受験と日本社会を描いた挑戦的な作品
刊行当時としては画期的な設定
現在でこそ『ビリギャル』のような、落ちこぼれていた子が難関大学に合格するというサクセスストーリーが次から次へと世に出ているものの、その全ての先駆けとなったのが『ドラゴン桜』です。小学校で習うことすらきちんと身についていない高校生たちがたった1年ちょっとの勉強で東大を受けようと言うのはあまりに大げさな設定のように思えますが、ストーリーを追っていくうちに実は100%不可能ではなさそうだ、と思わせるような展開に仕立てているところに作者の腕が現れているように思えます。
受験テクニックは実際役に立つものが多い
英語は必要な単語を例文と一緒に暗記する、世界史は複数人で分担して勉強するなど、本当に効果があるのか疑問に思ってしまいかねない受験テクニックが数多く紹介されています。しかし、これらは実在する名門予備校の講師が普段の指導で用いているものばかり。たくさんの生徒が高いお金を払って通っているだけあり、普通に高校に通っているだけでは決して教わることができないような、画期的な勉強法だったのです。実際に受験勉強をする際役立てることができるテクニックを漫画を通して学べるのですから、受験生も一度目を通しておくのをおすすめしたいところです。(ストーリーを追うのに夢中になって、勉強そっちのけになってしまっては元も子もありませんが。)
主人公・桜木建二が日本社会の本質について語っている、数々の"名言"に注目
受験テクニックは受験生や先生をされている方にしか役立たないかもしれませんが、この『ドラゴン桜』を誰もが一度は読んでおくべき本当の理由があります。それは、主人公である桜木建二が随所に言い放っている名言の数々です。例えば、冒頭に出てくる「バカとブスこそ東大へ行け!」という発言。一見すると何を言ってるんだと思えるかもしれませんが、実際の世の中でも、不条理な社会を変えるためには官僚や政治家などになるしかなく、そうしたものへの近道は東大に入ることというのは確かだからです。「東大出りゃ人生180度変わる」という発言も似たようなことを表現しています。その他桜木は、どんな人でも受験はなんとかなるというニュアンスの発言を数多く残しています。社会を変えたいと思うなら受験を頑張って難関大学に進むことが大事で、それには才能を必要とせず、努力次第でどうにでもなるという強烈なメッセージを読者に伝えているのです。
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