原題「The Story Of Us」 - ストーリー・オブ・ラブの感想

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原題「The Story Of Us」

4.04.0
映像
4.0
脚本
4.0
キャスト
4.5
音楽
4.0
演出
4.0

目次

嫌悪感を感じない二人の諍い

この映画はとても気に入っていて、もう何度見たかわからない。ただ単なるうまくいかなくなった夫婦を描いただけでなく、もっと深みのある何かがここに含まれているような気がする。
冒頭はインタビュー風に仲の良い二人のシーンから始まるのだけど、初めてみたときはこれが本物の取材であるかのように思うくらい、二人の演技は自然だった。もともとアクション俳優イメージの強いブルース・ウィリスだけど、こういった自然な演技も素晴らしい。この普通のおっさんの感じを出せるのは、あとはトム・クルーズくらいかな(「宇宙戦争」のトムのおっさん感も素晴らしかった。)。
ブルース・ウィリス演じるベンとミシェル・ファイファー演じるケイティの夫婦は結婚15年と言う歳月を経て、顔を合わせば言い争いになってしまっている。彼らの言い争いが映像の中で頻繁にでてくるのだけれど、大声で言い争っているのも関わらず、なぜか嫌悪感が起こらない。ただ罵りあっているだけの映画なら多分見続けることは出来ないと思う。彼らの言い争う姿に陰湿なところはまるでなく、思っていることをそのまま口にしているところにさっぱりとした印象を受けるからかもしれない。それに言い争うのは、お互いの関係を少しでもよくしたいという願望の現われでもある。本当にいやなら相手のことを無視するようになるだろうし。それにこの二人はこんなに言い争っている間も、相手のことを決して嫌いにはなっていない。それを感じ取れるからかもしれない。

冷却期間をおいたときの二人の違い

子供がサマーキャンプに行っている間、離れて暮らす事を決めた二人だけど、ここで二人の態度が決定的に違う。ケイティはベンとの昔の思い出を思い出しつつも、彼のいない空間をできるだけ楽しもうとし、ベンは何をするわけでもなく、ぼんやりと二人の仲良かったときのことばっかり考えている。これは男性と女性の違いとしてかなりのリアリティを感じることができる。実際別れた後に相手のこときれいな思い出に結局引きずるのは男性の方というのは定説だし。でも決してケイティだって忘れ切っているわけでなく、それは、クリーニングしたジャケットを取りにくるベンのために、どこにおけばナチュラルに見えるかを考えまくったり、やってきたベンを出迎えるときにフキンをいじりまわしてみたり。それは、どうすれば相手のことをそれほど考えていたわけでないように見せることが出来るか、っていう本当に些細なプライドが見え隠れしている。このあたりのシーンは個人的にとても好きなところ。
久しぶりに家でディナーを食べる二人だったが(ロマンティックにキャンドルとかも灯したりするところが少し関係回復を狙ってたりするんだろう。)、最後は結局言い争いになってしまう。ここの争いの表現が秀逸で、ケイティの後ろには彼女の母親と父親が現われ、ベンの後ろには彼の母親と父親が現われ、彼らは彼らでケンカを始める。このあたり下手すると見ていられないくらいのコメディ臭がでてしまいそうなものだけど、これに関していうと、そういうことは全く無く、結婚する相手の後ろにはそれぞれの両親、それは育ってきた環境というべきものの違いがあるということに改めて気づかされる。

ベンの友人たちとケイティの友人たち

このストーリーにこの友人たちとの会話もよく挟まれる。もちろん男には男同士の会話、女には女同士の会話があって、それも見所。同性同士だからこそ話せる本音は、聞いていて「あるある」とうなずいてしまうところもたくさんある(旦那がトイレットペーパーひとつ換えないとか、フォークで背中をかくとか)。笑ってしまいそうになるけど、本人たちはいたって真剣にこの話を繰り広げている。それは何一つ現実とかわらないリアルな描写で、ついつい感情移入してしまう。
ちなみにベンの友人スタンはこの映画の監督でもある。

二人の子供には普段どおりに振舞おうとするけれど…

サマーキャンプにいっている二人の子供に会いにいくときに、二人の愛が冷め切っていることは内緒にしようと言うが、行動の端々でうまくいっていないところが見え隠れする。ここはあえてコメディっぽく書かれている。ピンポンのボールをケイティの頭にぶつけてしまったベンのあの表情は、ちょっと見もの。

文句なしのエンディング

紆余曲折を経て、二人は破局に至らずにすむ。最後の、ケイティの涙まじりのベンへの告白はいつみても良い。その間に挟みこまれる、二人の子供の小さいころの映像。あの走馬灯のような映像はいつみても涙腺が緩んでしまう。そして時々どもってしまう彼女の言い方が余計にリアル。それを聞いているベンの表情もストーリーを通して見たことのないもので、感動をあおる。
最後は冒頭のインタビューのシーンにつながり、二人が愛を取り戻すことができたことがわかる。
この映画は倦怠期を迎えた危機的な夫婦に見せると、かなりの効果があるとも思う。そう思えるくらい自然な話の流れだった。
余談だけど、この映画で、家族が食事するところで「今日のHi(良かったこと)Low(悪いこと)は?」と聞くシーン」がある。これは我が家の食卓でも、毎日言う話題となっている。

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