無意識に見せかけた悪意 - 息がとまるほどの感想

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息がとまるほど

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無意識に見せかけた悪意

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文章力
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ストーリー
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演出
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目次

女特有の感情

本作品は女性特有のマイナスの感情、悪意や狂気に満ちあふれた短編集です。

例えば「女友達」での、家族メールを送ってくる友人佐智。悪意がありますよね。彼女は都会で暮らす主人公浅子に頻繁にメールを送ってきます。

その中で必ず「あなたは美人で都会で華やかな生活をしていて羨ましい。あなたは私達同級生みんなの憧れ」というような持ち上げ方をします。

これが曲者で、一見浅子を褒めているようで、実は浅子の幸せを長年に渡って阻むやり方だということが、オチの部分で分かるようになっています。

浅子はどんなにいい条件の見合い相手と出会っても、「あなたは私達みんなの憧れ。そんな程度の男でいいの?」という佐智の言葉に乱されて、「もっといい男がいるんじゃないか」幸せを掴むことができません。

しかし、この佐智、本当に悪意があってやっているのでしょうか。 

彼女はメールで浅子を持ち上げ、褒めることしかしていません。恋愛相談をした時にも、断固反対したことはないのです。浅子があくまで最終的に全てを決定しています。

ただ、悪意があるとすれば、かなり背筋の寒くなる話です。浅子を37歳になるまで、婚期から遠ざける事を意図的にやっているならば、遠方からかなりの悪意をもって連絡をし続けているという事ですから。

そこをグレーにするのは上手いと思いました。

悪意を投函する女

主人公の依子は、ある日偶然電車で乗り合わせた女に、嫌がらせをするようになります。

依子は今で言う喪女なのでしょうか。男っけもなく、かといって職場で上手くいっている訳でもなく、ストレスフルな生活を送っています。

そのストレス解消として、悪意をしたためたメモを女宛に投函するのですが、何だかその姿が、ネットで誹謗中傷を繰り返す人に重なりました。

最後は結局自分にその悪意の言葉をぶつけたかったのだ、というやりきれないオチですが、こんな人は世の中にたくさんいるのかな、と思ってしまいました。

最後は読者に委ねるスタイル

全編に渡り、「意識的でない悪意」をテーマにしているのかな、と思いました。それぞれの話に出てくる女達は、わざとなのか、そうでないのか、主人公をかき乱していきます。

それが意識的なものなのかは最後まで明かされず、判断は読者に委ねられています。

そこが作品のミステリアスさを引き立てていますし、実際に女性と接していると、こんなことはザラにあるという印象です。

彼女達は無意識に見せかけた悪意が得意です。そこに女のリアルがあるように思いました。

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