男女共に人気のある作家さん
まずは表紙、裏表紙を楽しむべし
細く、まさに少女漫画!という感じの柔らかいタッチの線、ふわふわのマシュマロの様な色の使い方は絶品。ずっと眺めていられる。
草の上 星の下(表題作)
7つ違いの、自分とはタイプの違う美人な姉への羨望と嫉妬。
私にはそんなに離れた姉がいないからよくわからないけど、親が自分より上の兄弟の言う事の方を良く聞くっていう点で、面白くないのは理解出来る。
そして姉妹ってこんな感じなのかなと思う。
親どころか恋人までも姉をちやほやする所は読者もモヤモヤ・・・。
見事なまでに主人公の朝子に感情移入している自分に気づく。プロなのだから当然と言えば当然だが谷川さんはキャラクターの描き方が抜群に上手いと思う。
姉だけではなく、恋人との関係も読者に忘れさせる事無くきちんと描かれているし、仲直りの小道具としてのタイヤキも絶妙なタイミングで突っ込んでくる。
谷川さん独特の丸い絵柄がストーリーと合っていて最後はホロリとさせられるが読後感は爽やかだ。
サルビア
妻が夫の昔の彼女との写真を見つけてしまう確率ってどのくらいあるんだろうか?
少なくとも私は「昔飲み屋のオネーサマと撮ったプリクラ」しか見つけた事はない(笑)
仕事の忙しい夫、昔の彼女との写真、それを気にしない夫、そんな時昔の彼氏から「会おう」と言われたら・・・どうするかなあ。しかも夫に「行っといでよ」とか言われたら・・・。
まだまだ子供で喧嘩別れしてしまった元彼との関係や、夫婦である事の絆の描き方も見事。
「ほんもののおじいちゃんになった笑顔が見たいと思った」
という主人公の棗(なつめ)の台詞は胸にズシッと来た。
プリズム
本当にプリズムみたいにキラキラした作品。主人公が高校生だから他の収録作品よりちょっと読者年齢が下かな?と感じてしまうけれど高校生ならではの視点、行動がいちいち可愛くてとても愛おしい。
ある意味アンハッピーエンドな作品なのにぷるぷるしてるおばあちゃんや、「栗林だけに栗のタイピンを・・・!?」なんて台詞で何となく笑ってしまう所があるのも谷川さんの魅力の一つだと思う。
3人で仲良くなって、ああいいなー、兄夫婦と妹みたいだなと思わせた所で「やっぱり違った」と思わせるが、このラストには拍手を送りたい。
アンハッピーエンドはあまり好まないが、この作品は何度でも読み直したいと思う。
春が来たなら
普通結婚する時ってこんな感じなんだろうか?
私には全く無かった感覚なので(笑)正直イマイチわからない。
結婚に向かう気持ちと残して行かなくてはいけない独り者の父、私も父と2人暮らしだったが追い出されるようにして家を出たので、こんな風に父親を見ることが出来たら幸せなんだろうなと思う。
マリッジブルーとは多分違う感覚で、母親が居たならまた違った感情のはずで、主人公の智と父親の心情の移り変わりが本当に丁寧に描かれている。
舞台が真冬の、雪下ろしが必要な時期なのも主人公たちの心情を表すのに一役買っている。
これが真夏の、セミがミンミン鳴いている時期の話なら違った印象になると思う。
そこまで考えて作品を作っているのかと思うと感服だ。
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