真のハードボイルドを感じることが出来るアニメ
目次
キャラクターが作り出す全ての各話の物語が、最終話の感動に全てつながっていく作品
このカウボーイビバップと言う作品は、アニメファン以外にもすべての人に観ていただきたい作品であることは、一度でもこの作品をご覧になった方は、皆そういうことに違いない。主人公であるスパイクは、第一話からハードボイルドの雰囲気を醸し出しつつ、そのキャラクターを確立させていくが、第二話、第三話と進むにつれて、ハードボイルドからコメディだったり、またユーモアだったりとそのキャラクターの性質と言うものを上手に変えて、視聴者を楽しませている。同様に、仲間であるジェット、フェイ、エドと言う魅力的なキャラクター達も、一筋縄ではいかない性格を画面狭しと暴れまわりながら、その物語を紡いでくれる。各話各話と、どんどん次の話を楽しみに観ていると、いつの間にかこの作品にのめりこみ、そして各キャラクターに共感してしまう。そして話が進むにつれて感じる、キャラクターの表と裏の心の変化、心で抱える闇の部分が見えれば、逆に明るい未来への希望さえも感じさせてくれるのは製作者が私たちに訴えかけてくれる。徐々に感情移入を終え、キャラクターにのめりこんだ後に主人公のスパイクの心の闇を最終話にもっていき、今まで思い描いていたすべてのキャラクターへの感情を上手にとりまとめ、私たちを気づけばスパイクの心の裏側の感情を感じさせてくれるように魅せてくる、そんな作品がカウボーイビバップ。
キャラクターの声を出す声優の大きな魅力
この作品の大きな魅力の一つは、声優の大御所具合。主人公のスパイクは、山寺宏一。その仲間のジェットは石塚運昇。フェイに関しては、林原めぐみと言った大御所も大御所、そして有名な方々が作品を作り出してくれる。彼らの魅力は、キャラクターの内面を理解しつつそのキャラクターを演じていると言うことである。登場人物全員が、各物語で激しくその性格を変えて、画面の中を暴れているが、どの話を観ても、本当に楽しんでいる中でも、自分の中にある想いや葛藤を抱えておきながらも、それを感じされないように仲間に気を使いながら、物語を進めていく。しかしそれも互いに互いを気にしないようにしているだけで、本当は仲間である互いを一番心配しているのが垣間見える。それを表現している声優陣は非常に素晴らしく、この魅力的な作品を大きく彩っている。大きく分けて、キャラクターの性格は三つに変化しており、最初は仲間に対して、不信感。そして信頼に変わり、最後は依存と決別と言った感じに変わっていく。キャラクターはその仲間への想いを持ちながら自分自身の想いを達成させていく。そんな心の変化を余すところなく表現できる彼等声優に脱帽の声しかでない。
笑いあり、涙あり、そして感動あり、まるでハリウッドがこの作品を参考にしたかのようだ。
この作品の魅力としては、各話での笑いや、涙、感動が、一つ一つが丁寧に描かれているだけではなく、それが最終的には伏線となっているというところである。上にも書いてあるが、最終話にすべてのキャラクターや、今までの各話での事柄が、つながるようにできている。それはあたかもスパイクの人生を敢えて一つ一つ面白いエピソードとして紹介することによって、スパイクの人生を疑似体験させてくれるが如くである。スパイクは冒頭から過去の恋人との愛に生きていた。それは第一話ではなんとなくわかるのだが、話が進むにつれ、仲間も増え、過去の恋人は大切だが、仲間も大切にし、過去を払拭していくような素振りを見せる。しかし、スパイクは愛に生きていた。その過去を払拭するためにも仲間と一緒に過ごしていたと思っていたが、その過去の恋人であるジュリアが現れて、スパイクの人生の歯車が再度狂うことになる。スパイクは迷わずジュリアを選んだような表現をされていたが、実際は迷わない訳がない。ジェットやフェイと言った仲間と過ごした日々、それを捨ててまで愛していたジュリアを選んだスパイクの心の中は、多くの思惑があったと思う。仲間への謝罪もあれば、感謝もある。そして当然ながらジュリアへの愛もあれば、このままジュリアと一緒に過ごしていってもよいのか、と言う葛藤。最終的にジュリアは撃たれ、亡くなってしまい、スパイクはジュリアを撃ったビショップとの一騎打ちに向かうが、その時も、スパイク自身わかっていたはずである。このままビショップと一騎打ちに向かう必要はない、このまま仲間たちと一緒に逃げて楽しく人生を過ごしていくことが、本当の幸せになるんだと、わかってはいるが、わかってはいけないと自分自身に言い聞かせているように感じる。結果一騎打ちに勝ったスパイクだが、同時に自分も傷ついてしまう。傷つき倒れた、スパイクのその表情には喜びも悲しみも、そういったものは何もなく、ただ、自分の人生に対して、やりきった、満足した、もう何も考えたくないと言った自暴自棄の表情を感じさせる。作品はそのシーンで終わるが、願わくばスパイクの無事とその後の展開を期待したいと思わされる
真のハードボイルドアニメを感じさせる、そんな作品。
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