深い話が含まれる軽快なラブコメディ
セレブリティ
桜蘭高校の生徒は財力が桁外れの家柄で、代々受け継がれた品位と知性をも兼ね備えた生徒が多い。たまにジャパニーズマフィアの子息が登場するが、荒んだ様子もなくきちんと良心を持っています。入学試験の時に品行方正さも見られているのか、はたまた余裕があるからこその人間性なのか、イジメというものも存在しないいわば学校というコミュニティの頂点のようなところだと思いました。年相応の部分も垣間見られるのですが、行事という行事がセレブリティ。この学校で行われる催し物でいったいどれほど日本経済を潤わせているのかと、さすがアニメだと思いました。
なぜホスト部?
アニメは深夜放送でした。やはり世間的にホストという単語に対する偏見は強く、ましてやアニメであれば子どもが見るとも限らない。そうした配慮から深夜放送になったのだろうけれど、彼らはただ単に部活に所属しているだけで、いかがわしいことは何一つしていないように思います。男が女を誑かす、というようなことを作中の何話目かで登場人物が言っています。しかし、あえて否定はせず、だからと言って自分たちの活動を引け目に感じることもない彼らの堂々たる姿は実際に会ったら魅了されてしまうのだろうなと思いました。お金を巻き上げているわけではない、けれどポイント制という学生ならではのギリギリの経営方法で存続を守る鏡夜の敏腕っぷりは恐ろしいです。まずなぜホスト部にしたのだろうか。喫茶店やファンクラブのような組織にすれば、鏡夜も父親にビンタをされることもなかっただろうと不思議に思います。環の発想がなぜホストに至ったのか、アニメでは謎のままです。漫画も大学生の頃読みましたが、日本で多少なりとも偏見のあるホストを名乗ろうとした経緯がわかりませんでした。ホスト自体を貶したり、否定しているわけではありません。誇りを持って働いてらっしゃる方もいますし、その存在に救われ、癒されている人もたくさんいます。しかし、権力も財力もある彼らが夜の世界を模倣しようと思ったきっかけは何なのか、改めて作品を振り返ると作者のビスコ先生に聞きたくなりました。
ツッコミ
アニメのどの話にもツッコミと取れる矢印や吹き出し(心の声)が多用されています。そのツッコミは絶妙な存在感で、気にすれば何だろうと思い、気にせず作品に集中していれば気にならないんです。例えば1話はハルヒがルネの花瓶を割るシーンがあります。音楽室へ入った時から矢印は花瓶をさし、花瓶が見えるよう構成もされています。気にしなければハルヒと環らのやり取り、会話を聞くことができるのですが、ピッピッとさりげなくアピールすることでテンポがぶれずに心地よく観ることができます。私だけでしょうか。桜蘭高校ホスト部の制作チームは小回りからセリフ、展開などセンスが光っていると思います。ダラダラっと話を消化するのではなく、適度に茶々を入れながらアニメを作っているように思います。テレビ番組でも司会者がうまく共演者に話を振り、話題を進めてると妙な一体感を生み出すのと似ています。ボケ続ける環らホスト部を作り手が弄り、ツッコミ、そのボケを生かす。そういう遊びも垣間見られるアニメだと思います。視聴者の思っていることを作り手が率先してアニメの世界へとつっこんでくれる面白い仕掛けになっています。真面目な話の時もありますじ、大笑いはしませんが、シュールさに綿毛を詰めたようなおもしろおかしさがふんだんに含まれていると思います。
ラブコメディ
一応少女漫画ですから、ラブがないといけません。紅一点のハルヒはモテモテです。ホスト部員として女生徒にモテて、女の子だと知っているホスト部面々にモテて、かつ学年主席の特待生だなんてものすごいスペックの持ち主です。こんな設定ずるいと思わず言いたくなりますが、色々なことに対して淡白なハルヒを見ていると、こういう人間性だからこそ与えられる才能なのだなと。環がハルヒに共鳴する部分として母親の存在があります。ハルヒは幼い頃に母親を亡くし、環は離別しています。似たような境遇だからこそお互いを理解できるし、情ではないですが、親近感が湧いたのかもしれません。そして、何よりも環の猛烈アタックを受け続けて、時にはボケずに叱り、甘えさせ、守る。普段いい加減な姿を見せているからこそのギャップを惜しみなく発揮する環に迫られば誰だって落ちます。しかし、アニメでは曖昧な告白で終わりました。決着をつけさせずにアニメを終わりにしたのも正解だと思います。漫画と同じように無理やり2クールで終わらせようとすれば、二人の関係性がぎゅっと濃縮されてほのぼのさに欠けます。お互いの気持ちがひとつ通じただけでハルヒと環はかけがえのない存在になれたのだと思います。ホスト部という言葉が印象的で先行しますが、実はヒューマンドラマのように深い話もたくさんある、魅力的なアニメだと思います。
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