人間の存在意義について考えさせられる - 銀色の髪のアギトの感想

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銀色の髪のアギト

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映像
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ストーリー
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キャラクター
4.00
声優
5.00
音楽
5.00
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人間の存在意義について考えさせられる

3.63.6
映像
5.0
ストーリー
2.0
キャラクター
4.0
声優
5.0
音楽
5.0

目次

トゥーラに一目惚れ

アギトはトゥーラに一目惚れをしていることから、物語が始まっていきます。そして、トゥーラに対するアギトの気持ちは、相当に強いように伺えます。逆に、そうでなければアギトの行動に理解できないところが多いように思います。

ただ、その部分の描写が弱いので、アギトの気持ちがどこにあって、アギトのとる行動の必然性が弱いように感じてしまいます。トゥーラのことが好きで守りたい、一緒にいたい、という気持ちを全面に押し出した方が飲み込めたように思います。

振り返って考えてみて、アギトはトゥーラのことを物凄く好きなのだと感じました。それは、彼の行動でしか、想いの強さを感じ取ることができないからです。森との同調を大切にする為、今の時代を生きる人間を守る為など、大義名分は成り立ちます。しかし、アギトは二度と元には戻れない強化人間になり、単身で敵地に乗り込んでいく理由は、トゥーラの存在に他ならないと思います。

大義名分を重んじているのであれば、単身で敵地に乗り込む理由としては弱い気がするのです。仲間を募って準備を整えることの方が、必然性が高いように思います。

そこの部分がハッキリしていれば、もっと物語を楽しむことができたのではないか、と残念に思えてなりません。

 

文明の存在

大きく3つの勢力に分かれていることが、分かりやすく描かれていました。森という存在、森と中立する人間たち、森と対立する人間たち、この構図は分かりやすいです。そして、複雑にしていないことで物語展開も理解しやすい印象です。

対立構造においても飲み込みやすい設定だったように思います。分かりやすいということが、メッセージ性を明確にしているように思います。環境問題、環境破壊、遺伝子操作というところに焦点をあて、人間の存在意義を訴えたアニメ作品なのではないでしょうか。

対立構造を分かりやすくしていることで、人間ドラマというより、社会問題における風刺という意味合いの強いことが伺えます。また、恋愛要素がないことも、その意味合いを強くしているように思います。

 

この「銀色の髪のアギト」というアニメ作品において、人間の文明社会は、敵勢力に描かています。そして、印象悪く描かれており、文明そのものを否定しているように感じます。また、シュナックの存在はその象徴で、森の存在を消すには、たくさんの人間の命を奪うことを躊躇わないことから、悪い印象を増長させているように思います。シュナックという人物は、過去の過ちを清算したい、という気持ちが強いように感じます。その為には、手段を選ばない、という冷徹ぶりは悪役として充分だと思います。

 

森の存在

意志を持った森を、同調すべき存在として描かれている側面が大きいです。しかし、水の所有権によって、力関係においては上位にいます。文明側の立場からすれば、森の存在がなくなれば、水に不自由することがなくなるという考えです。そして、それにより、人間がもっと豊かに暮らせる、というように思い描いているのでしょう。

そして、森に同調する人間たち、森と敵対する人間たち、客観的にみれば、片方が正解、片方が不正解という図式でもないように思います。また、この2つに分かれていることで極論になっている気がします。

こういう構図にしていることで、どちらかを選択する、という図式になりがちです。意図的にそうすることで、観ている方を操作しているように思えます。本来はお互いにWin-Winな関係になれれば、それが理想の姿なのだと考えます。

 

人間の感情表現

この部分が、「銀色の髪のアギト」において弱い部分なのだと思います。冒頭に記載した、アギトとティーラの関係が代表例だと思います。

しかし、人間同士の駆け引きの要素が強く、人間同士の仲間意識など、感情表現が作品全体を通して薄いように感じます。ティーラが人間同士の仲間意識や倫理観に気付き、アギトと一緒に、シュナックの計画を阻止しようとします。

ただ、ティーラの行動についても、必然性が弱いように感じて、違和感を覚えます。ティーラは長い眠りから目覚めて、森と同調していた人間たちに面倒をみてもらったという意識が強いです。しかし、その期間は短く、文明側の人間たちの方に行きます。しかし、人間同士の感情表現がもっと豊かで、そんな人間関係を構築あれば、今の時代を生きる人間たちを大切にするティーラの行動にも必然性が高くなったように思えてなりません。

基本的には、人間ドラマという意味が強いはずの作品だと思うのです。主人公の一目惚れから、物語は始まり、物語の結末も人間同士の絆があって着地できるよう感じます。しかし、そこの描写が弱く、物語だけが進行していくので、それぞれの人物の根幹にある感情が伝わってこないです。

人間たちの喜怒哀楽をもっと強く表現した方が良かったと思います。それによって、それぞれ登場人物の行動にも必然性が生まれるからです。

アギトとティーラの関係も微妙な感じで物語も終わってしまいましたし、人間たちの対立構造も違ったかたちで締め括れたのではないか、と思います。

メッセージ性や、感情表現と必然性に納得がいかず、少し残念な気持ちになってしまうアニメ作品でした。

 

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