あるわけないとわかりつつ憧れてしまう設定
恋愛ゲームアプリの先駆けのような漫画
国語が得意という以外は特に取り柄がない女子高生が、ひょんなことから大物アーティストと出会い、恋に落ちて豪華マンションでラブラブに暮らす。最近はやりの恋愛ゲームアプリのような「平凡な女性がとんでもない大物に愛されて幸せになる」という玉の輿の典型ストーリーである。
さらりと最初に読み流している限りでは、主人公の一人である大物アーティストの大河内咲也が、なぜ凡庸な雪村愛音という女子高生にこうも惹かれるのが、理解できない人も多いのではないだろうか。
仮に出会った時に見つけた愛音の作詞メモがすばらしいものであったとしても、恋愛関係に至るには、やや動機が弱いように感じる。しかしながら読み返しているうちに、「なんて羨ましいのだろう」と思えてきて、動機などはどうでもよくなり、大物アーティストに一途に愛されるというシチュエーションに夢中になってしまう。それが快感フレーズの魅力であり、おそらく近年流行っている恋愛ゲームアプリも、この漫画の魅力を参考にしているのでは?と思ってしまう。
ツッコミどころはあるが、魅力的
本来高校生の大河内咲也が、いくらバンドが儲かっているとはいえ無免許で高級外車を乗り回し、買ったら億単位であろうマンションに住んでいるのかなどツッコミどころがかなりある。おそらく著者が昨也と愛音に一度は学生生活を体験させたいという思いから、咲也を成人設定にしなかったのかもしれないが、ろくに学校に来ていない咲也が、数学などを愛音に逆に教えているのは謎としか言いようがない。
しかし、そのくらい咲也はカッコよく、そこら辺のよくいるクラスメートの男子とは比較にならない「羨望の的」として描かれており、あり得ない設定すら漫画なのだからいいのではないかと思ってしまう。愛音自身も自分なんかが咲也にふさわしいのかと潜在的に悩んでいるようだが、咲也の「お前がいなきゃ、オレは夢も見れない」というセリフが女性読者の心を揺さぶり、うらやましい恋愛として二人の付き合いを見守りたくなってしまう。
最終的には納得できる
快感フレーズは一度連載を終了後、その後続編が描かれ愛音と咲也は結婚、子供をもうけていることが分かる。彼女の作詞の才能でバンドがアメリカでもヒットするメジャーになったことや、学生のころは妊娠した疑いに不安で震えていた彼女が、子供にお説教をしたり、子供に甘い咲也に怒っている様子を見ると、大河内咲也の伴侶は彼女が適役だったと思え、「どうしてこんな凡庸な女性が咲也に好かれたのか」という疑問はほぼ解決する。結婚でひとまず結末を迎えているが、この漫画は恋愛の家庭がやはり面白い。沢山の女性から羨望の的になっている有名人との恋愛の苦労や、マスコミから一般人である愛音を守ろうとする咲也の姿勢は胸を打たれ、自分とは縁がない非日常の恋愛に身を投じられる魅力的な作品である。
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