ。それにもかかわらず、社会的地位があり、ある程度モテる男性が彼女たちを奪い合う様子を見ていると、自分に重ねて羨ましく思っているうちはいいが、やや妄想が強引になってしまい、何でこの子がこんなにモテるのか?という疑問にぶち当たる。そういう意味では、女性キャラに、複数の男性を魅了し、読者女子を納得させるだけのカリスマ性、こうありたいという羨望の目で見られる個性を付加させても良いのではと感じる。凡庸であるのに無意味にモテてしまいすぎると、今度はあり得ないと夢から醒めてしまう。難しい加減ではあるが、読者がこうありたいと思えるカリスマ性が、女性キャラにもう一つあってもいいのではと感じる。

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