冴えないおっさん、大器晩成となるか?!
ダメ親父、漫画家を目指す!
「俺 マンガ家になるわ。」 突然何を言い出すんだろう、このおっさん。どういう心境の変化があったのか、その辺はわからないが脱サラ漫画家になるらしい。しかも40代で。バツイチで、高校生の娘がいるのにも関わらずだ。しかもどんなマンガを描くのかと思えば、商業誌には向かない下手な絵のボツ作品ばかり。もしも現実に自分の父親がこんな発言をしたら、とてもじゃないが迷惑すぎる。
このダメ親父の良いところを探しながら読むのが、一つの楽しみ方だ
さすがに漫画一本でやっていけるほどの才能もなく、40代なのにハンバーガー屋でアルバイト。会社勤務の頃は係長まで行けたのに、バイトではサブリーダー留まりだ。しかも新人に抜かされる始末。娘には完全に信頼を失うし、同居している父親には毎日怒鳴られる。本当に哀れだなぁと呼んでいて思わされる。ページをめくるに連れて、このおっさんの良いところってなんだろう?って考えさせられる。ちなみに漫画家を目指す漫画でもあるこの作品は、漫画家志望の方には少し心が痛いかもしれない。それを乗り越えられる者だけが漫画界の第一線で活躍できるのではないだろうか。
全5巻、ものの1時間で読めるのに泣かせられる・・・
ここまで書いてきた内容だと「ずっと漫画でボツを食らいながら、連日父親に怒鳴られるネガティブ系の日常漫画なんだろうなぁ」って思うかもしれないが、ちゃんと山場があるんだよ。確かにこの作品は読んでいて気分が明るくなる!とは、とてもではないが言い難い。でも一人の人間のドラマとしては、読んでおいて損はないと思う。
全体的に暗い話が続く。しかしところどころに小さな笑いがある。お世辞には絵の上手い漫画ではないが、背景もフリーハンドで描かれていてそれが何であるのかちゃんとわかるからすごい。トーン(薄く灰色がかった効果を出すシール)もほとんど使われていない。この作者、手を抜いているんじゃないかなぁと思ったりもするが、読み終わるとそれも持ち味なのだなぁと感じる。難しい言葉も少なく、読みやすいので一度漫画を開けばダメなおっさんにいつでも会いに来れる。まぁネガティブな時に読むもんじゃないとは断っておくが。
ダメ親父の日常で、何のクライマックスもなくフツーに終わるんだろうなぁと思いきや、まさか5巻から急展開。おっさんは結局漫画家にはならなかった(なれなかった)けれど、2年間で48本の作品を生み出したところは見習いたいところではある。それにしても一生モノの友達がいるってのはいいなぁ。
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