ホットロードという少女漫画が教えてくれたこと
暴走族はかっこ悪い。
結局は、これに尽きるのだ。
春山はかっこいい。10代の女の子がこういう男の子に引かれてしまうのは仕方のないことだと思うし、大人になった今読んでいてもドキッとさせられる色っぽさもある。暴走族の世界に足を踏み入れた和希のように総長の彼女になって、あんなふうにさらってほしいと憧れたことも正直言ってあった。
この漫画が大好きだ。春山と和希に思い入れもある。それでもこの漫画を読んで一番強く思うのは、「暴走族はかっこ悪い」ということだ。これは決して漫画を否定する感想ではなく。
親と上手くいかないこと、家庭に居場所がないと感じること。子供の頃ふたりと似た経験をする人は少なくないと思う。私もそうだった。学校をサボってみたり、家出のようなことをしてみたり、私にもふたりのように不良になるきっかけはあったのだ。ただ私は実践せずに済んだ。不良なんて、暴走族なんてかっこ悪いと、春山と和希が身をもって教えてくれたからだ。私は漫画を読みながら、ふたりと一緒に思春期を駆け抜けて、たくさん泣いて、親を理解した。
ラストの後味の良さ、道は続いて行く。
暴走族の総長にまでなった春山は、抗争に向かう途中で事故に遭い生死を彷徨った挙げ句一生足を引きずることになる。逮捕もされ、やって来たことの落とし前が自分の身に返ってきた形となった。
絵に描いたような非行少年の末路とも言えるし、暴走族に関わったツケを誤魔化さず描いたところがホットロードの良さだ。
そして、ふたりの結末が決して悲惨ではなかったところがとても好きだ。
仕事に就き、動きづらい足でバイクではなく自転車を汗だくで漕ぐ春山、いつか春山の赤ちゃんのお母さんになりたいという夢を持った和希。また、和希たちの前から消えた先輩カップルの幸せそうな様子もさらりと見せてくれるラスト。非行に走った少年時代が終わっても、道は続くのだ。
人は間違うしつまづく。しかしやり直せる。ホットロードはそう教えてくれた。
とはいえやはり、胸がキュンキュンしてこそ少女漫画。
なぜホットロードにハマったのかいろいろと考えてみたが、やっぱり、春山はかっこいいのだ。若かりし日の私は憧れてキュンキュンした。暴走族かっこ悪いと言いながら、これもまた紛れもない事実である。
優しくないのに危なくなったら助けに来てくれる春山。甘い言葉ではなく行動で、和希を大事に思っていると私たちに知らせてくる春山。一度捨てた和希を捨て切れず忘れられず、迎えに来た春山。彼女のために少しずつ変わっていくように思えた春山。
だんだん大人になっていく春山がとても魅力的で、私は夢中になったのだ。10代の非行問題や暴走族の是非についていろんなことを感じ考えさせた上で、ホットロードは確かにラブストーリーだった。
「オレたかが女ひとりのために変わるかもしんない」、こんなセリフを一生に一度でいいから言われてみたいと、三十代後半結婚もして子供もいるおばさんになってなお夢見させる春山は罪な男である。
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