心に残る純粋な世界 - X-MEN:ファースト・ジェネレーションの感想

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心に残る純粋な世界

4.04.0
映像
4.0
脚本
5.0
キャスト
3.5
音楽
3.0
演出
4.0

目次

面白い所

カラッとした仕上がりの爽快な映画かと思いきや、しっとりとみせられて驚きました。展開はかなりテンポよく進んでいくのですが、人物たちの気持ちがちゃんと拾えるように出来ています。限られた時間の中にこれだけの人数で、異なる個性の人たちの気持ちが感じられるように撮るのはすごいことだと思うのです。一体どんな仕組みになっているのかさぐるのですが、セリフと表情がとてもはっきりしていて、疑問を残さないように展開していくせいで、的確に鑑賞できるのだと思い当たります。見ているほうを立ち止まらせずに、引っ張っていく。ミニシアターなどの映画鑑賞では、「おや、これはどういうことだろう」とか、「あー、こういうことだったのか」とか、映画館を出た後に、誰かと議論が生まれるような含みがあって、それが面白みだと思うのですが、今作にはそういう「含み」の部分は少なかったように感じます。でも含みが無いからと言って、深みが無いわけではありません。これが、面白い所。

日本人には刺激的

海外ドラマなどもそうですが、なかなかのスピードで物語が進んでいくにもかかわらず、しっかり討論されている。事件と真実と解決策を人物たちがしっかり表明するんですよね。それって、あんまり日本の文化に無いんだと思います。自分はこう思うんだ!って言う系って言ったらいいんでしょうか、日本は言わなくても分かるでしょ系、なぁんて系統づけたり出来るんじゃないかと思います。まるで、スポーツ観戦用に、ラリーの続く白熱した試合を観戦するような気分にさせられて、目が離せません。だから、海外ドラマや、本作のような「こうしたらこうなる」とか「こうしようああしようと討論する」映像って憧れるし巻き込まれるんだという気がします。日本で言えば、「どうしようか、どうしたらいいかわからない」とか「討論しないで様子を見よう」とかそういう流れが自然な感じです。だから、なかなか分かり合えずに戦いになるのですが、本作などのパターンでは、分かり合えないことが原因で戦うのではなくて、自分は自分の、相手は相手の理想の実現を理解したうえで戦っています。「なんでわかってくれないんだ」という戦いではありません。ちょっとクールな部分があります。賢く喧嘩している。そんな風に見えます。相手を説き伏せようとした戦いではないのです。力に従わせようとしているのでもない。なんというか、違う意見同士、自分たちのやり方でそれぞれ進めて見ている、そんな風にしているときにぶつかることがある。そいう言うことなんだろうと思います。分かり合えないから、分からせよう、とかではないんですよね。だから、どちらかが悪、というのではないように見えます。もう映画の世界は勧善懲悪のストーリーを楽しむ時代ではない、それがとても新鮮で、「進んでいる」といたく感動させられます。

生い立ちを通しての理解

でもどうしても、主人公側の方が正義のようには見えるんですね、やっぱり人道主義というか、平和に暮らしてきた人にとっての平和のほうが、気持ちがいいので。一方、相手方の平和とはどうなのか、憎しみや恐れを経験してきた人にとっての平和、とでも言うのでしょうか。恐怖や悲しみから解放されることが平和だとでも言いましょうか、嫌な目にもう遭いたくないのです。そういう平和です。平和に至る前段階の平和というか、平和のベースになる平和を切に願っていることが伺えます。過去から物語が始まるのですが、それを見ている私たちには、その人がどうしてそのように行動しているのか、理由がわかるようになっています。子供時代からの願いを知っていると、大人になったときの行動を見ても納得がいくのです。何とも切ないところです。ミュータント同士ならなおさらわかるんでしょうから、仲間が相手側についても「裏切りだ」とかそういう話にはならないんですよね。行きたいのなら、行きなさい、と見送るわけです。その辺りが、ものすごくしっとりしてるなあと思います。決してあっさりドライに「行きたいなら行けば」と言っているんじゃなくて、「その気持ちが分かるよ」と言って見送っているんですよね。

人間の愛

優しい、と悲しくなります。ふと自分のピュアな心を思い出すような、そんなシーンが時々あります。相手を嫌いになりたくないけれど、自分の意にそわないことをすることも出来ない。意にそわないことが苦痛でならないこともあるんですよね、やっぱり。どうしても。何を信じているか、とか、現実をどうとらえるか、とか「ミュータント以外の人間の反応」が変えられるのか、変えられるわけがないのか、それが問題なのですが、ミュータント同士で悩み、そして別の答えが出ているのです。心の成長とは何か、その方向性のかじ取りをどうすればいいのか、いつかの思春期の悩みをも彷彿とさせます。一見、子供向けの映画のようで本当は3040代の人間が見た方が、より味わえる作品なのかもしれません。何よりこの映画の好きなところは、愛情がどうやって浸透していくのかが見られるところでした。寂しさが嬉しさに変わる、心を通わせていく、その上での別れもありますが、心が伝わるシーンは映画作品として欠かせない要素だと思います。今作はそれがよりダイレクトに鑑賞できたように思うのです。

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