優しい物語
哲学する亀
この作品の特徴はなんといっても亀が哲学するという点です。
プラトンと名付けられた亀の目線で物語は進んでいきます。プラトンは周りの人たちの様子を観察し、そして物思いにふけり哲学的な考えを繰り広げます。
読み進めているとその繊細な感性に驚かされ、ついついプラトンが亀だということを忘れてしまいます。
プラトンは亀だからこそ純粋でシンプルな考え方をします。
人間は総じて成長していくにつれ純粋さが無くなり考え方が複雑になります。そして日々様々なことで思い悩みます。幼少期はプラトンのように純粋で真っ白な心を持っているものですが、幼いが故に自分の内面を流暢に言葉にするのは難しいです。しかし、プラトンは違います。亀という生物が故に純粋な感性を持ち、なおかつ大人並の思考力があるのです。
青空のような少女
もう一人重要な登場人物がいます。小学1年生の可愛らしい少女・空ちゃんです。プラトンは彼女のことをソクラテスと勘違いし、先生と呼びます。空はプラトンの言葉が分かるようでよくお話していて、仲良しです。
物語が進むにつれて、彼女も少しづつ成長していきます。
両親とは離れて暮らしているため寂しい思いをすることも多いだろうに彼女はいつも元気で笑顔です。いつも青空のように晴れ渡った表情をしています。とはいっても、まだ幼い少女なので学校で嫌なことがあったり、問題にぶつかってションボリしている時もあります。しかし、彼女は自分で悩み考え問題を乗り越え成長していきます。その姿を側で見ているプラトンは益々彼女を尊敬し先生と呼び慕うのです。プラトン目線で仰ぎ見た彼女はキラキラと輝いています。
いつかは晴れる
空の言動は周りの大人にも影響を与えます。
プラトンの飼い主である絵本作家の青年は夢に破れ挫折し、空たちが住む故郷へ帰ってきます。帰郷当初の彼はネガティブ思考に支配され、無気力な状態でした。ひょんなことから子供たちに名付けられた「神さま」というニックネームとは正反対の暗い影が彼を覆っていました。
しかし、青空のような少女空と心を通わせていく内に厚い雲に覆われた彼の心に少しずつ太陽の光が射していきます。
大人になると心が荒むこともあります。けれど、いつかは晴れるのです。晴れ間を見るためには自分自身の考え方が重要でそんな時この作品を読むと哲学に助けられます。
哲学というのは難しいものではなくて、人間の精神に根付いたシンプルな考え方だったのだとこの作品を通して学ぶことができました。
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