歴史の偉人達に想いを馳せながらしんみりする - 最後のレストランの感想

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最後のレストラン

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歴史の偉人達に想いを馳せながらしんみりする

4.54.5
画力
2.5
ストーリー
4.0
キャラクター
4.0
設定
3.5
演出
4.0

目次

死ぬ前に食べたいものから偉人を紐解く

もし明日自分が死んでしまうとしたら、私たちは最期に何を食べたいと思うでしょうか?

典型的な質問として、よくあるこの言葉。お母さんの手料理を食べたいとか、有名店で食べたあの肉料理をもう一度でいいから食べたいとか、いろいろな答えがあることでしょう。個人的には、最期に何を食べたいかなんて聞かれても、うーんなんでしょうね…って答えるくらいなもので、全然食への執着はないのですが。この漫画を読むと、食事って大事だなって気づくんですよね。

このレストランの名前はHeaven's Door(ヘブンズドア)。まさに天国へ行く前に、偉人たちが時を越えて立ち寄る食事処。どんな漫画か知らずに読み始めたので、最初の第1話がなんで信長の死に際とただの売れないレストランの様子が同時進行するんだろう…?って思ってました。レストランの名前も全然気にしてなくて。で、1話終わって2話目に入って、あーそういうことだったのねと気づき、レストランの名前にも納得がいってすっきり。数々の偉人たちの死に際って、あんまり注目されないじゃないですか。あらゆる功績、名誉も、死ぬ直前に至ってはそんなに立派なもんじゃなかったりして…だけど、どんな偉人も死ぬんだなっていうことや、彼らの生きた時代の事、価値観の事、彼らが抱いていた希望やフラストレーションなどなど…歴史的な出来事だけではなくて、なぜそうさせたのだろうか・そうせざるをなかったのだろうかといった深いところまで、11つの料理を通して考えさせてくれます。

大切なものは脈々と受け継がれていることに気づく

この漫画を読んでいると、偉人たちが遺してくれたことが、いかに自分たちの時代に深く浸透しているのかがわかります。今でこそ当たり前だったことが、大昔は当たり前ではなくて、許されざることであると信じられていた。それを乗り切らせてくれる人間はほんの一握り。だけど、そのほんの一握りの人間たちの手によって、歴史がこれだけ動かされてきたということを考えると、人間一人に何ができるんだろうって思いから少し解放させてくれますよね。小さくて、何もできないような気になるけれど、何を生み出すか・もはや何かを生み出しているかどうかといったことは、当事者たちはあまり気づくことができない。その時代において、一生懸命現状打破のために闘い抜き、それが遅かれ早かれ爪痕になって人間の歴史を動かすんですね。

坂本龍馬なんて、何回映画やらドラマやらで語られたかわからない、本当に日本にとって大きなことを成した人。そんな彼も、若くして暗殺されてしまいました。暗殺されたけれど、彼のやりたかったことが、今の時代に確かにつながっている…。当時は無念だったかもしれないけれど、もしこんな風に未来の形をみれたとしたら、自分の死に意味があったと思えたとしたら、こんなに幸せな死に方ってないのかもしれないです。だから、一生懸命やろうって思わせてくれる。みじめな気持ちになる暇なんてないんです。今、がんばらなくては、いつがんばるのか。

いい人も悪い人も

びっくりするのは、まさかのヒトラーも登場することです。歴史において、完全なる悪として描かれるこの人。やったことは、確かに…相当エグイと思う。宗教対立という手の付けがたいあたりから人を支配した、残酷な人…ただ、そんなに悪い人だったのか。彼の死に際は、彼の食べたいと思う食べ物は何だったのか…いざ出てくれば、すごく気になりますよね。そのあたり、うまい構成してるなーって感心します。必ずしも、正しいとされていたことが正しいとは限らない。現に、いつまで経っても戦争ばかり。キレイなものが受け継がれるだけじゃないんですよね。その分、汚いものだって、なんだって、未来の人間たちは過去からできているわけですから。ドキュメンタリーを描くなら、人が生まれるときだけじゃなく、人が死ぬときにも、きっちりとスポットライトを当てるべきでしょうね。

実際には、どんな気持ちでやっていたのか。

時代や国を固定せずに、いろいろな時代の、いろいろな人を描いているのがまたいいですよね。日本自体まったく知らないという偉人達に会うと、なんか、日本ってプライドだけ高くてどうしようもねーな…という気持ちも起きます。まだ見ぬ何かに目を向けた人っていうのが本当に一握りの偉人ですよね。織田信長や、坂本龍馬は、だからこそ英雄としていつまでも語り継がれている。歴史の書物の解読によって、それぞれの人となりが少しずつ変わり、教科書も変わるんじゃない?って言われてきていますが、彼らの成したことっていうのは、絶対に変わらない。

偉人はみな孤高であったのかもしれない

お偉いさんで、しかものちに功績が称えられる人って、みんなその時代においては嫌われ者であることが多いですよね。イレギュラーっていうのは、好奇心をそそるけれどリスクもあるもの。保守的な人間たちの多いうちは、イレギュラーを生み出す者は怖い存在でしかない。今の立場、生活を守って生きていくことだけを考えているのか、これからに何かを残すことや変わっていこうとすることを前向きにとらえて行動し続けるのか、どちらにも一長一短があって、どちらが偉いとも言えない。だけど、「赤信号みんなで渡れば怖くない」状態っていうのは、変化することができないんですよね。生きてはいられるかもしれないけれど、それ以下があったとしてもそれ以上が決してない。

過去に名だたる偉人たちは、本当に強いと思います。もちろん少数ながら仲間はいたかもしれないけれど、自分の力を信じて、自分の手だけで何かを成そうとがんばり、たとえ一人になったとしても自分らしく在れればそれでいいと言える…そんな熱い人ばかりです。自分の信念を最後まで貫き通して、死んでからもなおその強さが称えられる存在になっている…どっちがいいんですかね。生きてるうちに幸せであったと知ることと、死んでから語り継がれることと…どちら側の人間であったとしても、自分自身で考えて、死に際に幸せであったと振り返れるなら、それはいい人生だったのかもしれないです。信じることを、一生懸命がんばれってことですよね。

これからもいろいろな人物にスポットを当て続けてほしい

この自由なレストラン、偉人たちが訪ねてくるたび、ちょっとずつ客が増えている気がするんですよね。歴史上の人物たちって強運であることが多いから…それを呼び寄せちゃってるとか?また、彼らがおいしい料理の代価としておいていくその時代のお金たち。すごい興味がわきます。園場さんはヘタレネガティブ野郎だけど、きっと売らないんだろうな…彼らが遺していってくれたのは、お金なんかよりもすごい言葉の数々。そのほうが何より貴重でプライスレスなものですよね。

もう漫画自体は9巻まで出てますけど、いくらでも書けますよね、この漫画。11つがいい話。深い話に仕上がってます。レストランの従業員たち、シェフは、なんだかんだいって結構人間的に仕上がってる人ですよね。歴史に強いバイトもいて、なぜか過去に帰れなくなったジャンヌダルクもいて、ネガティブでも歴史の偉人達すらもハッとさせるような言葉を、料理と共に提供できるシェフがいて。いいレストランじゃん。それでも、儲からないところは儲からない。マーケティングって大事よね。集客こそが一番難しく、きれいごとだけでは絶対にうまくはいかない…それでも、いい言葉といい料理をずっと作り続けてほしいです。

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毎回普通に流れていくだけなのに心はじんわり優しくなり

自分の人生の最後の日に食べるもの食事は人間の体をつくるもの。食べたモノでその人はできている。毎日何かしらを食べて、そこから栄養をもらって生きて、そして死ぬ。自分だったら何を食べたいだろうね。お母さんのあの料理?コンビニのあのスイーツ?有名店で食べたあの料理?…食事って、食べたら終わりで切ない気持ちになる。だけど、食べたら体の中で自分にとけて自分自身をつくってくれているんだよね。もっと感謝して食べるようにしてたら、肥満になんかならないんじゃないかな…。1つ1つが血肉になり、思考をくれる。この物語では、偉人たちが主人公。歴史に名だたる人物が、最期のその時に食べたいと思ったものが何か…誰にもわからないけれど、そうだったらいいな、そうやって死んでいくことができたらいいな…って思う、しんみりさせるお話である。レストランの名前もHeaven’s Doorということで、あの世に行く前の通り道というわけだ。日本の...この感想を読む

4.54.5
  • kiokutokiokuto
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