「迷い」と「意志」
出会いが生み出した「結果」
自転車競技とは縁もゆかりも無かった坂道が、趣味のためにママチャリで通っていたアキバでの鳴子との出会い、寒咲や今泉との出会いで「乗る」ことから「競う」ことに変わって自分が一番になりたいのではなく、誰かと走りたい、誰かに託されたから応えたいという気持ちでの走りをしていく成長というよりは変化の物語。メンバーを決めるレースでのペダルが壊れた時には競った手嶋がクリートとペダルを授ける、インターハイで落ちたとしても「みんなで走りたいから」危険な走りになったとしてもボロボロでも追いつく。いつでも坂道は独りで走ることはしない。
競争相手との「出会い」
勝ちに執拗な京都伏見の御堂筋。彼を純粋と捉えて不気味さや怖さよりも「ザク」発言からアニメ好きと思い追いかけたり、同じように楽しむクライマーの真波とは相手チームながらも「競いたい」と思うようになったり。集団に飲まれた際に自身が苦手とするタイプの荒北靖友に協調を提案し、素直な想いをぶつけ認められて真波と共に先頭まで運んで貰い、最後はその真波と優勝を争うことになる因果も。
変化するのは坂道だけじゃない
アシストを貫き通しオーダーをこなして最後燃え尽きるまで走った荒北の「熱」は後輩である黒田にしっかりと受け継がれている。黒田はプライドの高いエリートながらも荒北にプライドを折られ、頭を下げて教えを請うても真波には届かずインターハイには参加出来なかった。翌年のインターハイではエースクライマーの3番は真波になり、黒田はエースアシストの2番。最強のクライマーの称号を継ぐことが出来なかった黒田。しかしその黒田には荒北のナンバー「2番」が与えられている。ゴール前まで敵チームと協調したとしても決してエースには引かせない、壁に激突するようなコーナリングで怪我を負ってでもエースをゴール前まで届ける。落車したとしてでもエースの背中を押して、時間と気持ちを託す。荒北の「貫き通す」強さはそのナンバーと共に黒田へと受け継がれている。
余談だが1年目のインターハイ1日目では荒北に煽られながら走った今泉は2年目には黒田に「エリートの顔だ」と煽られている。ここにも因果が。
それでも「競技」
それぞれが熱い想いと力を受け継いで戦ってる。それでも勝つのは一人。例え最後のインターハイでも、使命を背負ってても。勝つのは一人。全力を出しても届かないこともある。共に走った人が落ちていくこともある。最後までみんな一緒には走れない。そんな中でも、想いを、そのジャージを一番にゴールに届けるために全力で戦う。負けたとしてもそこに恨みはない純粋な「戦い」であり「勝負」。競争を無くしていこうとする日本の教育に対して、競う楽しさを教えてくれる素晴らしい作品と自分は思います。
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