やりたい人生を全うするカウボーイ?
目次
ルパン三世を彷彿とさせる主人公。しかしその先には…
私がこのアニメを見たのは確か16歳のときだろうか?
第一印象は主人公スパイクの足がルパン三世の足にそっくりだったことだ。
似ているの足だけでなく設定と毎週の話の展開もよく似ているのだ。
ルパン三世は怪盗、スパイクは賞金首を狙って生計を立てるいわゆる「賞金稼ぎ」。
二人とも毎週獲物の為に奮闘するも、最後は殆どが「トホホ…」と言いたくなるほど儲からない結末となるのが王道パターンとなっている。
このアニメにはそれといったテーマが感じられない。
いや、テーマが無いことがテーマなのかもしれない。
「テーマの無い近未来SFハードボイルド」
これぐらいしか気の利いた言葉が思いつかないのだ。
しかし私はルパン三世よりもスパイクにキャラクター的な魅力を感じていた。
16歳の脳みそではどういったところに魅力を感じるのか上手く表現出来なかった。
なんだかわからないが、スパイクにただならぬ魅力を感じたのである
私が煙草を吸い出したキッカケもスパイクに影響からだ。
なんとも16歳らしい単純なキッカケである。
「カウボーイビバップ」は私にとって単なるアニメではない。
男のロマンが詰まった作品だ。
奥底には様々な過去がありながら楽観的な主人公とビバップ号クルー
最初は「よりハードボイルドになったルパン三世」といった意識で毎週食い入るように見ていた。
賞金首をとっ捕まえて賞金を獲得するも周辺の飲食店等を破壊しまくり儲けが毎回無く、相棒のジェットが作る「肉無し青椒肉絲」を食べるなんとも情けない主人公。
毎回何かしら物を破壊し、金額の請求書がジェットの元に届き困らせるどうしようもない男がスパイクなのだ。
この「なぁなぁ」感が男心からすればなんともたまらない。
根拠は無いが、「何かカッコイイ」と馬鹿げた16歳の私は思っていたのである。
しかし物語の中盤にスパイクの過去が少しずつ明らかになってくる。
このスパイクという男、実は昔にチャイニーズマフィア「レッドドラゴン」に所属していたが単身でクーデターを起こし世の中では死んだことになっていたのだ。
そんな過去を持っていながらも、その素振りを見せること無く気ままに生きていく様が無骨というかなんとも素敵ではないか。
下手したら死に直面しかねない場面でも
「なるようになるさ」
という楽観的な言葉を言える強心臓。
「奴に会えば何かわかるさ」
一寸先が闇でも飛び込めば何かがわかるだろうという精神は保守的な人間は見習わなければいけないところだろう。
この「とりあえずやってみる」という精神はこのアニメから学んだ。
作者がそれを伝えたかったどうかは不明だが、こんなめちゃくちゃな人物しか出てこない作品の人物から影響を受けて大人になった私は本当に馬鹿げた少年だったのだろう。
ただ男にとって「阿呆と浪漫の玉手箱」的なアニメになっているのは確かだ。
スパイク達の拠点となる船のビバップ号に居候しているフェイ・バレンタインに至っては借金まみれの賞金稼ぎだし、相棒のジェットは禿げているし、ハッカーのエドは何を言ってるかわからない子供だし何ともまとまりが無い仲間達がシュール過ぎる。
ありきたりな映画やアニメに飽きたという人には一度見て欲しい。
メッセージ性は何も考えられないが、とにかく浪漫を感じるのだ。
少年の心が残っているおっさん衆には是非一度見て欲しい作品だ。
どうしようもなさに拍車をかけるようなジャズミュージック
この作品の味付けとして更に色を加えているのはBGMだ。
音楽は菅野よう子氏が担当をしており、ハードボイルド作品であるからかジャズやブルースをメインとしたBGMが殆どである。
街中を巻き込んでとにかく賞金首を追いかけまわす回では騒がしいジャズミュージックが展開され、各登場人物の過去にまつわる回では哀愁漂うブルースが奏でられる。
登場人物は空気を読めていないのに、BGMはしっかりと空気を読めているのがなんともシュールだ。
そして謎の残る最終話
あえてネタバレは避けたいが、この作品の最終話のラストシーンに謎が残る。
それは主人公のスパイクが死んだのか否かである。
この作品、冒頭でも述べた様にルパン三世によく似ており毎回スパイク達が賞金首をとっ捕まえて儲かったというハッピーな終わり方を一切していない。
そのうえラストシーンの描写ではスパイクが死んでしまったのか、その後に意識を取り戻すことになったのかどちらも予想することが出来るものとなっているのである。
良くも悪くも最後の最後まで消化不良というか、スッキリさせてくれない作品である。
ハッピーじゃない。だが、それがいい。
ここまで私が書いた内容だと、このアニメに対して散々な皮肉を書いたように思えるかもしれない。
しかし実はこれは私にとっては皮肉ではなく褒め言葉なのである。
それ何故か?
毎回「トホホ…」な結末となっている主人公ご一行であるが、また翌週になればまたいつものように「なぁなぁ」なスタイルで生活をしており賞金首を追いかけ回す。
このループを見ていると根拠の無い元気というか、パワーが出てくる気がするからだ。
エンディングテーマの歌詞に
「泥の河に浸かった人生も悪くはない
一度きりで終わるなら」
とある。
この作品の登場人物達はこの歌詞の通りに人生を全うしているのかもしれない。
そして自分もそういう思い出人生を全うしたいと思う。
実は何気に自分の人生に煮え切らない人には必見の作品なのかもしれない。
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