バブルの暗部を鋭く抉り、本物の緊迫感で描く力作 「金融腐蝕列島 【呪縛】」 - 金融腐蝕列島 〔呪縛〕の感想

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金融腐蝕列島 〔呪縛〕

4.004.00
映像
4.00
脚本
4.50
キャスト
4.50
音楽
3.50
演出
4.00
感想数
1
観た人
1

バブルの暗部を鋭く抉り、本物の緊迫感で描く力作 「金融腐蝕列島 【呪縛】」

4.04.0
映像
4.0
脚本
4.5
キャスト
4.5
音楽
3.5
演出
4.0

この原田眞人監督の「金融腐蝕列島 【呪縛】」は、恐ろしいまでの緊迫感に満ちた映画だ。

この映画の舞台となっているのは、バブル期の矛盾が噴き出している大手都銀。検察の強制捜査が入るというところまで腐っているが、銀行の相談役(仲代達矢)ら上層部は責任回避に終始している。

この状況下、業を煮やした中堅行員四人が立ち上がる。その中には、相談役の娘婿(役所広司)もいた------。

この映画が非常に緊迫感に満ちたものになっている要因として、三つあると思う。まず、脚本の見事さだ。銀行、大蔵、マスコミなどが複雑に絡み合う状況を、明快に整理している点だ。それでいて、一本調子にならず、適度に入り組んでいる。これは、原作者の高杉良の脚本への参加で、一層のリアリティーが加わったからだと思う。

第二の点が、映像の素晴らしさだ。例えば、ある場面のラストを通常より一瞬早く切り、次のシーンのクライマックスをつなぐ。この畳みかけるような編集が、観ている者に息をつく暇を与えない。

また、広い室内に差し込む光を何度も映すことで、巨大な闇の中で闘う中堅行員たちの頑張りを印象づけている。ここに、スタイリッシュな原田眞人監督の演出テクニックが、遺憾なく発揮されていると思う。

第三の点が、出演俳優の演技のうまさだ。目をむいて部下を威嚇する仲代達矢。ひるむ気持ちを必死に抑える役所広司。無名塾の師弟である二人の演技派俳優の対決は、凄い迫力だ。

その他、検察官の野心、副頭取の小心、総会屋の冷徹、女性キャスターの意志------。一人ひとりが、それぞれ際立った個性を主張していて、実に見事だ。

以上、三つの要因を前提としながら、やはり最も重要なのはテーマだと思う。組織に属する者なら大なり小なり経験する状況。闘いを挑んだ者たちは、いずれもエリートだが、並外れた力の持ち主ではない。他人事だと思わせない身近さがある。

この映画は、勇気を見せるべき事態に直面している私たちへの応援歌であると同時に、実際には躊躇している私たちに突き付けられた挑戦状でもあるような気がする。そして、そのことが本物の緊迫感を生んでいるのだと思う。

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