キャラクターの成長と共に...
成長をテーマにした物語
无と花礫という二人の少年の成長こそが、この物語のテーマだと思います。
本来はニジという動物だった无が少年の姿を得て、様々な人と関わることで言葉を覚え、知識を学び成長していく姿。カラスナというスラム街のようなところで育ち、窃盗を繰り返しながら日々の生活を送っていた花礫が、様々な事件を経て自身の歩む道を選んでいく姿。
その他『輪』の戦闘員である與儀やツクモについても、无や花礫という外から来た人間に出会ったことで気持ちや考えの変化が見られます。タイトルロゴのモチーフにある「蝶」についても、おそらくは登場人物たちの成長を意味しているのでしょう。
特に花礫については、複雑な出生からなかなか自身のことを考える余裕もない…という所から、勉強して自分も『輪』の一員になりたいという欲求が生まれた所に成長を感じました。アニメの最終回は花礫が新たな場所へ旅立つところで終わっています。
成り行き上、自身の意思とは関係なく艇にやってくることになった花礫が、最後は自分の意思で艇から降りて行く、という所がとても好きです。
與儀のもう1つの姿
无と花礫の世話役を任命された與儀は、ムードメーカー的な役割を持つキャラクターです。本来は保護するべき立場にある无や花礫に逆に心配されることもある與儀ですが、そういうちょっと頼りない所も含めて愛されるキャラクターなんでしょうね。无はすぐに與儀と打ち解けていましたし、花礫も何だかんだ言いながらも與儀のことを信頼しているようです。
そんな與儀の普段の姿からは想像も出来ないような姿が、リノルでの戦闘中に見られました。頬のパッチが剥がれ、髪の色が銀色に変わった姿です。変わったのは見た目ではなく、どちらかといえば戦闘は苦手だと公言していたにも関わらず、とても好戦的な性格に変わりました。ただの二重人格なのか、それとも何か他の要因があるのか(作中ではアレルギーのようなもの、と表現されていましたが)アニメではついに謎が明かされることはありませんでした。
姿も性格も豹変した與儀ですが、無意識に花礫を守るような動きも見せましたし、花礫の声かけで元に戻ったような節もありました。與儀にとって、无や花礫は保護すべき対象であると同時に、彼の心の拠り所なのかもしれませんね。
カラスナでの悲劇
カラスナでの話は、主要キャラクターの役割や、敵は誰で何を目的としているのか等、物語全体のキーになっている部分が多かったように思います。
メインはもちろん花礫ですが、他のキャラクターについても、どのような考えを持っているのかが見えてきた話だったかなと。
花礫は自身の育ての親であるツバキが死んでから、彼女の仇を討つために生きてきました。
その仇がツバキの弟であるヨタカであり、その裏には『輪』と敵対する『火不火』という組織が関わっていたとわかります。突き付けられた残酷な真実に困惑する花礫や、花礫の身内であるヨタカを手にかけて良いのか悩む與儀…しかし敵は二人に立ち止まる時間をくれません。
そんな中で无だけがヨタカの双子のきょうだいであるツバメを気づかうシーンがあり、それがとても印象に残っています。敵に襲われそうになる所を助けたり、自身のことを汚いと嘆くツバメに「綺麗だよ」と言ってあげたり、无の素直な性格にツバメも救われたのではないかと思います。
また、ヨタカを亡くしたあと、花礫、與儀、ツバメがそれぞれ物思いに耽っているのを見て、无が「悲しい」「寂しい」といった感情に気づく場面も印象的ですね。无の心の成長が見られたシーンだったと思います。
個人的にはその後、一人になったツバメが自分の身体を材料にして欲しいと、朔と共に行くことを決意した姿にも胸を打たれました。
カラスナでの話は全体を通しても演出や構成等もわかりやすく、一番気に入っている話です。
この辺りの話をメインとし、2016年には舞台化もされていました。
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