エミリアとその周りの家族たち
目次
ナタリーポートマンのファッションからストーリーを見る。
この作品を選んだのは、キャストのナタリーポートマンの作品だということだ。彼女の作品は、いろいろ見ているがとにかく演技力が高いことと彼女のスタイルも素敵でいつも憧れる。今回のこの作品のナタリーポートマンは、ファッションも個人的にとても好きで、NYらしい都会的で気取らず、大人なカジュアルファッションが良かった。
季節は冬でダークカラーのざっくりしたニットに、細身のデニムを合わせ黒系のロングブーツにインして、ラフな感じでトレンチコートを前を開けてベルトで結んで着る、そこに柄ものグレー系のストールを軽く巻く感じだ。このトレンチコートとストールは何度も出てくるが、彼女の住んでいる家のインテリアの色と合っていて、とても馴染んでいたのが印象的だ。この時は、自分のスタイルを考える余裕がなく、コートはマフラーはいつもの場所にあり、それはさっと手にとって出かけるという印象だ。ヘアスタイルも、ゆるいウェーブでラフ感があり、そのまま自然におろしたまま、かぎ針編みのニット帽をかぶるのも可愛らしかった。そして、後半は彼と別れを決意してからはガラッと雰囲気が変わるのも良い、ストレートヘアにフィット感のあるハイゲージニットに、コンパクトなジャケット、細身の濃紺デニムを淡いラベンダー色のヒールの高めのブーツにインしている。エミリアが気持ちを一新して前に進もうという感じが出ている。
映画で好きなのは、流行にとらわれすぎず、そのシーンや作品に合わせたファッションがあること、その世界観や空気感に引き込まれる。この作品での時代設定は、ここ最近の10年以内という感じなので、実際の今の自分にも取り入れやすく、共感できた。映画の後はよく影響を受けて、主人公の彼女になった気分で浸るのが好きだ。
新しい家族の誕生から失った悲しみを乗り越えるまでの道のりは簡単ではない。
オープニングから想像すると、幸せな家庭をイメージして始まっていく。ナタリーポートマンが演じるエミリアの幸せそうな笑顔と生まれたばかりの赤ちゃんの映像から、これから何が始まるのかと期待する。洗練されたお洒落なNY住まい、家具や内装の色も落ち着いていて大人っぽく、裕福な家庭らしく、赤ちゃんの部屋のインテリアもとてもいい可愛らしい雰囲気でまとまっている。
エミリアの赤ちゃん、イザベルは登場しないが、話の中でとても大切な存在である。この世に3日しか生きられなかったが、家族への影響は大きく、また関係を強くしてくれている。SIDSで亡くなくなるというのは、家族への突然の悲劇であり、心の準備も理解もできないままなので、本当に辛く悲しい出来事である。それを思うと、何か生きる助けはできなかったのかと考えたり、自分を責め続けてしまうエミリアの立場にも共感できる。乗り越えて生きるには、周りの支えや受け入れが大切だということを映画から教えられた。さらに、子供が何も不自由なく育っていることにも感謝しなければならないことを強く思う。
また、映画の中であったセントラルパークで追悼ウォークという、同じ境遇の人たちが集まり、前向きに進もうとする運動もエミリアを前進させるきっかけになればよかったのだが、エミリアにとっては深く傷つきすぎて参加できなかった。自分の辛さを自分だけのもにするのではなく、同じ痛みを持つ人は自分だけでないと知ることも大切だと感じた。エミリアは他にも父親との間にも問題があり、ずっと父親に不信感を持ち、わだかまりがある。いろいろな感情を押し殺しているエミリアの苦しみが作品のほどんどで伝わる。どうしたら、彼女は幸せになれるのか、話の展開が最後まで目が離せなくなった。
エミリアと元妻の子供、ウィリアムとの関係の展開がこの作品の鍵になる。
エミリアとウィリアムの関係は、複雑で棘のある会話が続く、いつも苛立っているエミリアの原因は自分の子供、イザベルが亡くなったこと。しかも、生後3日でこの世から居なくなってしまったことをイザベルは受け入れられず、深い悲しみの中にいる。お互い前に進めず、仲の悪い関係が映画のほとんどの部分を占めているが、その中でもエミリアはウィリアムに少しでも気に入られようと努力を続けていくことで徐々に打ち解けていく。素直になれないウィリアムだったが最後のセリフに、心を動かされる。不器用ながらもエミリアに心を開き、’人って死ぬと生まれ変わる。長生きしてまたイザベルに会うんだ’と話す。ここで初めて、ウィリアムも妹を亡くして辛い思いをしていたことがわかる。
エミリアは過去に自分の父親からも十分な愛情を受けられなかったため、家族の愛を知らない。家族の絆を深めるには、内側に溜め込まず時にはお互いに向き合いじっくり話し合うことが必要だと感じた。最後の約10分間にようやくいい方向に展開し始め、ずっと暗い表情だったエミリアが明るい笑顔を見せる。長い苦しい時から解放された気分だ。最後の会話がとても印象的で涙が止まらなかった。エミリア ’I love you' と言うとウィリアムがはにかみながら 'I know, me too.'と短い会話での答えだが、8歳の難しい年頃の男の子の最大限の愛情表現だとわかる。
エミリアの考える育児とは何か。
元妻キャサリンとウィリアムも実はあまり仲が良いわけではない、過保護になりすぎる母親と母親の言いつけを全て守り信じようとするウィリアムだったが、だんだんそれも崩れていく。キャサリンの教えが全てではなく、エミリアの意見にも徐々にウィリアムは傾ける。ウィリアムが心を開き始めるシーンは、とても印象に残っている。一緒にスケートをするのだが、初めてのことに何でも恐怖心を持ち言い訳しながら、挑戦しなかったウィリアムだが、エミリアはそれを変えていく。過保護な実の母親と真逆の育児だ。食べ物もアレルギーだと思い、乳製品を与えてこなかった母親だが、エミリアは二人の秘密だといいアイスクリームを与える。確かに、実際重度のアレルギーであれば、危険だが本当はそうではなかった。エミリアは、ウィリアムには母親がそう言ったから正しいのではなく、自分で選ぶことを教えているのだと思う。8歳の子供には母親の言いつけを信じるのは当然だが、行き過ぎている言動もあるのだとエミリアは気づいている。自分にも同じ世代の子供がいるのでとても共感できる点が多く、重ね合わせてみることもあった。子育ては、人それぞれ感じ方も違うので何が正しいとか間違っているとか、決めつけることはできない。ただ、エミリアのような性格で不器用な継母の接し方でも、子供には十分理解できるし、いい影響もあるということだ。
家族の絆は変わることはない。
結局、エミリアは家を出ることになるが、その後またウィリアムと再会した時の会話も感動した。一度もそれまで、エミリアに対して継母になつく素振りもなく冷たく接してきたウィリアムだったのだが、ここでようやく見せた継母への優しさだった。ウィリアムは、’エミリアは僕の妹のママだから、家族でしょ。’ そして、エミリアが ’一生あなたの妹のママよ’ と言う。離婚してしまって複雑な中でも家族の絆はずっとつながっているということがわかる。ウィリアムの台詞は、短いながらも意味が深く、子供ながらに悩みを抱えながらも、解決して進もうとしているのだ。本当は、母親にも甘えたいんだと思う。しかし、実の母親も離婚した後、別の人と再婚してしまう。誰にどう甘えていいのか難しいところで、エミリアにこういったのだ。
最後は、復縁したのから分からないままだが、やっと家族が笑顔になり明るい未来を進み始めたところで終わるのが良かった。私も母である同じ立場から、日々をこれからもっと大切にしたいと改めて感じた映画だった。
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