金子節は更に進化ッ!!
変身少女モノだとか言った奴はどこのどいつだッ!
『シンフォギアG』を変身少女モノ、などと括るのは愚の極みだった。『シンフォギア』の正体は根性ガチバトルアニメ~一話に一度は必ず歌うよ~だったのだッ!
それぐらい、本当に見た目で判断していたことを筆者は後悔しています。
いや、面白い。面白いし、とにかく熱いのだ。
近年、変身ヒロインを取り扱う作品はかなり多い。というのも、『まどマギ』の影響が強いのだと思われる。
もともと『プリキュア』や『セーラームーン』など、変身ヒロインモノには一定の人気があったが、『まどマギ』のヒット以降は雨後の筍のように変身ヒロインものが現れた。タイトルに“魔法少女”とつく作品が、『まどマギ』以降一体どれほど増えたことだろう。
そのあまりの「ザ・二番煎じ」ぶりに、見る前から「どうせみんな同じだろ」と決めつけてタイトルの概要を知ろうという気さえ起きなかった。
だが、断言してもいいが、『シンフォギア』は単なる変身少女モノではない。しかも、それらの括りすら越えて、凡百のアニメ作品を凌駕する面白さを持っている。
一作目である『シンフォギア』でもその片鱗は見えたが、『シンフォギアG』に至って更にその輝きは増した。変身ヒロインモノなんて括れるものかよッ! これは唯一無二のアニメだッ!
OTOKO前たる少女たちの信念ッ!!
更に『シンフォギアG』の面白さについて追及していこう。特に、前作『シンフォギア』からの変化(あるいは進化)を取り上げていこうと思う。
まず、ヒロインたちが精神的にかなりパワーアップしたことに注目したい。
第一期目では、精神的な未熟さやブレが見えたキャラが多かった。
代表的なのは、風鳴翼であろう。ガングニールを継承した響につっかかったり、敵対していたクリス相手に絶唱するなど、翼には向こう見ずな(あるいは危ういとさえ云える)面があったが、二期では二課の装者の柱として活躍する。その頼もしさは、最年長者らしくリーダー的であり、古風な物言いとあいまってもはや男前といってもいいほどだ。
また、主人公たち三人のライバルポジションとして、F.I.S.三人が登場したことも、『シンフォギアG』進化の一因といえるだろう。
前作では敵役といえるのがフィーネと、途中で味方になるクリス、あとは雑魚のノイズだけなので、「対立」という構図があまりなかった。どちらかといえば、フィーネという悪にただぶつかっていく、昭和の仮面ライダーのようなストーリー展開だったのである。
ところが、『シンフォギアG』はライバルたちとの思想的・組織的対立の構図となり、こうした人間ドラマがシナリオに大きな影響を与えている。
しかも、F.I.S.の面々もただただ噛ませ犬という訳でもない。マムと呼び慕うナスターシャ博士との絆、無辜の人々を救いたいという目的、そしてフィーネを継承し記憶をなくすかもしれないという畏れ……。
単なる敵役では済まない、彼女たちなりの戦う理由がしっかりと描かれていたからこそ、視聴者は物語を余すことなく楽しむことが出来る。更に彼女たちを凌駕する形(ただ単純に倒す訳ではなく、彼女たちの思いを受け止めて乗り越える形)で、響たち三人の絆、強さが冴えわたる。
これら熱い展開は、金子節が進化されて、もはやシンフォギア節とさえ言ってもいいかもしれない。『シンフォギア』に登場する女の子たちは全て(装者や一般人も含めて)、自らの信念をもとに動いていると再確認できるのだ。
彼女たちの前には、友情や仲間といった概念すら必要がないと思えるほどだ。個々の信念(魂)と信念(魂)のぶつかり合い。それによって織りなされる物語こそが、『シンフォギアG』なのであるッ!!
もともと、金子キャラは精神的成長を描くより完璧なパーソナルを持つキャラクターを描いたほうが優れている。例えばOTONAを描かせたら天下一品であるように(余談ではあるが、金子氏がプロデュースしたゲーム『ワイルドアームズ4』は子供対大人の全面戦争的なストーリーとなっているが、そこに登場する敵(=大人たち)の方が魅力的すぎて、むしろ味方(=子供)の葛藤などを聞いているのが面倒臭くなるほどである)。
ゆえに『シンフォギア』シリーズも、葛藤や人間関係の悩みにストーリーを持っていかれる構成よりも、キャラクターが己の信念を武器に迷いなく戦う『シンフォギアG』のほうが面白いと思えたのかもしれない。
冴えわたる音楽は声優の器量にて煌めきを増すッ!!
更に『シンフォギアG』でパワーアップした要素といえば、劇中歌の数々であろう。
水樹奈々、高垣彩陽といった声優界でもトップクラスの歌唱力を持つ面々に加え、新たに南條愛乃、茅野愛衣、井口裕香、日笠陽子が参入。
特に高い歌唱力で知られた日笠陽子を、水樹奈々とのデュエット相手に仕立てあげている。名曲と名高い『不死鳥のフランメ』で第一話が始まり、まず、これだけでもありがとうございますと言いたくなるのに、最後は装者6人の絶唱を基にした歌(始まりの歌<バベル>)とエンディングの虹色のフリューゲルいう大サービスつき。『シンフォギアG』は、『シンフォギア』シリーズの楽曲ファンにはたまらない楽曲構成ばかりであった(おまけに風鳴司令まで歌いだすのは予想外だった。しかも石川氏念願だというから更に驚きである。杉田氏まで歌いだしたらどうしようかと思ったが、そこは大丈夫で一安心。でもイベントでウェル博士のコスプレで登場するのは面白すぎるからやめてもらいたい)。
パワーアップしたシナリオ、声優陣、楽曲とますます今後に期待が持てる『シンフォギア』シリーズ。4期、5期の制作が発表されたことだし、すっかりファンになってしまった筆者は今後の展開を楽しみに待つばかりである。
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