時代を超えて若者をリアルに描いた青春映画
社会に入っていけない若者たち
1994年に公開され、中流階級の家で育ちその頃の時代を象徴するような大人になることを望んではいないが、社会人の仲間入りをしなけえればいけないという状況の若者たちを描いた映画だ。
同じアパートに住む男2人女2人から物語は進んでいく。その中の1人トロイ役をイーサン・ホークが演じ、リレイナ役をウィノナ・ライダーが演じている。あと、途中で出てくるリレイナの恋人マイケル役は最近「LIFE!」など主役を演じるほど人気のあるベン・ステイラーが演じている。私がこの映画の前にイーサン・ホークを観たのはロビン・ウィリアムズが先生役で進学校の生徒たちの青春が描かれた「いまを生きる」だった。そのときのイーサン・ホークは高校生の中でもより幼く見えるほうだったので、急に大人っぽくなった彼を見てびっくりした。
映画の最初はリレイナが大学の卒業式に代表としてスピーチをしてそこにいた誰かが8ミリで撮ったような映像が映し出される。卒業式の最後に学生が黒くて四角い帽子を空にあげるアメリカ映画でよくみるやつだ。リレイナはそのスピーチで60年代の生き方を否定し、では今の我々はどう生きるべきかと問う。その答えは…わからない。という言葉の後にあまり気のない拍手があってスピーチは終わる。若者の正直な迷いとか大学を卒業してもまだ社会に出て行く準備がでていないという正直な雰囲気が伝わって良いスピーチだと思った。
社会の厳しさと現実
リレイナは卒業後テレビ局で働きだすが、主婦や年配の人たちを対象としたような番組のADの仕事をしていて、そこのメインパーソナリティに嫌われていて仕事をクビになりそうになっていた。一方リレイナの友達で同居しているヴィッキーは衣料メーカーのGAPで販売員として働いていて、少しずつだが仕事のやりがいを見出していた。リレイナはやがてそのTV局を辞めて就職活動を始めるが落ちまくってだんだんやる気がなくなってくる。ソファーの前でタバコを吸い続けながらテレビを見続けてそのうち家賃も払わないようになり、注意したヴィッキーと喧嘩をしてしまう。リレイナは自分がヴィッキーたちに取り残されたと感じ、ヴィッキーは、自分は厳しい社会でやっていっているのにリレイナは甘えていると感じたのだと思う。ヴィッキーも自分がエイズかもしれないという不安を抱えていたし、あまり登場はしなかったがトロイの男友達サミーも自分がゲイであることで親との関係で問題を抱えていた。普段はみんな明るいが、悩みのない人なんていないんだなあと思った。
とにかくお金に困ったリレイナはあることを思いつく。親が卒業のお祝いでくれたガソリンスタンドのカードで他人にガソリンを給油して代わりにお金をもらうという方法だ。この映画の中で好きなシーンの1つで、発想自体は陳腐だしすぐバレてしまうことだが、この映画のために作曲されたと言われている曲とリレイナのいたずらっぽい演技がマッチして楽しい気分になる。
トロイはリレイナの親に推薦してもらった会社の面接にも行かず日本でいうフリーターのような生活をだらだらと送っていた。社会に見切りをつけたような若者独特の雰囲気を持つトロイがよくマイケルとリレイナに嫌味を言って相手を怒らすようになる。明らかにトロイはマイケルを毛嫌いしているようだった。いくらトロイがリレイナを好きだったとしてもなんだか性格が悪いやつだなあと思った。あと、映画の中でよくトロイがギターを弾いてたり歌を歌ったりしているところがあって、本当にひいてるようだったし歌も悪くなかったのでイーサン・ホークの器用さがうかがえた。
リレイナの恋の行方
終盤はリレイナの恋の行方がメインとなってくる。恋人のマイケルとは一時うまくいっていたが、自分が撮りためた映像をマイケルの会社の仲間が編集した内容がひどくて喧嘩をしてしまう。なぐさめてくれたトロイの方に気持ちが傾くが、ここである出来事が起こる。離れた場所で入院中のトロイの父親が危篤状態になってしまうのだ。トロイは父親のもとへ行き、リレイナはトロイがいなくなってはじめて自分の気持ちに気付く。父親が亡くなった後2人の再会のシーンはこの映画の中で一番シリアスなシーンで感動的だった。何度も喧嘩をしてお互い傷つけあった2人だから余計に魅力的なシーンとなっていた。コメディ的な要素とシリアスな要素が交互に映し出されるのがこの映画の特徴だと思う。再会のシーンの後、最後は2人がソファでいちゃついているときに留守番電話にリレイナの父親から900ドルのガソリン代の請求代がきたとメッセージが入って幕を閉じる。軽快さがあって後味がすごくよい仕上がりになっていた。
1990年代の若者を描いた映画として紹介されているが、十分今でも通用するしいつの時代の若者も影響を受けるだろうと思った。若者がもつ社会への不安や大人への不満はどの時代、どの場所にもあって、そのモヤモヤした感情となんとかおりあいをつけていくのが大人になっていくことなのかなあと考えさせられた。
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