いい話系で微妙
短いから何も深まらない
短いです。マフィアのゴッド・ファーザーとして君臨し、世界を支配していたというドン・パゾリーニ。彼が暗殺され、世の均衡は崩れることになった…時は混沌の渦に飲み込まれ、そこかしこに暴力が蔓延するひどい世界。ゴッド・ファーザーとして君臨するのは誰なのか?ひそかに隠し子の存在がささやかれる中、ネロはかわいいラビットたちと夜のショーを盛りたてていた…
ま、ネロがパゾリーニの隠し子だったっつうことで、物語は始まっていきます。てっきりネロがドンの座につくまでの道のりが描かれるんだと思ってたんですけど、そこまで深くはならなかった…確かに、ネロのその優しさ、パゾリーニみたいに女・子ども・弱き者を大切にする心、そして確かな馬鹿力。ドンの片鱗とネロ自身の人柄に惹かれて集まった仲間たちがどんどん増えていき、ネロの旅をサポートしてくれるんですけど、え?みんな結局仲間?っていうぐらい、闘ったら良き友になる。敵がつまんないんですよね。もっとでかいのくるか?!ってところでちーんと終わってしまい、ネロの母親探しの旅で完…トールマンとか、パゾリーニを殺してしまった輩を早くに出しすぎでしょ。全然おもしろくなくなっちゃったじゃないか。ネロの力の覚醒!みたいなのも少ないし、性格的な面での面影は感じても、まったく別物のように思えるというか。プッチなしでも強いとか、そういう展開期待していただけに、物足りなさは残りました。
表紙とか扉絵は素敵
絵はすごいカッコいいと思います。レイヴってわけでもないし、ワンピースってわけでもない。ブラッククローバー寄りで技はかわいいものが憑依するからよくある感じ。呪具自体にも意思がある・かわいいのに強いっていうのもよくある設定だからそこはまぁまぁかなと思います。バッドに魂封じられている…あれ?青のエクソシストみたいにクリカラに魂入ってる的な?いろんなおいしい要素を混ぜた感じですね。シリアス展開のネロはもっとかっこよくてもいいのに、プッチが憑依した後の姿はピエロかフランケンシュタインっぽいかなと思います。目力いれるとなんかルフィっぽい…
間のページでマフィアに関する豆知識が入ってるんですけど、これって本当?マフィアに必要なのは、威厳だそうで。老若男女から尊敬される風格が大切らしいです。光であり影である。誇りと勇気で立ち向かうことが、誰かの命を奪うことかもしれない。それを甘んじて受け入れるのがマフィアってことですかね。実際には悪いこともたくさんしたんだろうなって思うんですけど、どうなんですかね?みんなドンを美化するので、全体像はよくわかりません。実際のマフィアって薬物の香りしかしないし、あんまりいい表現じゃないんじゃないか?って思うときもしばしばありました。個人的にはプッチがファンタズマになった背景とか、ネロの能力の開花とか、まだまだ知りたいものがいっぱいあったんですけどね…あと、パゾリーニの死んだときの絵、もっと慎重に、さらっとじゃなく、ダークで怖い感じにしてほしかったな…ただの振り返りシーンで済まされてしまったのが残念です。あれだけ知りたかったことがさらーっと流れていってしまいましたよ…
ヒロインなし
一番の残念なところは、ヒロインがいないことなんじゃないかと思います。ネロとプッチの旅。味方はどんどん増えていくけれど、ヒロインがいないってこんなに寂しいんだなって思いました。ヒロインにあたるのはリリィ…?ラビットたち…?女ばっかりの酒場で育ったネロは、女をめんどくさいと言っていた。本来なら恥ずかしいようなことも、小さなころから当たり前で裸体も大丈夫だし、下着の洗濯だって大丈夫。育ての母親の愛情をめいっぱい受けて育った女がよくわかる優しいネロ。恋しちゃってもよかったんじゃないだろうかって思います。んーそしたら旅っぽくないかな~…でも一緒に旅する仲間はもっとほしいよね。
みんなに愛されて、みんなに望まれて、ゴッド・ファーザーへの道を歩まされていくネロだけど、まだまだ15歳。母親に会いたいという願いだけで行動しているところがあるので、プッチの願いとはズレがあったように思います。もちろん、母親は助け出したいんだけれど、パゾリーニの代わりに世を取り仕切ってもらうことがプッチの願い。ネロが拒否しようが何しようが、頼らざるを得ない。それだけの重責を担わせることが、どれほど過酷な運命になるか…もしこれで母親と会えちゃったら、ネロはその先どんな道を歩くんでしょうか?周囲の期待通りに、マフィアのドンとしての道を究めていくのか?はたまた、普通の堅気の生活を望むのか…微妙なところだと思うんです。自分は生きていれば必ず命を狙われる存在です・それでも逃げ延びて…俺は何をしたいんだろう…?ってなってしまったとしたら、闇にのまれてしまう可能性も大いにアリでした。だから、やっぱりヒロインいないとさ、ネロを救ってあげられるポジションにいる、堅気の人が良かったと思うんですよね。マフィア関連じゃなくて。
今日の敵は明日の友
FANTASMAを読んでいると、マフィアっていい人なのかも…!って勘違いをしそうになります。要は、警察や政府の助けを借りずに、自分たちで自治組織を持つようなイメージでしょうか。でも組織が大きくなるにつれ、それを取りまとめるための怖い仕事や、強力な資金源を手に入れるための汚れ仕事だって発生すると思うんです。それもいわば自分の信じる正義のため。なーんかパゾリーニについていい事ばっかり書いてるけど、うさん臭い気がするような気もしました。だから、漫画では光も影も見せてくれたら逆に信用できたと思うんです。グレーで、人間っぽいというか。ただの漫画。されど漫画。リアルな世界をどうしても思い浮かべる私です。
みーんなパゾリーニのお人柄に惹かれてそのファミリーを尊敬しており、その血筋のネロを値踏みします。「敬愛する彼に匹敵するほどの何かを、ネロは持っているかどうか?」災難ですよね~…何も知らずに育てられた彼にとっては知ったこっちゃない話。それでも、自分の父親、母親がどんな人だろうかと、小さなときからずっと探したいと思っていた彼にとっては、それすらも両親とのつながりになる。ネロのそういう優しいところ、父親にも似たんだろうし、バーバラにもそうやって育てられたんだろうし、主人公!少年漫画!って感じで王道だなと思います。戦いを通していろんな人を知り、親しくなり、強くなって、大きくなる。
そういえば、15歳までずっと女所帯で暮らしてきたから、むしろこれからは男の友達を作ったほうがいいよね。
主人公はもっと強くならないとダメ
せっかくパゾリーニの血を受け継いでいるんだし、なんかこう…もっと強力な強さが見てみたかった。衝撃的なやつ。血が騒いでしょうがないみたいなノリ。ファンタズマありきじゃない、パゾリーニがドンたる所以を見せてくれたらこうだったというノリ。バッドに力込めて打つだけじゃなくてスマートな技!欲しかった!!パゾリーニ自体、そんなに強くなかったのかもしれないけどね。だって実際に暗殺されちゃってるし!人間としての器のデカさが一番魅力の人物だったのかも。できたらネロには最恐最強最高を目指してもらいたいね。
短い話だったので、言いたいこと言えないまま終わっちゃった感が否めません。キャラクターは結構よかったと思うので、もっと伸びしろあったんじゃないでしょうか。
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