夫婦に妥協は必要。夢に妥協しなかった結果が招いた悲劇。 - レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまでの感想

理解が深まる映画レビューサイト

映画レビュー数 5,784件

夫婦に妥協は必要。夢に妥協しなかった結果が招いた悲劇。

4.54.5
映像
4.5
脚本
4.5
キャスト
5.0
音楽
4.5
演出
4.5

目次

タイタニックより素晴らしい、リアルな夫婦の風景。

レオ様演じる夫・フランク。
ケイトが演じる妻:エイプリル。

この夫婦設定がいじらしい…。

フランクは仕事ができる男。
ケイトは美しい、女優志望の専業主婦。

そんな二人なら…お互いにお互いの夢を持って当然ですよね。

夫は、自由になりたいという思いの一方で、出世のチャンスも逃したくない。
妻は、女優として舞台に立ちたい、自立したい。

お互いの才能に惚れて結婚し、子供を授かったのに、
悲しいかな、
子供がその二人の愛の障害になっていきます。

子供は可愛い。でも子供が最優先だとは描かれていないのが、
この作品にドキっとさせられるポイントです。

子供と共にフランクの誕生日祝いをするシーンは、
非常にかわいらしく幸福な風景として描かれていますが、
映画は常にフランクとケイトという夫婦のみに視点を置いています。

生きているのは生きているのは、私たち夫婦。
生まれて来る子供は必要か否か。

そんな問いかけが、ずっとついて回るのです。

子供=生活、現実、収入。
さあ、あなたならどうしますか、と。

自分は特別だという思い込み。特別だと思われたい願望。

フランクは、仕事場の女性と浮気をします。
妻エイプリルに認められたい願望を満たすかのように、
浮気の合間ずっと、浮気相手の女性対して気取った立ち振る舞いをしています。


一方エイプリルも、隣人夫婦の夫に長く想いを寄せられて、
カーセックスに及びますが、
こちらも一夜の気晴らしのような情事でした。

結局、フランクもエイプリルも、お互いを愛しており、
浮気をしても常に互いのことを想い合っている。
お互いにお互いを愛しているあまりに自己嫌悪を繰り返し、
今日からやり直そうと試みますが、すれ違っていきます。

すべては、「自分は特別だ」「どこかに本当の自分がある」という思込み。

それを認めてほしい、という願望です。


そもそも、レボリューショナリーロードに引っ越してきた日も、
「ここは特別」と不動産者に言われてその気になったことがきっかけでした。


『私たちは特別、何か他人と違うものがそこにある。』という、幻想。

ドキっとするところだと思いませんか。

私たちは無意識に自分が特別と思っている部分があるはずなのです。
でも実は、きっとみんな「特別」じゃない。

特別って何が特別なんでしょう。

思い込み?
人の評価?


不動産屋の女が「あの夫婦は特別」と言っていたことが、
終盤で急に「特別」ではなくなることが、
他人の評価のいい加減さ、脆さを物語っていますね。


その思い込みの滑稽さは、

実は不動産屋の女の息子が登場するシーンの滑稽さとも、どこか重なって見えてきます。

大きな体つきでありながらどこか幼い印象を持つ息子が登場します。言葉の攻撃力は強いのに、心の防御力が紙のようにペラペラの彼は、

正直に夫婦に言葉を投げかけていきます。


映画の中で、
この息子とフランク夫婦のやりとりが二度登場しますが、
わざわざ二度登場させたことにも意味があります。

この息子が異常に見える風景と、
普通に見える風景を登場させる必要があるのです。

息子を大切に育てている不動産屋の女は、
その息子を「病気なのよ」と特別扱いしながら
大切に育てている様子が見られます。
やがて、この息子がいることは、
この不動産屋夫婦の幸せなのだろうか、と思えてきます。

同時に、この息子の言葉と、
どこか気取っているフランク夫婦の思考は、
一体どちらが正常なのか、異常なのか、
曖昧になってくる面白さがあるのです。

何が正しく、何が正常で、何が異常なのでしょうか。

さて、ではこの夫婦はどうすればよかったのでしょうか。

この作品の永遠のテーマは、
「この愛し合った夫婦は、どうすれば幸せになったのでしょうか?」
という問いかけです。

結婚後に必要なものは『妥協』なんて言い方をする人もいますが、
この夫婦の場合、どちらも一切自分の夢を譲らなかったことが、
悲劇を招いています。


妻エイプリルは、自分で堕胎して命を落とします。
妻が優先したのは、自由。

夫はそんな妻の決断を理解できない様子で、
残された子供たちと生きていきます。
最後のカットは、苦悩とも茫然とも言えない表情です。

エイプリルとカーセックスした男は、
片思いを抱えたままに、エイプリルと永遠に別れることになりました。

夫は今の仕事を捨てて、妻の堕胎に賛同すればよかったのでしょうか。
妻は、夢を諦め、子供を産め育てれば良かったのでしょうか。
はたまた、向き合えない現実と向き合うために
浮気に精を出せばよかったのでしょうか。

それとも…?


この答えの出ないモヤモヤが、何度もこの映画を観たくなる気持ちにさせるのです。

ちなみに、不動産屋の女の夫は、
妻の言葉に耳をふさぐことで生活を守ってきたようです。
「妻と向き合わないこと」これが平穏を守っている秘訣のようですね。

隣人夫婦は、「目の前のまばゆいものから目をそらし」堅実に生きること。
これが夫婦生活の平穏を守れるコツのようです。

あなたも感想を書いてみませんか?
レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。
会員登録して感想を書く(無料)

関連するタグ

レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまでが好きな人におすすめの映画

ページの先頭へ