時を経ても色あせない大人同士の恋の魅力
大人がわかるこのつらさ
モデル級のスタイルの良さと美しい顔立ち、ハーバード大学を卒業し仕事の第一線で活躍してきたスミレ(27歳)。その隙のなさゆえに付き合っていた彼氏に浮気され、捨てられた彼女は、失恋の八つ当たりで部長の差し歯を折って部署の左遷をくらい、夜のゴミ捨て場で段ボールの中に眠っている青年を見つける。そこから彼女は彼をペットとして住まわせ、愛でることで、自分の気持ちに正直になることを覚えていく…
頑張っている女性っていうのは、男の世界で隙を見せては負けになると思っているんですよね。そうじゃないと仕事ができないと思われる。スミレは本当はとても臆病で、だから努力して努力してあらゆるキャリアを手に入れてきたのに、結婚するのは特に努力もせず女をひけらかして庇護欲をそそる奴らばかり。見た目の美しさも逆効果になり、男を寄せ付けない雰囲気が出てしまっています。そんな働く女性に焦点を当てた漫画はたくさんあるけれど、ペットであるモモ(合田武志)に依存しながらも蓮實さんという理想通りの男の結婚も考えている…体裁も癒しも捨てられない。強くあり続けなければならない女の悩める姿は、働く女性の共感を呼びます。
やっぱり本音を言える相手じゃなきゃ、ずっと一緒にはいられませんよね。最後にはスミレがそのことに気づいてくれて本当に良かったなと思います。ある意味、モモに翻弄されて生きていたスミレですが、スミレはモモがいなきゃ自分を自分として認めてあげられなかっただろうし、モモもそんな強くあろうとする弱いスミレを男として好きになっていたのだから、良いのです!君がいなきゃ、生きていけないんだ。もちろん食事とお金のことを除いたとしても、自分を飾らずにいられる相手同士で生きていきたいですよね。
よくぞ2年…
やり取りがとてもコメディータッチな二人ですが、お互いやることはやっていました。外で。スミレは蓮實と。モモは元カノと。スミレとモモの間には体の関係は一切なし。一緒に仲良く眠ったり、ご飯を食べたり、格ゲーを楽しんだり、休みの日には一緒にテレビを見ながらだらだらしたり。まさに究極の癒しですね。疲れることが全然ない…!ほっぺにチューくらいは、ペットだからと当たり前のように行われています。
しかし、よく20歳のモモが耐えたなーと思いますね。2年も。歯止めがきかなくならないようにセーブしながら、無防備にもほどがあるスミレをずっと見守り、支えていました。はじめのころは、モモにシャンプーをしてあげるときにサングラスをつけてましたけど、徐々に慣れてもう何もつけずに裸を見てるよね…その時点でスミレもモモをそういう対象としては見ていないですし、プラトニックラブってこういう関係なのかなーと思いましたね。モモは男として見てほしかっただろうけど、一緒にいるために何が大事かっていうのを察して行動しています。女ばかりの家に育つ男…欲しくなります…
すでに1巻の時点で、お互いになくてはならない存在になっていたはずなのに、よくもまぁそれを認めずにすれ違い続けてだらだらと関係を続けたなーと感心します。ずっと一緒に居たいのに、お互いがお互いのことにどこまで干渉したらいいのかわからない。だけどちゃんと家に帰ってきて、一緒にいよう。これって最高のカップルですよね、すでに。
蓮實さんマジで嫌だ
序盤からずーーーっとスミレは蓮實さんとモモの間で揺れています。まさにエリートで理想的な見た目・高身長を持つ蓮實さんがスミレを好きでいてくれる。スミレとの悲しいすれ違いのやり取りも相当面白いものがありました。好きが駄々漏れで、どんどんぐいぐい迫り、スミレの戸惑い・迷いは恥ずかしいからだろうという勘違い。モモを疑ってはいない純粋すぎる心…能力がありながらこれだけピュアをみせられると、応援したくもなります。現に物語が進んでいく中で、読者の中でも蓮實派がかなりいました。モモも、スミレちゃん大好きだけど、蓮實さんのことも憎めないと言っているくらいですからね。だからこじれたんだけど…
でもね、すごいいろいろな人と付き合ってるんですよ彼は。惚れっぽいんだって。だいたい、スミレのこと大して眼中になかった時に彼女がいて、スミレがユリによって綺麗になったら超意識しだして、体の関係1回だけで傷つけて。そして香港でもちゃんと女がいたし、帰ってきてからも困ってない。スミレを好きだー!ってまっすぐなのはいいんだけど、困ったことがない男ってちょっと…一歩引いて見ちゃうよね。そりゃ慣れててかっこよくてリードしてくれる男って魅力的だけど、自分の何を見てくれたんだろう?って思ってしまうのが日本人女性ってもんじゃないでしょうか。しかも福島さんの策略によってすんなり福島さんをペットとして飼い、ずるずるとのまれていって…そりゃ福島さん、途中から悲しかったですよ?生きる目的もなくてですよ?ただ蓮實さんのスミレへの想いって、何だったんだ?という残念感と、今まで10巻以上も引っ張ってきたものの別れがこういう形になるとは、悲しすぎでした。蓮實さん、まじ嫌いです。
モモの良さ
ご主人様に従い、甘え、上手におねだりし、癒しの存在でい続けるモモ。でも時にはちょっと反抗してみたり、スミレを揺さぶってみたり…スミレのことをわかっているうえで敢えてやっているあたり、ちょっとずるい。だけどちゃんとこの家に帰ってくるよ?僕はきみのペットだから。物語の中で、モモの気持ちをちゃんと言葉におこして書いてくれている話のときは、本当にうれしかったですね。本当はどんなことを考えているんだろう?ってもやもやしているところをすっきりさせてくれる演出だなーと思います。
そして、序盤の長いパーマの髪からいっきにすっきりショートに切ったとき、もう悶絶でした。超かっこいい…!心なしか体つきも大きく描かれていて、思わずドキドキ。実際には最初からこういう鍛えられた体だったのかもしれないけど、スミレがモモを男としてちゃんと意識してみるようになったことも関係しているのかなと思いました。ちゃんと男なんだって。ベルギーに留学するときのモモの決意も、あーちゃんとスミレの事を考えているんだなというのが伝わりましたよ。男前すぎる…
蓮實さんからの求愛に答えたいと思うのに、いつもモモの事ばかり心配していたスミレにはやきもきしましたね…いい加減気づけ、それが愛ってやつなんだと。モモとの行為をイメージして感じてしまったときがあるだろう!その時になぜ気づけない!くっついては離れて、でもやっぱり戻ってきてしまう。大人だから自由に決められるのに、やっぱり離れられない。モモの罠に落ちてしまったのか、モモがスミレの罠に落ちてしまったのか…そんな関係がもどかしくもありうらやましくもありました。
最後はおめでとう
モモとスミレが結ばれたときは、本当にうれしかったですね。スミレも心から感じるということができたのは初めてだっただろうし、モモからしてもやっとかよ!って思っただろうし。お互いあれだけプロレス技かけたりしてたのに、いざこうなると、恥じらいが…ドキドキが止まりませんね。
これからケンカもたくさんするだろうなーという二人ですが、結局はお互いがいないとだめだっていうことで何度でも仲直りできるだろうなーと予想されました。「きみはペット」を読んでいると、大人っていろいろわかっているだけにめんどくさいって再確認しますね。だから正直な気持ちに戻してくれるようなモモみたいな相手って最高なんじゃないかなって思います。
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