乙女のためのロボットアニメ、原点はココにあり?!
目次
乙女のためのロボットアニメの原点
「天空のエスカフローネ」と聞いて、わぁ~懐かしいと思った人は少なくないはず。
でも、この作品が初めて放送されてからもう20年も経っていて、私にとっては驚きとある意味での落胆がそこには存在する。
今でこそ女子がロボットアニメを見るのは普通になったが、当時は女子にとってロボットアニメは敷居の高いものだった。
戦争とか、格闘とか、血がドバッとか、それこそ女子の苦手なもののオンパレードで、男同士の友情とか言われても何だか全然ピンとこない。それが常識だったのに、このアニメがロボット苦手女子のハートをぎゅっと掴んだおかげで、ロボットアニメの女性視聴率がぐんと上がったのだと思う。
乙女の好きなキーワードが盛りだくさん
男性諸君には理解できないかもしれないが、まず世間一般的な乙女の大好物を3つ紹介しよう。
1に、美男子盛りだくさん。
2に、美男子大勢に囲まれた逆ハーレム。(金髪、黒髪etc…選択肢は多いに越したことはない。)
3に、綺麗でロマンティックなシチュエーション。
…である。
本当にこの作品、乙女の大好物をすべて網羅している。
最終的に主人公と心を通わせるバァン・ファーネルは、舞台になる異世界ファーネル王国の王子様。黒髪で粗野でツンデレ。
物語の当初で主人公が心惹かれるアレンは、アストリア王国の騎士で金髪・碧眼の超イケメン紳士。おまけに、主人公が異世界にやってくる前の現世で心惹かれていた先輩にうりふたつ。
実際はこの2人のイケメンの間に主人公のひとみが挟まれて、心が揺れるわけだが、その他にもイケメンサブキャラがわんさかといる。乙女ゲームのルート選択を彷彿とさせる展開が組み込まれているわけだ。
そして、ひとみがバァン王子に心惹かれていく過程で描かれているロマンティックなシチュエーションは、この王子が人間と竜神人のハーフで、背中に白い翼を隠し持っているということ。侮蔑の対象となるその翼を普段は人目にさらさないように隠しているのに、ひとみを助けるときだけは、その真っ白な翼を広げて飛んできてくれる。翼を広げるたびに白い羽がひらひらと舞い飛んで、主人公を抱きとめるんですから!惚れちまうだろ、そりゃあ……。ってな感じです。
ロボット(ガイメレフ)での格闘シーンですら”キュン”っとさせる
ここではっきりと言っておきます。
男性諸君には全くもって評価されないであろう戦闘シーンばかりです。
絵がきたない。→そりゃあ、20年も前のアナログ仕様です。CGもくそもありません。それも’味’だと思って楽しまなきゃ損です。
ロボットのデザインがダサい。機能も少なすぎ。→主人公が飛ばされた異世界『ガイア』のモチーフが中世ヨーロッパ風なので、いかにも近代的では逆に変。ガイメレフがガンダムで、メレフがザクみたいなイメージだけど、ビーム攻撃とかそういうものはない。主に剣で戦うというのが中世の騎士を思い起こさせるので、そこも女子受けする要因かもしれない。
そしてイケメンたちが乗り込むガイメレフが、その操縦者たちを彷彿とさせて感情移入しやすいのです。
まず、バァン王子が操縦するガイメレフが「エスカフローネ」なのですが、これがバァンしか乗れない王の専用機。血の契約(今でいうところのバイオメトリクス的なもので個人を認証するシステム)で動くため、戦うたびにバァンの血を吸い精神を侵食する。要するに相当の苦痛を強いるものなのです。
今となっては、蒼穹のファフナーとか様々なアニメでそういう設定が取り入れられていますが、この発想は当時では革新的で、操縦者に痛みを強いる機体というものが凄く斬新に思えました。操縦する機体が単なる機械ではなく、意思を持った生命体のようなイメージで、替えが効かない唯一無二の機体といった感じです。
そして、バァンがエスカフローネに乗って戦うたびに流れる己の血。
喧嘩をやめて~二人を止めて~私のために争わないで~もうこれ以上~
……という大昔のフレーズが頭に流れてきそうなロマンチックな戦いがそこには存在するわけなのですが。
自分のために血を流して戦う美少年たちとでも言うんでしょうか?あくまでも戦っているのはガイメレフというロボットなのに、妙に感情移入してしまうというか何というか。ガイメレフが乙女漫画の主人公をめぐって争う騎士そのものですよね。もうキュンキュンしますよ。マジで。
ロマンチックな伏線の多い”病みつき”性も魅力
ロボットアニメといえば、ガンダムでいうところのシャアのように、魅力的な敵キャラも欠かせません。
そこでひとりどうしても気になって仕方がないのが、敵のガイメレフ隊を指揮する美少年ディランドゥの存在です。
どうしようもなく性格が歪んでいて猟奇的。その見た目とは正反対な破壊行動に目を覆いたくなります。戦闘でもないのに街を炎で焼き尽くすシーンでのセリフに「燃えちゃえ~!」というのがあるんですが、これが名探偵コナンの声優でも有名な高山みなみさんの演技で、どうしようもなく刹那的で頭から離れません。
実はこのディランドゥ、運命改革という実験のために幼いころ敵国に連れ去られ、性別も見た目も記憶さえも造り替えられた、もう一人のイケメンであるアレンの妹のセレナだったのです。
自分の奥底にある愛情に富んだ人格をすべて改造され、愛しい家族への敵対行動を余儀なくされた一人の人間として、もう耐えられない、何もかも燃えてしまえばいい…といった切なさが伺え、後でどっと涙がこみ上げてきてしまいました。もうもう、大好きです。(すみません、全くの個人的感情です。)
声優も音楽も今では考えられない豪華さ
このアニメは声優陣がとにかく豪華で驚きです。
一人一人が個人でステージを開催するような有名人ばかりです。
まず、主人公の神崎ひとみを演じるのが坂本真綾さん、主人公をめぐるイケメンたちが関智一さんや三木眞一郎さん、その他も名前を見れば驚く名優さんたちばかりです。
今、このメンツを揃えようと思ったら、それこそ出演料がいくらあっても足りません。
そして音楽を担当したのが、マクロスシリーズでも有名な菅野よう子さん。正直神様のような人たちがこのアニメを構成していることに今更ながら驚いています。
映像は今見ると古いと感じるかもしれません。中には見るに堪えないという男性だっているでしょう。
でもこのアニメが、世の乙女たちがロボットアニメに嫌悪感を抱かなくなった、ひとつのにきっかけなったと言えると思います。
未だに「ロボットアニメはちょっと…」という女子は一度見てみるのも良いかもしれません。ロボットアニメに対するイメージががらりと一変するかもしれませんよ。
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