山田太郎から溢れる母の強さ
金銭的に困る毎日とうつ病の父
兄弟を1人で支える兄、山田太郎はジャニーズ人気アイドルの嵐メンバー”二宮和也”が主演を務めた。彼の演技力にあまり感動を覚えなかった自分が初めてこの作品で彼の演技に感動をしたのだ。彼のファンが聞いたら嫌な気持ちにさせてしまうかもしれないが私は彼の無気力な印象が苦手だ。なぜなら何を考えているのか分からないというから理由だ。頼りないような存在を嵐メンバーの中で感じていたのだ。この作品の山田太郎は彼にしか出来ない役だと私は感じた。無気力に見えるが実は心の芯が太くしっかりと立っていてビクとも動くことはない。そんな風に感じ始めたのだ。貧乏な家の長男として必死に家族を支えている山田太郎に感動した、それと同時に二宮和也の見方も少しずつ変化していったのだ。
彼は金銭的に困って自らが通う高校のトイレットペーパーさえこっそりと持ち帰りなんとか山田家を支えている。貧乏な家庭で長男が家族を支えるというテーマは今までにも似ているドラマが今までにも存在していた。そして見るたびに感動し涙が溢れる。なぜだろう。必死に家族を守る姿に感動していたのだろうか。涙するまでのシーンはそれ程多くはなかったがこれほどにまで共感した作品は久々だった。それは何故か、私にはもう気づいていた。その理由は、私の家族構成にあったのだ。父は婿として母の家に入った。父は非常に心が優しい人間で几帳面で綺麗好きだ。そんな性格の父は姑と何度も喧嘩をしていた。仲が悪く話などしないほどだった。そんな彼は先ほど伝えた性格の通りのでついには病気になった。その病名は「うつ病」だ。近年では良く耳にする病名だが当時心の病気など今よりも理解されにくかった。当然働けなくなった父は部屋からもなかなか出てこないという悲しい結果になる。つまり一家の大黒柱がうつ病という理由で部屋から必要な時にしかでてこないわけで、家族はバラバラになり金銭的にも徐々に苦しくなってきた。私は三兄弟っみんな大学まで卒業していたが、その学費は姑の貯金から支払われた。母は働きにいった。姑と父と母の仲はどんどんギクシャクしてしまった。私の実家は金銭的に困っていたのだ。山田太郎と似たようなとこが沢山ある。共感できることが非常に多いため私は自分の過去と比べていたのだ。比べるつもりなど少しもなかったのに、この作品の山田太郎を見ていたら似たような境遇のためかこの作品と自分の過去を何度も行き来する私がいたのだ。辛かった思い出を急に思い出してしまったからか、山田太郎という人間が急に逞しく見えてきたのだ。学生が兄弟を支えていくのは自分の時間を削るわけなので当然山田太郎には友人さえ出来ないと思っていたが、櫻井翔が演じていたクラスメイトと少しずつ仲良くなる。裕福な感じが少し憎たらしいと感じたのは私も一緒だった。
絶対に乗り越えられると言った母の言葉
どんなに頑張っても自分の現在いる場所からは逃げられない。逃げるわけにはいなかったのが山田太郎だ。自分の人生は自分でいくらでも良い方向へと向けられる。頑張って辛抱したり耐えてみたり、重たい岩が体の上に落ちて身動きが取れなくなったとしても私達の未来は変えていける。ほんの少し知恵をだしそれを実践してみる。成功した時には自分の生き方に誇りを持てるくらい強くなれる。これから続くこの苦しい生活だって絶対に乗り越えられると私の母は言っていた。当時小学生だった私には難しく言葉の意味が分からなかった。結婚して30歳を迎えたが母の言葉が頭から離れずにずっと私を見守ってくれている。そう考えたら山田太郎は精一杯自分の人生を受け止めて必死に頑張っていると感じることが出来る。だとしたら、私は山田太郎に似ているところがあるというのは違うかもしれない。貧乏なところは一緒だが、山田太郎のように私は苦労をしていない。学生時代を普通に過ごして大学まで行った。大学生活の4年間も普通に楽しく過ごしていた。
山田太郎と私の母
山田太郎は私ではなくて私の”お母さん”だ。私は本当の苦労はしていない。仕事とアルバイトをこなしていた母、必死に働く母の姿とそれでもお金が足りないという母の姿が目に焼き付いているのだ。山田太郎は私のようにお金がないとなげいているだけの子供とは全然違うということに気付き少し恥ずかしくなった。それと同時に母の偉大さを感じると共に、母と似たような生活を送る山田太郎の凄さがじわじわと伝わってきた。私は裕福な育ちに憧れを抱いていた。山田太郎のように自分で状況を変えていくことが未来を変えることに繋がる。彼が家族を守る姿は私の母親に少し似ていた。どんな困難も乗り越える力を持っている。
今、私は母となった。自分は家族に困難が生じた時、彼等を支え守ることが出来るのだろうか。そんな自信はないと心の奥でつぶやくもう1人の私がそこにはいた。そして母の強さを深く感じたのだ。
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