子ども向けだけどテンポが良くてすらすら読める少年漫画 - 妖怪のお医者さんの感想

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妖怪のお医者さん

4.504.50
画力
4.50
ストーリー
4.50
キャラクター
4.50
設定
4.50
演出
4.25
感想数
2
読んだ人
2

子ども向けだけどテンポが良くてすらすら読める少年漫画

4.04.0
画力
4.0
ストーリー
4.0
キャラクター
4.0
設定
4.0
演出
4.0

目次

絵が実は秀逸だった

タイトルが「妖怪」ってなっていたので、まぁこの地味な男の子が実はすごい能力を持っていて、医者としてどんどん覚醒していくんだろうってことは推測できました。それがまさかヒロインである琴子とこんな形で戦うことになろうとは。驚きつつもおもしろい展開でした。はじめはギャグ要素強めかなーと思いきや、徐々にシリアスな展開も入ってきます。徐々に絵も変わってきたなーと思っていたのですが、読み返してみると実はところどころしっかりと綺麗な表情のクロが登場していて、はじめから絵はうまかったんだ…!と気づかされます。戦闘シーンが多くなってくるとどことなくイラストが雑になってる感が出てきやすいものですが、そういうこともなく描き切られていたなーと思いますね。

妖怪たちに関しては、他の妖怪ものを扱った作品に出てくるキャラと結構かぶっていましたが、11つキャラが確立されていて、どちらかというと人間に近い・というかほぼ同じ思考をしているし、見た目が違うだけの人種の差みたいなものでした。後半にいくにつれ、かわいい系の妖怪から残忍でどうしようもない奴、優しくて素敵な奴、いろいろな妖怪が登場します。どれも細かなところまで描かれているので、絵のうまい人が好きな人なら楽しくなってくることでしょう。ふだんはちゃらんぽらんのどうしようもないクロが、妖怪とのバトルや牛鬼になってしまうところなどは魅力的で、ギャップ萌です。

さすが少年漫画という要素

マガジンで連載されていたものなので、少年漫画ならではのエロ要素、主人公の熱血ぶり、ヒロインのかわいさと儚さ、恋敵、友達との友情、白熱した戦闘…あらゆる要素が入っています。途中、ヒロインである琴子がもはや脇役かというくらいギャグ専門になっている気がしないでもありませんが…最後にどうにかまとめてくれたことはよかったです。序盤は、クロがかっこいいようなかっこ悪いような…なんですが、濡れ女とのエピソードがわかり、琴子とクロの出生の秘密がわかり、クロは一段と凛々しいシーンが多くなっていきます。一瞬違う漫画?!と思う時もありました。弥生ちゃんからの告白シーンなんて、別人レベル。(笑)そんなギャグは置いといたとしても、さすが人間だなーと思うのが、覚悟したときですね。覚悟を決めた人間の力って絶大なものがあると思うんです。姿勢も、言葉も変わってくる。それが琴子のおじいさんとの出会い後は如実に出ていたなーと思いました。

それにしても、お医者さんと言っておきながら、病人だろうがなんだろうが、ほぼ戦闘で黙らせるしかないというところが笑えるなと、個人的には思います。怒られて喝入れられないと、病気の恐怖には勝てないのかもしれません。優しいだけじゃだめなんだな~…どんな世界も甘くないです。琴子の妖怪としての恨みの記憶、人間としてのいじめの恨みの記憶。両方の世界の辛さをわかっている琴子だからこそ、できることはいっぱいある。負のエネルギーがどんなときでも奮起する力を与えてくれると思うから、不幸は悲しいだけじゃないよねって教えてくれていると思います。作中にも疫病神の話あったしね。

妖怪と人間という相容れない関係性の終着点

妖怪と人間の子どもの取り違えってよく組み合わせたなーと思います。もちろん、実は琴子も妖怪だった説は早期に自分の中でも浮上しました。そうじゃないとお互いに対立したりしてうまいことハッピーエンドにならないかもしれない…という恐れがあったからです。でもまさか逆にクロのほうがもとは人間だったとか、しかも子どもを妖怪のほうが入れ違いで育てていたとか…どうなってるんだろう?しかも、クロに教えていたことは、人間ってあったかいっていうことだったし、人間のことが好きだったんだろうなと思うんです。理解したい・信じたいと思っていたものからの裏切りほど、許せないものってないんだなー…って思いました。明らかに違うものを持っている人・モノを目の前にしたとき、興味はあるけど、恐怖もある。そういう好奇心って表裏一体な気もしますね。手を出してはいけないと思っているものほど手を出したいと思ってしまうあの衝動と、この物語の中での人間と妖怪の立場はよく似ていると思います。

そんなこんなでいろいろな妖怪たちの治療に当たっていく中で、自分たちの正体についても明るみになっていき、最終的にはそこを解決して人間として生きていく形になりました。女の子好きでどうしようもない話もたくさんあったけど、まじめに締めくくってくれて安心しましたね~。今まで怖いと恐れて知ろうともしなかった存在を認め、理解し、共存を目指していくことは、どんな世界においても大切なことだし、いろいろな国の人がこういうことを考えられたら日本みたいに平和なのになーって思います。

躊躇なく鉄砲で体打ち抜いたときは驚いた…

いろいろと見せ場はあると思うんですけど、クロを助けるために鉄砲で自分を打ち抜くしかないと言われてすぐ発砲…怖い。想像しただけで怖い。でも死ぬより怖い経験している琴子からすると、お安い御用だったのかな。こういう自己犠牲のたぐいをいろいろな作品で読むと、自分を犠牲にして何かを生かそうとするのが良いことなのか悪いことなのか…ただの自己満足だって言う人もいるだろうし、美しい!って言う人もいるだろうし。何が正しいのかはわからないよなーっていつも思います。とりあえずこの物語を読んできた読者としてこれを見てまず思ったのは、すげーなっていうことです。お祓いができると嘘をつき、自分をつくろい、自分を守るために生きるだけで精一杯だった琴子が、自分を犠牲にしてでも守りたいと思えるものができたことは、今までとは違うステージに彼女が立っているということなんだなーと思います。それってすごくないですか?自分なんていくら年齢重ねたって自分を守るだけで精一杯だよ!今までの自分になかった気持ちを素直に受け入れて素直に行動に移していくのは、歳を重ねるほどキツくなってきます。だからいつでも新しいマンガを読み、小説を読み、ビジネス書を読み…あらゆる世界を体感するのってすごい大事だと思うわけですよ。今回もまた、いい感じに刺激をもらいました。ありがとう琴子よ!

もう少し続いてもよかったけどね

これだけは確実なことですが、今まで出会った妖怪たちとももう一度出会わせてくれて、ありがとうございました!いい話を振り返ることができましたよ!物語の内容的に、いくらでも連載はできたのでしょうけれど、ダレることは間違いなかったので、ここで区切ってくれてよかったんじゃないかと思っています。恋愛もね、あってもよかったですけど、いらなかったと言えばいらなかったです。弥生ちゃん、ごめんなさい。(笑)ヒロイン・脇役関係なく、平気で太らせたり醜態さらさせたり…ギャグはうん、少年漫画っぽいわーと思います。時々くだらなすぎて笑えないこともありましたが、シリアスな展開と相まってちょうどよい空気感で締めくくられました。妖怪のお医者さんってことですけど、お医者さんって子どもの将来の夢ランキングで不動の1位に輝いてるじゃないですか。こういう少年誌の漫画の与える影響って意外とあると思います。安定職業だってことに限らずね。医療系でブラックな方向ってなかなかないですもん。未来明るい!って思っちゃいますよ、そりゃーね。

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