その他多数の「入れ替わり物」とは一線を画す作品 - フォーチュン・クッキーの感想

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その他多数の「入れ替わり物」とは一線を画す作品

3.53.5
映像
3.5
脚本
4.0
キャスト
3.5
音楽
4.0
演出
3.5

目次

秀逸な一人二役が見所

思春期・反抗期まっさかりの娘アンナと、いささか頑なな性格ながらも教育熱心で自らは精神科のドクターという母親テスが、ひょんなことで中身がいれかわってしまう「僕がわたしでわたしが君で」のような話だが、これはそういったコメディとは一線を画した作品のように思う。
もともとこれは昔ジョディ・フォスターが主演した映画のリメイクだが、リンゼイ・ローハンはまた違った現代的なアンナを、パワーいっぱいに熱演している。彼女はこの作品以降、あまりいい噂が聞けなくなってしまった。演技力もあったし、若さゆえのかわいらしさもあったのに、まったく残念。またどこかで見ることができたらいいのに。
ともあれ、入れ替わってしまった二人はなんとか元に戻ろうとするんだけど、なかなかうまくいかない。そのうえ、母親のテスは婚約者と結婚を控えているのである。外見はテスでも中身はアンナ。このときのアンナの気持ちを考えると思わずこちらもパニックになりそうになる。それを中身がテスのアンナが慰めるシーンがある。これは多分演じる側からしたら相当難しいが故に、役者魂をくすぐられるんじゃないだろうか。外見そのままで、母親らしさをにじみださないといけないのだから。でもこの映画では、ジェイミー・リー・カーティス演じるテスも、リンゼイ・ローハン演じるアンナも、その使い分けがうまくできていて、思わず感情移入してしまうくらいだった。
この母親役のジェイミー・リー・カーティス。彼女が出ている映画はいくつか見たが(「トゥルーライズ」での娼婦のふりしたダンスは最高)いつも、コミカルな演技の中にも役柄の魅力をあふれさせていて、とても好きな俳優の一人だ。あと、彼女は子供向けの本も出しているらしい。ぜひ一度読んでみたいと思う。
入れ替わりもので同じくらい面白いのは、ジョン・ウー監督の「フェイスオフ」。ニコラス・ケイジとジョン・トラヴォルタの一人二役も素晴らしかった。二人が対峙する時、部屋の鏡に自分の顔が映るんだけど、入れ替わってるものだから、それが相手の顔になる。あれも名シーンだった。

入れ替わったことのよって相手のことを理解していく

入れ替わった二人は、戻ろうという努力もしながらも、日常の生活もこなさないといけない。テスのアンナは学校に、アンナのテスは自らのクリニックで抱えている患者とカウンセリングを行わないといけない。そこでそれぞれ日ごろから相手に思っている不満を解消させたりする。アンナのテスが、髪を切り服を買いそろえ、ピアスをあけて颯爽と町を歩いているところはとても気持ちがいいものだった(似合っていたし。)。テスのアンナは学校で、自分なら簡単にこなせると思っていた友達関係の改善や勉強がまるでうまくいかず、まさかの反省室にいくところなどは、脚本がうまく出来ていると思った。お互いが、自分なら簡単に出来ると思っていたことが全然できず、相手のことを思いやるところに、自然にお互いのことを見直し、リスペクトできるからだ。余計な説明がいらない。このあたりはコミカルなのに奥深い。
また入れ替わったことによって、自分が体験したことのない世界も体験する。アンナのテスにとっては大人の世界の閉塞感とやりにくさ。テスのアンナにとってはまさに、自らがアンナに禁止していたこと全てではないだろうか。それは怒りながらも新鮮だったに違いない。勝手に髪うの毛を切られ、ピアスをあけられながらも、それは自分では絶対にしなかったことに違いない。全てそのままに、結婚式の日にはそのピアスをはずさずに晴れの日を迎えているところに彼女なりの変化を感じることができる。
お互いの目を通して見ることほど、それぞれがそれぞれなりに必死に生きていることを痛感できることはないだろう。
アンナの口癖「You are ruining my life!」(あなたのせいで人生台無し!)はもう出てこないと思う。

音楽のカッコよさ

アンナはロックバンドにはいっていて、ギターがかなりうまい。このあたり、本当にリンゼイが弾いているのかと思わせるくらいすごい(特にTake Me Awayのソロ部分)。ライブハウスで、アンナのテスが舞台にあがったテスのアンナの代わりに弾いたギターソロは今思い出しても鳥肌がたつ。この映画はそういった挿入されている音楽も魅力のひとつ。無事二人がもとにもどり、つつがなく行われた結婚式で歌われる歌も名曲。ちなみにアンナのバンド「ピンクスリップ(Pink Slip)」は車検証のような意味あいをもつらしく、このあたり、運転をさせてもらえなかったアンナの願望がでているのかもしれない。
あともう一人、ジェイク。あの人もう少しカッコいいほうがよくない?アンナがジェイクをうっとり見つめるところがあるけど、どうしてもそんなにか?と思ってしまう。なんかあんまりいいところが感じられなくって。ロック好きのアンナのことだから、もっとロック的な人であって欲しかったようにも思う。

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他のレビュアーの感想・評価

いかにもだけど、面白い。

何度でも見たくなってしまう。思春期真っ只中の娘と、その母が入れ替わってしまうコメディー。ありがちな設定かと思いきや、娘のアンナを演じるリンジーローハンの演技力に惹かれ、最後まで一気に見れた。若いながら中身が母親になってしまうという、自分よりもはるかに年上の母親を見事に演じきったと思う。2003年の映画だが、今見ても、何度見ても新鮮だ。家族のカタチ喧嘩が多かったアンナと、ジェイミーリーカーティス演じる母親のテス。入れ替わりをきっかけに、お互いの気持ちや立場、大変さを徐々にわかっていく。アンナの高校での嫌がらせをうけるシーンにはかなり共感できた。親には言い出せず、またきっと信じてもらえないだろうという諦めから、相談もできなかったであろうアンナ。また昔アンナの親友だった、ジュリーゴンザロ演じるステイシーの悪女っぷりはいつ見ても憎めない。いかにもアメリカンハイスクールに必ず居そうな、勝ち組の意地悪...この感想を読む

5.05.0
  • ぷこぷこ
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