「踊る大捜査線 THE MOVIE 2」の見どころ - 踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!の感想

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「踊る大捜査線 THE MOVIE 2」の見どころ

4.54.5
映像
4.0
脚本
3.5
キャスト
5.0
音楽
4.5
演出
4.5

目次

社会の不合理を抽象した一言

踊るシリーズ第1段では言わずとしれた「事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!」という織田祐二演じる青島の言葉が印象的でしたが、映画第2段の本編でも「レイボーブリッジ封鎖できません!」という言葉が印象的です。この映画を総括して監督や脚本家さんが一番伝えたかった事はこの一言に詰まっていると言っても良いと思います。これは映画を見ていただければ分かると思いますが、事件の犯人がレンボーブリッジを通過する事が分かり切っているため、犯人逮捕のためにはレインボーブリッジの封鎖が必須であるにも関わらず、レインボーブリッジの封鎖には関係各所への報告や申請をする必要があり、どんな緊急事態であっても許可を取らなければ前に進めない現在の社会を風刺した一言だったと思います。

世の中は不合理でそんな世の中に一石を投じたいという監督や脚本家さんの思いが詰まった一言であったと思います。

トップダウンの是非ではない

青島が社会の不合理に耐えきれない思いを募らせる中、犯人グループは次々に反抗を続け、警察は常に後手に回ってしまう状況が続きました。これは現場の動きや考えかたと大きく異なる警察上層部の対応と考え方が原因でした。しかし、柳葉敏郎演じる室井の指揮により犯人逮捕へとこぎつけた時、犯人グループは「目的だけ共有してあとはメンバーが個々に判断する犯人グループこそ、ある種の理想の組織」と言うが、青島巡査部長はそんな犯人グループに対して「リーダーが優秀なら組織も悪くない」と伝えた。一見犯人グループの主張が現代の社会に合っているようにも思えましたが、青島の台詞を聞いた時にトップダウンという制度自体が悪い訳ではなく、トップに立つ人の問題という事をこの映画を通して考えさせられました。

洋ナシにかけられた思い

この映画のキーワードとなるのが「洋ナシ」です。今回の事件で犯人は現場に必ず洋梨を残しており、その洋梨が何かのメッセージであると捉え、洋梨を「用無し」と理解した、いかりや長介さん演じる和久さん。洋梨は社会から必要とされなくなった人間=「用無し」という意味であり、犯人がリストラされたサラリーマンである考え、捜査は一気に発展した。この用無しというワードを発見したのが和久さんという点が非常に考えさせられた演出だったと思います。和久さんは定年後に指導員として捜査していますが、この事件をもって「後は若い者に任せる」と引退しました。自分自信が用無しと気づいた瞬間でもあったのではないでしょうか?ただ、和久さんの用無しは「不要」という意味合いではなく「役目を全うした」という意味として視聴者としては捉えられ、リストラされたサラリーマンが起こす犯罪というシナリオを通して、組織内での用無し=身を引くタイミングという事も野愈していたように思えます。

忘れてはいけないコミカル演出

踊るシリーズで忘れてはいけないのがコミカルな演出部分です。この映画でもコミカルな要素がふんだんに盛り込まれてました。特にSATの隊長とのやりとりが秀逸です。映画の冒頭で豪華客船のシージャックを想定した演習で、テロリストのリーダーとして青島が・対テロ対策としてテロリストの殲滅に動くSATが対決する事になりました。そんな中、SAT隊長が「訓練とはいえ、手は抜かんぞ。怪我をしたくなければ、本気でやれ」 と言ってしまった事が間違いの始まりで、青島以下、湾岸署面々のがんばりで、テロリスト側の圧勝してしまった。それだけでも面白かったのですが、映画のラストで青島とSATが協力して犯人を捜す事になった時、隊長以下SATのメンバーが全員青島を警戒。青島の気まづい雰囲気を出す。と言ったシリアスな場面での緩和が非常に気持ち良かったです。

また、シリアスな場面での緩和という点では犯人グループ通しが会話をしている音声を捜査員が入手し、犯人の言葉が秋田訛りであった事が分かった時に秋田県出身の室井さんが発した「カメダ」の後の無音の時間では笑いを堪えるのが難しいくらいです。ちなみにこちらの「カメダ」とは東京の「蒲田」の事を指してるというのはさすがに訛りにしても狙い過ぎかなと感じました。

いかりやさんと岡村さん

出演者についても注目すべき点が多い映画でした。その中でも新旧のお笑い芸人2名がこの映画では重要です。まずは、いかりや長介さんです。この作品がいかりや長介さんの遺作となった事は有名ですが本当に亡くなる前だったのか?と思うくらい元気にかつ素晴らしい演技でした。また、この映画公開前に亡くなったことで映画のエンドロールでは「ありがとう、和久平八郎 さよなら、いかりや長介 湾岸署一同」と流れ、本当にスタッフから愛されていたんだなと裏のことを考え涙を誘いました。

また、この映画ではナインティナインの岡村隆さんも出演されています。岡村さんの役どころというと「現代に現れた吸血鬼」という少し理解に苦しくような役どころで物語での重要性も特にない役でした。しかし、話題性という点で言うと十分にあったと思うので当時のナインティナインの立ち位置なども考えて映画を見ると面白いと思います。

音楽も素晴らしい

踊る大捜査線といえば「Love Somebody」が有名ですが、歌だけでなく挿入歌もとても素晴らしいです。各キャストごとにテーマ曲があり、個人的にはスリーアミーゴズ(署長・副署長・刑事課課長)が現れた時の音楽がとても好きです。何か間抜けそうで今にも笑いが起きそうな予感のする曲です。また、室井さんの登場の曲も室井さんの性格が表れているかのような厳格そうな音楽が流れ、それぞれの音楽に合わせて見ている方の心情をコントロールされている感があります。

前作「踊る大捜査線The Movie」と比較して

前作のThe Movieと比較してみてひけをとらないくらいに本作も面白かったのですが、唯一足りないと感じたのは犯人という存在です。今回の映画のテーマとしてリストラされたサラリーマン。世の中に無数に存在しており、リーダーのいない組織ということなので、代表格となりそうな役者を敢えて立てなかったのだとは思いますが、やはり前作の犯人役である小泉今日子と比べると見劣りがありました。踊る大捜査線シリーズのオリジナルメンバーにフォーカスしすぎているためか、エンディングに物足りなさは感じました。

ドラマ版を見ると更に楽しめる

全体を総括して、「踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」は社会への風刺も交えつつコミカルさも感動も与えてくれる素晴らしい映画でした。この映画を更に楽しむためにはやはりドラマ版から見た方が楽しめると思います。ドラマ版でさりげなく触れられていたテーマや言葉、小物に至るまでほぼオリジナルで作られています。カエル急便やカップラーメンに至るまで、ドラマ版を知っているからこそ理解できる笑いや感動も多い映画です。ドラマ時代にはまだまだ未開拓だったお台場という地や湾岸署そのもの変化もこの踊る大捜査線シリーズで楽しむことができます。映画内でユースケサンタマリア演じる真下正義のセリフでもありますが、「この街はまだ未開拓なんだ」という部分もドラマ版を放送していた1997年とこの映画を放映した2003年と現在2017年のお台場という土地の変化も楽しむことができます。

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