登場人物における考察
対称的な二人の関係性
主人公の存在が、明確に打ち出されていないコンテンツだと考えられます。
物語の目線を考えれば、小学六年生に設定されている二人の伊藤 千佳(いとう ちか)、松岡 美羽(まつおか みう)のどちらかと考えることができます。しかし、1話の物語中でも、二人の目線はスイッチしており、面白い方の視点で描かれていることが特徴といえます。
また、主要な登場人物の中で、年長者であり、伊藤 千佳(いとう ちか)の姉である伊藤 伸恵(いとう のぶえ)が主人公という捉え方もできるでしょう。いつも、妹や登場人物に巻き込まれている被害者という構成を考えると、信恵という考え方も有力といえます。
しかし、千佳と美羽が仲良く喧嘩している姿が印象的で、信恵の存在感を掻き消しています。
住家がお隣同士であり、同級生という間柄なので、喧嘩するほど仲が良いという関係性なのだと伺えます。アニメ本編の中でも、二人の関係性に言及されていました。「友達」なのか、「親友」なのか、争点になっていました。しかし、「友達」と「親友」の言葉の定義から考えられていましたので、とても曖昧な終り方がされていました。
真面目で家庭的な千佳に対して、美羽は自由人という言葉が適切だと考えられます。
全く個性の違う両者だからこそ、仲が良くても喧嘩が絶えないのだろうと考えられます。二人の個性は「水と油」というように言い換えることができるのかもしれません。しかし、個性や考え方が違うからこそ、美羽の行動やウケ狙いの行動が、千佳のツボにハマることがあるのでしょう。
また、千佳と美羽の関係性は、女性同士というより、男性同士のコミュニケーションという色が強いのではないでしょうか。
具体例を挙げてみれば、笑いの方に走っていく話題の方向性、恋愛要素の薄さ、くだらない話題は、男性同士のコミュニケーションの色を強く感じます。女性同士であれば、異性に向いた話題やファッション関係、身の周りの出来事といった内容が多くなるのではないでしょうか。
事実として「苺ましまろ」原作者は、「ばらスィー」というペンネームで活動している方ですが、男性のようです。やはり、男性には、女性同士のコミュニケーションの在り方やニュアンスは分からない部分が強いのだと考えられます。
本編における最大の魅力
それぞれの視聴者によって、観点も違えば、感じ方や楽しみ方も違います。
しかし、本編の物語展開におけるキーマンになっており、魅力を存分に打ち出しているのは、美羽の存在なのではないでしょうか。
安直な考え方なのかもしれませんが、それについて、分析をしていきます。
消去法で考えていくと、登場人物のうち、誰が居なくなったら面白みは薄くなるのでしょうか。
千佳というキャラクターを不在で考えたとき、本編の構成に、どのような変化があるでしょうか。
美羽にとって、喧嘩相手が居なくなることが想像できます。しかし、美羽のボケに対して、ツッコミを入れているのは千佳だけではありません。むしろ、姉である信恵のツッコミの方が、強力で笑える場面は多いと考えられるのです。
次は纏めて、桜木 茉莉(さくらぎ まつり)、アナ・コッポラのそれぞれで想像してみます。
学年は小学5年生の両者のですが、本編の中での立ち位置は「弄られキャラ」です。美羽や信恵に弄られることで、魅力の真価を発揮するのです。そのことで不在であっても、大きく面白さを損なうものではないと考えられるのです。
そして、年長者である信恵を不在として考えていきます。
年長者である分、影響は大きいのかもしれません。そして、登場人物のまとめ役として機能しており、存在感の大きいキャラクターだといえます。しかし、美羽にツッコむ役は、千佳でも充分であり、まとめ役も千佳が担えば本編の面白さが大きく損なわれることはないように考えられます。
そして、最後に、美羽を不在にした場合で考えていきます。
本編の中で、いつも余計なことをして、展開を可笑しな方向に導くのは美羽なのです。登場人物の中で、意図的なトラブルメーカーと言い換えることができるでしょう。信恵もトラブルメーカーではあるのかもしれませんが、年長者であることで、信恵に対してのツッコミは切れ味に欠いて、面白いものにはならないのだと考えられます。
美羽と信恵が、それぞれ不在の場合、影響が強いと予測されます。
しかし、美羽と信恵で比較した際、美羽の方が面白みをいう観点では魅力を損なってしまうと考えられるのです。そのことから、美羽が本編におけるキーマンであり、魅力を打ち出しているキャラクターと良いのではないでしょうか。
キャラクター設定の考察
本編の登場人物を振り返ってみると、不思議なことに気付くことができました。
登場人物の名前が、現実社会にも居そうな名前で構成されているのです。
その中でも、前項で取り挙げた美羽や茉莉はアニメ寄りの名前といえるでしょう。しかし、信恵や千佳においては、あまりにも一般的な名前過ぎて驚いてしまいます。
・伊藤 信恵
・伊藤 千佳
まずは、伊藤という苗字が、アニメ作品の登場人物としては、なかなか他の作品では思い浮かべることができない苗字だと考えられます。現実社会の実在する人物では、伊藤という苗字の方は多いはずなのに、アニメ作品の登場人物では例を挙げることができません。全国の苗字人数ランキングでも、伊藤という苗字は、比較的に上位に位置する苗字なのではないでしょうか。現実社会には、同姓同名の方がいそうな気がします。
鈴木や佐藤という苗字の方が多いのは、一般的にも言われていることです。
しかし、伊藤という苗字は、実感的には多いことは分かっていても、苗字にスポットが当てられる機会はありません。
そして、アニメの登場人物として捉えたとき、信恵と千佳のフルネームには、あまり例がないことから、逆に特徴的な名前と考えることができます。実は、原作者は、アニメや漫画の世界の盲点を突いたネーミングをされたのではないでしょうか。
現実社会には居そうな名前だけど、アニメや漫画では使用されることのない伊藤という苗字を、意図的に使用したのだと考えられます。そして、普通の名前に思えますが、アニメや漫画の登場人物として、あまり使用例のない苗字を敢えて用いたのだと考えられるのです。
また、信恵や千佳という下の名前においても、アニメの登場人物というよりは、現実社会の実在人物の名前という印象が強いです。意図的に一般的な名前を用いることで、逆に目立たそうとしたのだと考えられるのです。
信恵のキャラクター性
当作品の主要な登場人物の中では年長者という位置付けです。
しかし、外見面においては、これといった個性の強い特徴を持ち合わせておりません。巨乳でもなく、髪の色も落ち着いています。行動には特徴がありますが、外見面においては、伊藤という苗字、信恵という名前が示すように特徴がないのです。
ただ、外見が普通なだけに、信恵のとる行動に、強いギャップが感じられます。
酒やたばこを好む信恵の行動は、女子大生というより、中年のおじさんという印象の方が一致するのだと考えられないでしょうか。
しかし、外見は普通の女子大生であり、行動は、中年のおじさんなのです。これは、二面性のギャップを意図的に演出している構成だと考える方が自然です。これが、信恵というキャラクターの魅力を形成している正体だと考えられます。
また、茉莉やアナを必要以上に可愛がるのも、女子大生と考えれば不自然なものです。
しかし、信恵を中年のおじさんとして考えれば不自然な行動ではありません。信恵のキャラクター性の中身は、中年のおじさんをイメージして構成されているのだと考えられるのです。しかし、外見が普通の女子大生だから不自然であり、面白く映ってしまうのです。
また、本編において、恋愛要素は一切描かれていません。
本来ならば、恋愛真っ盛りの年頃であり、逆に、恋愛に関心がない様子の信恵は不自然です。
しかし、中年のおじさんとして考えれば、それが不自然ではなくなってしまいます。キャラクターデザインをした時に、外見は普通の女子大生、内面は中年のおじさんというコンセプトで設定が考えられるのです。
ワンパターンな展開
美羽がキーマンであり、魅力を打ち出しているのは、本編の展開がワンパターンであることの表れなのだと考えられます。
それぞれ登場人物の個性の設定はしっかり立てられており、前述の通り、本編における位置付けも決まっています。
話の冒頭部分で、美羽が変な方向性を決定づけます。それに対して、千佳がおかしい部分を指摘します。しかし、方向性が変わることがなく、話は展開していきます。方向性やネタとして、茉莉やアナが対象になることが多いようです。そして、まとめ役の信恵が機能して、美羽が叩きのめされて平伏している場面が多いです。
個性や位置付けが固定化されていることで、話の展開がパンパターンとなっていると考えられるのです。
美羽から始まる展開が、信恵によって方向性が決定づけられるケースもあります。しかし、概ねの役割は覆されることなく、話が進行していくようのではないでしょうか。
主要な登場人物が極端に少ないのも、このコンテンツの特徴といえます。
そして、登場人物が、しっかりとした役割を担っていることで、本編の中で意外性を担っているのは、美羽の発言と行動のみと考えられるのです。各話で背景が異なり、それにより、突拍子のない発言や行動をするのが美羽なのです。
そういった部分を強く感じられ、ワンパターンになっているのだと考えられます。
各話、内容としては淡々としたもので、決まった形式に沿って展開・進行しているのは間違いないです。ひょっとしたら、黄金パターンというものが、原作者の中にあって、それに沿うかたちで構成されているのだとも考えられます。
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