毎回普通に流れていくだけなのに心はじんわり優しくなり - 最後のレストランの感想

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最後のレストラン

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画力
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毎回普通に流れていくだけなのに心はじんわり優しくなり

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画力
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ストーリー
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キャラクター
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演出
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目次

自分の人生の最後の日に食べるもの

食事は人間の体をつくるもの。食べたモノでその人はできている。毎日何かしらを食べて、そこから栄養をもらって生きて、そして死ぬ。自分だったら何を食べたいだろうね。お母さんのあの料理?コンビニのあのスイーツ?有名店で食べたあの料理?…食事って、食べたら終わりで切ない気持ちになる。だけど、食べたら体の中で自分にとけて自分自身をつくってくれているんだよね。もっと感謝して食べるようにしてたら、肥満になんかならないんじゃないかな…。1つ1つが血肉になり、思考をくれる。

この物語では、偉人たちが主人公。歴史に名だたる人物が、最期のその時に食べたいと思ったものが何か…誰にもわからないけれど、そうだったらいいな、そうやって死んでいくことができたらいいな…って思う、しんみりさせるお話である。レストランの名前もHeaven’s Doorということで、あの世に行く前の通り道というわけだ。日本の普通の洋食屋なのだが、様々な国の様々な偉人たちが登場する。日本だけどほとんど外国人である…。日本って偉人少ない…。日本にとっての偉人ならたくさんいるけど、世界を変えてくれた人はごく一握りなんだよね。

歴史に名だたる偉人達だって人間であり、生まれて大きくなって成し遂げたいことを成し遂げた。それは幸運もあり、環境もあり、でも何より意志があったからだと思う。そんなすごい人たちでも、ご飯を食べておっきくなったのであり、食べたいものがあるはずなのだ。もちろん時代によって存在した食べ物、食べ方、その人だからこそ食べたいと思うものなど、いろいろなものが影響を与えている。それをかみしめつつ最期の食事を楽しむ偉人達。感慨深いものがある。

自分たちにもそれが伝わっていると知る

大昔に生きた人たちなのに、その人たちの想いや考えていたことは確実に今の私たちをつくっている。それは間違いがない。昔だったから理解されなかっただけで、今ならすんなりとわかること。彼らがいたからこそ、今の豊かな時代があるとわかるのだ。ほんの一握りの人間たちによってつくられたんだなーと思うとちょっと切ない気もするし、感慨深い気持ちにもなるし、人のすごさもわかるが、弱さも感じるね。生み出した本人が生きているときにはわからなかったかもしれないのが悲しいところで、死んで時が移ろってから遺したものが伝わるんだよね…だから、常に過去と、今と、未来を見据えて生きていかなきゃいけない気持ちになるよ。

坂本龍馬の話なんてけっこうすごくない?散々映画やらドラマやらで登場してきた彼が、この漫画でも登場。若くして暗殺されることがなんとなくわかっていて、それでも未来が自分たちが望んだ未来になっているならと死にに行った彼…切ないなんてもんじゃない。死にに行くんだよ?当時は無念だったかもしれない。でも、確実にあなたがいたからこその今だ。どうにかして伝えてやりたいよ。この漫画でならそれを伝えられる気がするから…いい漫画だなって思う。

偉人たちに善悪はあるか

ヒトラーやばし。完全に悪の元凶として彼は描かれた。あらゆる人を殺し、あらゆる人間に恐怖の記憶を与えた。でもそれは彼が悪かったのか、時代が悪かったのか…エグい部分にも敢えてメスを入れている、なかなかチャレンジャーな漫画だと思うよ。同じ人間であり、生まれて死ぬときは同じ立ち位置にいる。だからこそ、食べたいものだってきっとある…

もはやね、あなたたちがいたから今の私たちがいる。とすれば、悪い奴も良い奴も偉人なのであり、いないほうが良かったかと言われると断言はできないと思うんだ。そして、そんな人たちが死に際に食べたいと願うもの…知りたくない?

そんなふうに考えながら読むものでもなかったのかもしれないが、偉人たちに思いを馳せつつ読めば相当おもしろいだろう。歴史ってその偉人達がもっとも輝いた時や影響を与えた時を教えてくれるけど、死ぬときはほとんど教えてくれないじゃない。だから、死に際を知ると、より人となりがわかるし、人生の面白みを知るんだと思う。

時代も国も、全然限定せずに、いろいろな人たちを登場させてくれるこの漫画は、いろいろな価値観を伝えてくれる。過去のことなのに、学ばされることが大量に転がっているって知ることができるよ。事実が事実であることには変わりがないけど、それをもとにどう感じてどう行動するかは違うものになるんだね。そうやって昔の人は時代をつくってきたんだね。おじいちゃんおばあちゃんに尊敬をしたほうがいいよ、うん。

偉人たちの生きた時はつらかったかもしれない

飛びぬけて違う思考を持っている人って、けっこう人に嫌われるんだよね。それはその人の常識がまだ世間の常識ではないからだし、一歩間違えれば誰かを傷つけるかもしれないものであって、常に保守的な人間がそれを許せないからだ。興味があっても同調はできないとか、いろいろ難しいんだよね。今でこそいろいろ自由になって、発信しやすくなって、新しければ新しいほど許される時代になった。これが次の世代にどう受け継がれていくのかはわからないけれど、一長一短があって、どっちが偉いかってことは、その時にも、死んでからでも、わからないかもしれない。最後まで貫き通す人がいかに少ないか?でも確実にその少ない人たちによって支えられて物事が進んでいるって考えると、悲しいような気持ちにもなる。

オンリーワンになりたいくせに、打たれ強いわけではなくて、挫折しまくって。織田信長なんて、すげーじゃん。仲間がそれこそ少なくても、自分の力を信じてがんばったんだなーとか、そりゃー語り継がれるわ!ってことをしているもの。まさか未来の人の心に深く根差すものになるなんて、思わないよね。最後の死ぬ直前に、それを知ることのできるこのヘブンズドアのレストラン。マジで神でしょ。…想像だけど。

マリーアントワネットとか、ジャンヌダルクとか、好きだなー。やっぱりヒトラーも相当お気に入り。別にやったことは絶対に肯定はしたくないけどね。

できる限り続いていけばいいのにね

このヘブンズドア。最初の閑散期がいつの間にかなくなり、偉人たちが来るごとに客が増えている気がする。おいているインテリアが相当価値あるものだと気づき始めたか、パフォーマンスが見れると話題になっているか…どちらかはわからない。常に偉人達とシェフ・バイトたちが主人公だからね。園場さんとか、ヘタレ野郎だけど偉人たちが欲しい言葉をダイレクトに送っている。っていうか、偉人たちに出会うたびどんどんコメント秀逸になっていってるよね?天国手前のレストランでは、天国に何も持って行けないからこそ、プライスレスなものをプレゼントしてくれるのだ。

この手の漫画はいくらでも続いていきそうだが、いったいラストはどんな偉人で締めるのか?そう考えると最後まで読みたくならないだろうか。1つ1つのエピソードは、なぜか歴史に詳しいバイトさんが彩ろ豊かに説明してくれていて、なぜか死ぬ間際に過去に帰れなくなったジャンヌダルクも加わり、おいしい料理に一言プラスしてくれる。いいレストランに出会えて偉人達も幸福だろう。そんな素敵体験をさせてくれるレストランでも儲けは少ない。儲かるかどうかと幸せを与えるかどうかはまた別問題やなーとしみじみ思いつつ、このレストランのお話はしばらく続けてもらいたいなと願う。

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歴史の偉人達に想いを馳せながらしんみりする

死ぬ前に食べたいものから偉人を紐解くもし明日自分が死んでしまうとしたら、私たちは最期に何を食べたいと思うでしょうか?典型的な質問として、よくあるこの言葉。お母さんの手料理を食べたいとか、有名店で食べたあの肉料理をもう一度でいいから食べたいとか、いろいろな答えがあることでしょう。個人的には、最期に何を食べたいかなんて聞かれても、うーんなんでしょうね…って答えるくらいなもので、全然食への執着はないのですが。この漫画を読むと、食事って大事だなって気づくんですよね。このレストランの名前はHeaven's Door(ヘブンズドア)。まさに天国へ行く前に、偉人たちが時を越えて立ち寄る食事処。どんな漫画か知らずに読み始めたので、最初の第1話がなんで信長の死に際とただの売れないレストランの様子が同時進行するんだろう…?って思ってました。レストランの名前も全然気にしてなくて。で、1話終わって2話目に入って、あーそういう...この感想を読む

4.54.5
  • betrayerbetrayer
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