良作のごちそうロード映画 - シェフ 三ツ星フードトラック始めましたの感想

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良作のごちそうロード映画

4.04.0
映像
4.0
脚本
4.0
キャスト
4.0
音楽
3.5
演出
3.5

目次

見ごたえのある“ごちそう映画”

この世には美味しそうな料理を扱った“ごちそう映画”がたくさんある。そして、人々が日常を飛び出し旅に出る“ロードムービー”も数多くある。

両者とも、“我々の世界から一歩外れた知らない日常”を描いた作品であり、特に料理も旅行も大好きな筆者は、このテの作品を喜んで観る。

そして、ここにその二つを合わさった一挙両得な作品があった。それが『シェフ~三ツ星トラックはじめました~(以降、シェフ)』である。

まさしく名は体を表すといった率直なタイトルだ。『シェフ』は“ロードムービー”と“ごちそう映画”を材料に、“家族愛”という生地で焼き上げたような作品だ。ちなみに『シェフ』というタイトルの映画は数多くあり、つい先日も公開されたばかりである。流行ってるんですかね?

しかしながら、この映画は並みの映画作品とは頭一つ出て、なかなかの良作に仕上がっている。ストーリー構成はバランスが良く、起伏に富んでいて、始めから終わりまで集中して観てしまう。正直、ここ数か月で観た映画で一番バランスが良いと思えたほどだ。この辺りは後述しようと思う。

主人公の小太りの中年、美人の奥さん、可愛い少年、イケメンのスーシェフと、キャスティングも測ったかのようにバランスが良い。ちなみに余談になるが、この配役のバランスというのは結構大事だと筆者は思っている。何故なら、どの視聴層からも共感できる(立場の近い)キャラクターがいることは、脚本作りの観点からいって存外大事なことだからだ。

また、作中に登場する料理がまた良い。ジューシーな肉を焼くシーンや、香ばしいバターを落とすシーンなど、ここぞとばかりに観客の興味を煽ってくる。

ストーリーよし。キャスティングよし。観客のツボをつく料理シーンも良し。全てにおいて凡以上な出来で満足させてくれた、それがこの『シェフ』という映画なのである。

起“転承”結がミソ

さて、この『シェフ』のストーリー構成のバランスの良さについて、もう少し考察していこうと思う。

物語の基礎として、“起承転結を作る”というのは誰もが知っていることだと思う。はじまりである“起”、話の要点が語られる“承”、話に大きな転機が訪れる“転”、そして結末の“結”という訳だ。

これらは物語を作るうえでのセオリーであって、全ての物語が“起承転結”を踏襲している訳ではない。むしろ、あらゆるジャンルのエンターテイメントが飽和状態になっている状況を顧みれば、“起承転結”を踏まえないほうがいい、という流れにさえなっている。

だが、『シェフ』はその基本である“起承転結”をきっちり押さえ、非常に見やすく、わかりやすい展開となっている(ただし、『シェフ』の“起承転結”は、厳密にいえばやや構成が異なり、“起転承結”となっているのだが)。

これはとても大切なことで、セオリーを踏むということは視聴者に物語をすんなりと捉えてもらうことが出来るという長所がある。つまり、観客に余計なストレスを与えない、ということだ(もちろん、そのぶん退屈になってしまうという短所もあり、ミステリーや国内作品には向かない)。

まず“起”として主人公を中心にした登場人物の紹介と人間関係が語られ、“転”でSNS上のトラブルから店を解雇されることとなる、“承”で不仲になった息子と二人でフードトラックの営業を開始し、スーシェフのマーティンを仲間に加えつつ、“結”で成功を収めるという構成になっている。主人公・カールが転落するきっかけになった料理評論家と和解するところも、大団円で観ていて気持ちの良いすっきりとしたラストに仕上がっている。

重ねていうが、これがもし国産の恋愛映画などになると、退屈でつまらない出来と評価されることになるだろう。だが、『シェフ』は“ロードムービー”と“ごちそう映画”という、二つの非日常を重ねたことによって、とても見やすい大衆映画として良作となっているのだ。

“あなたの知らないアメリカ”を知るためにも価値がある映画

また、この映画は、日本人にとってもう一つ価値があると筆者は考えている。

それは、日本人にとってアメリカ人の食生活はあまりなじみがないことから、これらの知識を得る入門編として、この映画に価値があるという点だ。

某美味しんぼ漫画で、味覚オンチのアメリカ人とディスられまくっているアメリカだが、確かに我々日本人にとって、アメリカのご飯にはあまりなじみがない。せいぜいステーキとかハンバーガーとか、その辺だろう。

『シェフ』ではカールが様々な料理を作るが、特に作中で登場するキューバサンドなどはネットでもたびたび取り上げられるほど注目を浴びている。バターをたっぷり塗ったバンズでトロトロのチーズと肉を挟む料理……。観ているだけで垂涎ものの料理は、都内でも数店舗でしか食べられないらしい。つまりそれだけ、日本では認知度が低い料理なのだ。筆者も正直、この映画を観なければ知らないままだっただろう。

料理だけではない。アメリカといえば真っ先に思い浮かぶのがニューヨークだが、日本人にはあまりなじみのない、西海岸の海岸沿いや街並みなどをじっくりと観られることにも価値がある。普通の洋画ではここまでじっくり街並みを映すことはない。流石はロードムービーといったところだ。

映画としての基礎がありながら、観客の知的・食欲的好奇心を揺さぶる『シェフ』。文句なしの良作といえるだろう。

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他のレビュアーの感想・評価

映像・音楽・キャストが三拍子パーフェクトのノリノリ映画

太っていてこそシェフがピッタリイメージ的に少々体格が良い方が美味しいものを作ってくれそうだ。料理はけっこう力もいる。大きなフライパンは重いし、レストランでいっきに何人分もの量を作るというのは体力勝負だ。一生懸命メニュー開発したところで、雇われシェフは所詮雇われているだけ。プライドとこだわりのあるシェフはやはり自営しないとだめですね。キャスパー潔く辞めて正解。料理を作るシーンが多く出てくるが、センスのいい料理番組みたいで良い匂いが漂ってきそう。息子にパパッとチーズトーストを作ってあげているけど、なんて美味しそうなことか。デートの時は家でパスタ!あんな風にパスタを作ってくれたら惚れてしまいますよ。監督も脚本も主演もやっていたジョン・ファブローシェフ役がピッタリすぎて、あれこの俳優さん誰だ?と思ったら「アイアンマン」の監督だという。監督も脚本も主演もやっているんだから北野たけしみたいな感じだ...この感想を読む

4.54.5
  • くろにゃんくろにゃん
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  • 1369文字
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