マリサ・トメイら、ベテラン俳優の力で成立している感あり - Re:LIFE〜リライフ〜の感想

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マリサ・トメイら、ベテラン俳優の力で成立している感あり

3.13.1
映像
3.5
脚本
2.8
キャスト
4.0
音楽
3.0
演出
2.8

目次

楽しくするする見られるライトな味わいの映画

2014年作品。監督のマーク・ローレンスは、サンドラ・ブロック主演の「デンジャラス・ビューティー」の監督で、複数の作品で彼女を起用してきましたが、「ラブソングができるまで」以降、3作連続でヒュー・グラントを主演に作品を撮っています。

個人的には彼の出演作品は熱心にあまりフォローしておらず、一番印象に残っているのが1999年の「ノッティングヒルの恋人」という有様なのですが、そうか、ヒュー・グラントも、もう56才になったのか、と驚くと共に、常に多くの作品にコンスタントに出続けていることだなあと感心させられます。

本作でも感じましたが、ヒュー・グラントの魅力って、どこか隙があるところなのではないでしょうか。ちょっと情けないというかどんくさいというか。だから、癖のあること言っても憎たらしくならない、可愛げのようなものがあると思います。そしてシリアスはあまり似合わないし、押し出しが強くない俳優なので、女優が引き立つ俳優でもあると思います。

マーク・ローレンス監督の作品は、個人的には深みに欠けているとは思いますが、説教くさくなく、負担なく楽しくするする見られてしまうライトな味わいの映画です。そういう重たくない映画だからこそ、 ヒュー・グラントがいい感じにはまるのでしょう。

ハリウッド映画の文法にのっとってお手本通り

はなから大向こうを狙った作品ではありません。小難しくならず、でも、ああなんだか身につまされるよなあ、という感じの親近感がベースにあります。

主人公のキースは、15年前にオスカーを受賞した「元」人気脚本家、しかしそれ以降は今は鳴かず飛ばず。でも、なまじっかプライドがあるから、妙に屈折しためんどくさいキャラクターなのだけど、ヒュー・グラントだから嫌らしい奴一辺倒にはならないし、確かに情けないんだけど、同時にどこかあっけらかんとした開き直りの感覚もあって、しゃれにならない痛々しさはない。

そういう彼が、めんどくさい彼を引きずったまま田舎の大学教師をしながら、つまらぬ自意識からだんだんと自由になり、自分にとって大事なことはなんなのだということを改めて考え直すという過程を、楽しく描いていると思います。

キースがハリウッドというある意味では正気の沙汰ではない独特の世界に長く生きて来て、そこにどっぷりと浸かっていたからこそ、「普通の人生における大事なもの」「人として守るべきライン」というものをよく感じられたと思います。まあ、分かりやすく単純な設定ではあります。

ハリウッド映画の文法にのっとって要素がきちんと整理され、全体として整然と作られている本作。各シークエンスの位置づけ、役割、起承転結、どれもお手本通りの感。複雑に、深刻になりすぎぬよう、あまり登場人物にいちいち踏み込まないし、それゆえ葛藤も深いものではないので、軽やかで見やすいものになっているとは思いますが、当然深い満足感はなく、人間を描けているという感覚は、最後まで持てないまま終わった気がします。

マリサ・トメイが魅力的

そんな訳で、申し訳ないのだけど、この映画には、作り手の深い思い入れや熱のようなものはあまり感じられません。それはコメディタッチという映画のスタイルに依るものではもちろんありません。既存の枠組みを上手に使って、労を省いてそつなく作る、というか、ルーティーンの匂いがするというか。あまりそういう映画には興味が持てません。

けれど、この映画をなんとか好ましいものにしているのは、マリサ・トメイの存在のおかげであるところが大きい。顔に、演技に、生き様が表れている、素敵な女優さんだと思います。彼女のたたずまいに映画が随分救われていると思います。

「忘れられない人」のキュートだった彼女も、52才。色んな苦労をして、職業女優としてすごくしっかり生きてきたんだなと、最近の彼女の出演作を見ているといつも思わされます。そのしっかり感がちょっとせつなかったりもするのですが、人として格好いいな、そして可愛さを携えたまま年を重ねていていいな、と思います。

マリサ・トメイと共に、本作をひとつ上のグレードにぐぐぐっと押し上げている、二人のベテランの俳優も印象深かったです。

ひとりは、「セッション」で鬼軍曹みたいな教師を演じて、オスカーを穫ったJ.K.シモンズ。「セッション」のフレッチャー教授があまりにどえらいインパクトで、一気に注目を集めた感がありますが、テレビ含め脇役として数多くの作品に出演して来ただけあって、フレッチャーとは正反対みたいな、涙もろくて可愛らしい学部長もさすがの安定感。

そして、怖ーい女教授役のアリソン・ジャネイ。エミー賞を7度も受賞しているだけあって、タイプキャストではあるのですが、やはり安定感抜群だったと思います。

生徒たちは、うーん、それなりでありました。

ベテラン俳優たちの力でなんとか成立している感のある作品という印象です。

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