とてつもなく丁寧に制作されている! - 極黒の翼バルキサスの感想

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極黒の翼バルキサス

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映像
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ストーリー
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キャラクター
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声優
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音楽
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とてつもなく丁寧に制作されている!

3.43.4
映像
5.0
ストーリー
2.0
キャラクター
2.0
声優
4.0
音楽
4.0

目次

作画の美しさ

まず驚かされるのは、作画の美しさなのではないでしょうか。

しかし、それは、そう感じて当然ですし、それだけの手間をかけられて制作されているようです。

「Wikipedia」の記載事項によると、制作に3年もの月日をかけられているようです。確か、宮崎アニメの「ハウルの動く城」でも4年弱の制作期間だったはずです。

確かに3年と4年では月日の長さが違いますが、それぞれの本編時間に注目するべきではないでしょうか。当作品の本編時間は、45分ほどです。それと比較して、宮崎アニメ「ハウルの動く城」は2倍ほどの本編時間と考えられます。

制作時間が長いことで知られる宮崎アニメの更に上をいく制作時間がかけらている作品といえるのです。また、劇場版アニメとして制作される宮崎アニメに対して、OVA作品で発売されることを前提として制作されたものです。

商売として捉えたとき、明らかに売上や利益は劇場版アニメに軍配が上がるでしょう。

それだけ、宮崎アニメの上をいくレベルの手間がかけられ、クオリティーの高い作品と考えられるのです。さらに、どこまでいっても、儲けを出すことは必要だと思うのです。当作品はコストに対して、収益を見込めなかった作品だとも考えられるのです。

それだけ、利益目的なのではなく、世の中に作品を発表したいというアーティスト性の高い作品だとも考えられるのです。

また、制作時間の長さは、制作スタッフの作品づくりに対する指標とも考えられるのではないでしょうか。それだけ、熱い情熱と愛情が込められて制作された作品だと考えられるのです。ただ、画風は独特で、宮崎アニメとはタッチの違う作品です。

こだわった作画が、画面の美しさに反映されづらい画風といえます。

宮崎アニメが明るく綺麗な背景を前提に描かれていることに対し、当作品は画面が暗いです。青空が描かれている場面がないことで、残念ながら、映像の美しさには反映されないのです。しかし、登場人物の動きや、女性キャラクターの胸の描き方、揺れ方は秀逸なもので、宮崎アニメとは違う方向性に特化した作品といえます。

職人のこだわりが集約されたOVA作品なのだと考えることができるのです。

作品タイトルの考察

作品タイトルが暗いイメージの言葉なのが、印象的な作品なのではないでしょうか。

「極黒の」という言葉は、言葉の通りに色を示唆するもので、映像の暗さを指したものだと考えられます。また、それだけではなく、物語上の何かを示すものといえるでしょう。そして、「バルキサス」という言葉は、作品で登場していた敵役である「黄金の勇者」が居る城を指す言葉でした。

前述した「極黒の」という言葉は、「黄金の勇者」の居る城を形容するものと考えられます。

そして、「黄金の勇者」が居る城が「極黒」であることを指しており、対極の色を演出していると考えられます。本編を観る限り、「黄金の勇者」も髪の色が金髪なだけであり、悪意に染まった存在です。本来は、「黄金の勇者」とは、希望や光をイメージするものであって、本編で描かれていた「黄金の勇者」ではないはずです。

しかし、ここで注目したいのは、「極黒」という言葉です。「極黒」とは、単に黒いのではなく、極めて黒いと解釈できます。本来の色を上書きして違う色にしてしまうほど、「金色の勇者」は、極めて黒く染まってしまったと考えることができるのです。

「黄金の勇者」も生まれ育った環境が、まともであれば、こんな闇を代表する存在にならなかったのかもしれません。

また、本作品は珍しく作品タイトルが、敵役を指すものであり、主人公を指したものではないのが特徴といえるのではないでしょうか。それだけ強調したかったのは、主人公たちの存在ではなく、黒く上書きされてしまった「黄金の勇者」の存在だったと考えられます。

主人公の考察

「銀色の勇者」として活躍したのが、当作品の主人公レムネアです。

銀色の髪をしており、本編そのものは、レムネアの目線から描かれているのに、作品の中で栄える存在ではなかったように考えられます。「勇者」という言葉だけが踊っており、レムネアが勇者である必然性がないのです。

レムネアは、物語の進展に則り、流されるがままという印象をもちます。

レムネアが裸になってしまう場面や、胸を露わにしてしまう場面が多く、この主人公はお色気要素として活躍していたイメージが強いのです。それだけ、敵役だった「黄金の勇者」のインパクトが強かったと言い換えることもできます。物語のキーパーソンとして、レムネアの背景を細かに演出していれば、主人公の存在も光ったであろうと考えられます。

また、「黄金の勇者」に対して、「銀色の勇者」が対等の描き方をされていれば、物語そのものの面白味も深まったであろうと考えられます。

主人公の立ち位置が曖昧だったのが、残念なポイントだといえます。そのことから、物語そのもののメッセージ性も薄い作品になっていると考えられます。逆説的に、物語そのもののメッセージ性はなく、ただアニメーション映像としてのクオリティーを追求した内容だと考えられます。

作画や映像によるクオリティーの高さと、敵役に焦点を当てる奇抜な本編作りが、当作品の魅力だと考えられるのです。

制作における思惑を考察

おそろしく、制作時間とコストのかけられたOVA作品であるのは前述の通りです。

そして、それは、制作スタッフの作品における情熱だとも取れますが、別の見方もできるのではないでしょうか。すなわち、何かしら別の思惑があって、それだけの時間やコストを払って制作されているとも考えられるのです。

それは、続編OVA作品を制作したかったのか、別媒体への展開を図っていたのか、二通りのことが考えられるのではないでしょうか。

そして、事実から受け止めるに、後者の別媒体への展開を図った作品だったと結論付けられます。現に、当コンテンツはコミック化され、漫画媒体で出版されています。すなわち、それを最初から狙って制作されていたと考えることができるのです。そうじゃなければ、OVA作品1枚に、3年の制作時間とコストがかけられていることが不自然です。

そして、「Wikipedie」の記載事項から読み取るに、コミック版においては、当OVA作品の内容より詳細に語られた内容になっているようです。

また、作品タイトルも「極黒のバルキサス」ではなく、「銀色の勇者」であるレムネアに焦点を当てたものになっているようです。企画当初から、そこまで見越して制作されていたのは明白なことなのではないでしょか。

そして、お色気を打ち出したレムネアを本格的に主人公に据えた内容であることで、当OVA作品を視聴した方は、コミック版においても、強いお色気要素を期待してしまうのではないでしょうか。また、本格的に主人公に据えられたことで、そんな場面が多いことも期待させてしまうのです。

そこまでの意図があって、OVA作品の物語内容が考えられていたのか、そこは定かではありません。

しかし、個人的な見解としては、意図的に、視聴者をお色気要素に惹き付け、コミックの購入を促したかったのだと思えてなりません。そうじゃなければ、当OVA作品で、レムネアがお色気要素の強かった理由も釈然としません。そう考えた方が、物語の内容における必然性が高いのです。

美しい映像であったことも、お色気要素を強調することで、マルチメディア展開を目論んだものと考えることができるのです。

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