ミッキーマウスの代表作が実写版で - 魔法使いの弟子の感想

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ミッキーマウスの代表作が実写版で

5.05.0
映像
5.0
脚本
5.0
キャスト
5.0
音楽
5.0
演出
5.0

目次

実写版「魔法使いの弟子」

この映画のタイトルですぐに思い浮かぶのは、ミッキーマウスの代表作である「ファンタジア」ではないでしょうか?「ファンタジア」の方は、オーケストラによるクラシック音楽を主とした映画で、セリフによってではなく音楽で物語が進んでいきます。ディズニー長編映画の魅力は音楽の美しさですが、映画「ファンタジア」はまさにその先駆けといった作品だったようです。この「魔法使いの弟子」ですが、実はフランスの作曲家ポール・デュカスが作曲した交響的スケルツォ「魔法使いの弟子」が原案となっているようです。このことも、「魔法使いの弟子」を音楽中心にした映画にした一つの要因なのかもしれません。

この映画は主演でもあるニコラス・ケイジ氏によって企画されたもので、現代の家族にも見てほしいと思って製作をされたようです。「ナショナル・トレジャー」のスタッフが再集結して製作が行われていることもあってか、バルサザールとホルバートのカーチェイスに魔法対決まで加わったアクションシーンは、まるでジェットコースターのようにドキドキワクワクします。ミッキー版「魔法使いの弟子」とは違い、アクションが中心となった映画になっていますが、家族で見てほしいというニコラス・ケイジ氏の思い通り、家族で楽しめる映画となったのではないでしょうか。

自分の命を犠牲にしない

この映画では長い時を経て成就する二組のカップルが描かれています。最終的に成就するのは同じですが、この二組が相手に対する愛情表現は正反対と言ってもよいでしょう。バルサザールとベロニカの場合、愛する人を助けるために自ら犠牲になろうとします。そしてデイヴとベッキーの場合は、愛する人を助けるために自分ができることをしようとします。それが一番表現されているのが、ベッキーの「彼女か友だちか答えを知りたいなら死なないで」というセリフです。相手が死ぬかもしれないから教えてほしいと言っているのにもかかわらず、教えないなんて「ひどいんじゃないか」と一見考えがちですが、このセリフでデイヴは、ベッキーのことを本当に愛しているのであれば、自分が犠牲になって死ぬのではなく、生きるために最大限の努力をすることこそ、彼女のためになるのだと気づいたのではないでしょうか?

誰しも愛する人が何かの犠牲になったり、死んだりすることを望んではいません。ましてやそれが自分を守るためだったと知って、うれしく感じる人はいないでしょう。それどころかもっと苦しむことになるのではないかと思います。どちらかというと、自己犠牲は崇高なイメージがあり、自己を守ることはみっともない行為のようなイメージがあるため、自分が犠牲になったほうが、解決が早い場合どうしても他の方法を考えるということがしにくくなってしまいますが、デイヴとベッキーのように自分ができることに全力を注ぎ、力を合わせることで誰か一人を犠牲にするといったことは回避されるのでしょう。

魔法の力と物理・化学との共通点

「魔法使いの弟子」という物語は、魔法使いの弟子が師匠の留守中に魔法を使ってほうきやモップに掃除をさせたところ、掃除道具たちが暴走し部屋中水浸しにしてしまい、掃除をやめさせようにも魔法の解き方がわからなくて師匠に見つかってしまう、というのが話の主格となります。この映画では、そこに物理・科学という現代的な要素を組み込んでいます。そのため、物理・科学というものが苦手だと思っている人にも、この映画を通じて少し身近なものに感じることができるのではないでしょうか?

魔法と言えば超自然的で、物理・科学と言えば超現実的で双方は正反対の立場にあるように思われがちです。そのため魔法のような超自然的な力を信じる人の中には、何でも科学や物理で証明しようとする人たちを理解することができず、逆に物理・化学のような超現実的な考えの人たちには、何でも見えない力のせいにする人たちを理解することができずにいる人たちが多いと思います。しかし、どちらが正しくてどちらが間違っているのかそれは誰にもわかるものではありません。昔は魔法と言われていたものが、現代では科学で解明されていたり、いまだに解明されていなかったりするものもあります。そのことからも、科学者たちが魔法は存在しているのではなく、ただ単にまだ解明されていないだけのもので、解明しようと思えば近い将来解明することのできるものだと考えていても不思議ではないでしょう。しかし、科学が発達すればすべて解明できると思っているわけではありません。この映画ではそのバランスがうまく表現されていると思いました。

物理専攻のデイヴが魔法使いの弟子となっていて、しかもたった一人の「選ばれしマーリニアン」となっています。最後ベロニカを倒す際には魔法の力だけでなく、科学的な考えを取り入れています。両方の力が合わさって世界を救ったことから、排他的な考えではなくいろいろな考えを受け入れる柔軟さが問題解決に必要だと説いているようです。

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