何でも願いをかなえることが出来る神になる、その為のバトルロワイアル - 未来日記の感想

よくあるバトルロワイアルものではあるが、飽きさせない魅力ある作品

時代背景なのか、なんなのか、たった一人になるまで殺し合え、と言う形のバトルロワイアルものは数多くあるが、この作品は最後まで飽きさせない魅力があった作品。それを担うのは主人公や、ヒロインと言ったバトルロワイアルを参加しているキャラクターが非常に魅力的であった証拠かと私は考える。特に主人公に関しては、主体性もなくただ自堕落に生きている中、突然そういったバトルロワイアルに巻き込まれると言う、王道と言えば王道の物語だが、半面それを支えるヒロインはかなりのストーカー的なサイコパスと言う今までにはあまり類を見なかったのが、観ている人を飽きさせることは無い第一の魅力ではないだろうか。また勝利したら何が手に入るのか、と言うのも、各人それぞれに必要とし求めているものは違うのにも関わらず、たった一つ、生き残って神にさえなれば、と言う点のみを皆求めていく事を描写することで、純粋に戦い合うと言うことを、観ているこちらに楽しませてくれる。

携帯電話は、実は自分たちの内面を映し出した鏡ではないかと思わせてくれる

今ではスマホになってしまったが、作中当時はガラケー。しかしそのガラケーがちょうどよい塩梅で、色々妄想を掻き立ててくれるのも一つ魅力があるのではないかと、私は思う。この携帯電話は、主人公たちの能力にかかわっているが、それは各々の欲望であったり、妄想、願望と言った人間の中の本能を現していると考えられる。例えば主人公。周りの人間に興味はあるが、話しかけることはできず、常に受け身。そんな彼には周りの未来が読めると言った風に、自分が思い描いていた欲望がすべて出てきて、各登場人物の能力となっているのも魅力だと私は思う。人間には各々目的や目標があるが、神になることが目標である主人公たちに対して、携帯電話にはその目的を達成したい人間の願望が出ているという、まさに人間の欲望を強く表現している作品ではないだろうか。

携帯電話を使った様々な騙し合いの凄さ

能力に関しては、主人公以外にも数多くあり、そしてそれぞれが特徴的な能力を持っている。これはやはり自分たちがどのような生き方をしてきて、そしてどのように生きていくのかと言うことを、携帯電話と言うツールを介して、観ている者に訴えかけている。自分の周りの未来が見える主人公や、主人公の行動の未来が読めるヒロイン、それに加え、そのように未来を読める事が前提な能力がゆえに、相手の能力を踏まえた上での騙し合い、と言うところがハラハラを与えてくれる作品。主人公とヒロインが互いを見張っていればそれだけで、周囲の未来が見えて最強ではないかと、安直に考えてしまったが、そんな簡単な内容ではなかった。携帯電話の能力は本当に自分が一番になるため、そしてそのためには他者を排他するために使用していく必要がある。主人公とヒロインはそういった意味では最初から協力すべき関係ではあるだろうが、協力はできない関係であり、観ているこちらとしては、いつ誰が、そしてヒロインはどのタイミングで、主人公だけではなく、私たちも騙してくれるのだろうと期待していた。ヒロインに関しては、主人公のストーカーでもあり、それが良い味を出している。一見してストーカーなる方々は、対象の人物に対して非常の好意的ではあるが、ひとたび対象になる方が裏切るとそれは一転すると私は思う。このヒロインもそういった危険性を冒頭から、ストーカーだと言うことを前面に出し、アピールしてくれている。ただでさえ携帯電話に能力があり、また願いをなんでもかなえる事が出来る神になる、と言う壮大な目的があるなか、ヒロインはストーカーでいつも気に留めなくてはならないと言うことは、これはただのバトルロワイアルではなく、狂気を内にも外にも秘めている事を私は感じ取れた。

未来日記を使った代償

この作品の良いところは、未来日記所有者が、もれなく代償を払っているということを暗に示しているということです。未来日記を使うことによって、私の主観ですが、最終的には皆不幸になっております。元々願いがかなうと言うこと自体、おかしな事で、携帯電話に能力が付くと言うこと自体も、おかしな事です。ただ主人公たちは知らず知らずのうちに、その不可思議な現象を当然の事とし、そして甘んじていった結果、代償と言う名前の不幸を背負っていったと考えられます。悲しい事ですが、本当の幸せを手に入れる為に、戦い始めただろう主人公たちですが、私から見ると本当の幸せは、殺し合い、そして誰かの手の上で踊って手に入れるものではなかったということです。代償は自分の未来、未来を代償にして、束の間の能力と、不思議体験をできた、と言うことを示しているのかな、と感じます。今の世の中を生きている若者含め多くの人も、この作品を観ることで、今を生きる大切さを再認識できる作品だと思われます。