旧作であることを感じさせないクオリティー - トップをねらえ!の感想

理解が深まるアニメレビューサイト

アニメレビュー数 2,474件

旧作であることを感じさせないクオリティー

5.05.0
映像
5.0
ストーリー
5.0
キャラクター
5.0
声優
5.0
音楽
5.0

目次

庵野秀明さんの初監督作品

庵野さんといえば、代表作に初監督作品である「トップをねらえ!」、そして、「不思議の海のナディア」、さらにアニメファンでなくても有名な作品「エヴァンゲリオン」シリーズを手掛けた方です。それぞれの作品に同じ要素や共通した設定が脈々と受け継がれているものがあるのも面白みのひとつだと考えます。

 

「不思議の海のナディア」との共通点

まずは、「トップをねらえ!」と「不思議の海のナディア」ですが、両作品は分類されるジャンルが全然違います。「トップをねらえ!」はSFロボットものであることに対し、「不思議の海のナディア」は冒険活劇に仕分けされます。そして作品のメッセージ性も全く異なりますので、知らないと同じ方が制作したアニメ作品であることにも気付かないのではないでしょうか。

しかし、共通項と呼べるものがいくつかあります。

ひとつは、女性を主人公にして、女性にスポットを当てた作品であるということです。「トップをねらえ!」主人公のノリコ、そして「不思議の海のナディア」主人公のナディア、それぞれ性格は全然違いますが、女性の個性を独特の感性で魅力的に描いている点は共通しているように思います。また主人公だけではなく、主人公に女性を据えることで、他の登場人物においても、女性にスポットが当たることが多いように感じます。それぞれの作品において、ターゲット選定をどのように考えていたのか不明ですが、内容を考えると男性寄りなのではないか、と思います。そういった作品であるのに、女性を主人公に据えるという発想が、斬新なものに感じさせます。

二つ目は、主人公の声優さんについてです。意図的に狙いがあったのか分からない部分ですが、「トップをねらえ!」の主人公ノリコ、そして「不思議の海のナディア」のもう一人の主人公と呼べる存在であるジャンの声優さんは同じで日高のり子さんが演じてられています。日高のり子さんが売れっ子の声優だったという背景はあるのかもしれませんが、両作品のイメージが重なる部分と考えられます。

三つ目に、それぞれの作品に登場する宇宙船です。どちらの作品においても「ヱクセリヲン」という名前の宇宙船が登場します。名称が同じなのは、庵野さんの意向のようで、「ヱクセリヲン」という名前がお気に入りであることが伺えます。ただし、「トップをねらえ!」に登場している「ヱクセリヲン」と、「不思議の海のナディア」に登場する「ヱクセリヲン」ではデザインが異なります。また船の肩書きも変わっており、「トップをねらえ!」では「第四世代型ヱクセリヲン」と呼ばれていることに対して、「不思議の海のナディア」では、「第四世代型超光速恒星間航行用超弩級万能宇宙戦艦ヱクセリヲン」が正式名称となっており、第四世代という部分は同じでも設定が異なることが伺えます。

 

「エヴァンゲリオン」シリーズとの共通点

庵野さんは「トップをねらえ!」を初監督され、次に「不思議の海のナディア」を手掛けて、「新世紀エヴァンゲリオン」というアニメ作品で大きく名前を知られた方ではないでしょうか。「トップをねらえ!」と「新世紀エヴァンゲリオン」では、その間に、「不思議の海のナディア」が挟まれていることもあり、共通点もなかなか見付かりません。

「不思議の海のナディア」と「新世紀エヴァンゲリオン」では、共通点がいくつか見受けられます。

「トップをねらえ!」と「新世紀エヴァンゲリオン」では共通点が見出せないのですが、「エヴァンゲリオン」シリーズは劇場版に、名前や内容、設定など大きく変えてリメイクされています。今は「新世紀」という部分を省き、「エヴァンゲリオン」を「ヱヴァンゲリヲン」という表記に変えて、4部作で構成された物語のうち「序」「破」「Q」という3作品が公開済みで、最後の劇場作品が待ち望まれています。ただ、ここで注目するのは、「エヴァンゲリオン」を「ヱヴァンゲリヲン」に意図的に変えているという事実です。

非常に「ヱクセリヲン」を意識した名前の変え方に感じられないでしょうか。旧仮名である「ヱ」を用いること、そして「オ」を「ヲ」と読ませることが意図的なものを感じさせます。この意図にどんな意味が含まれているのか、庵野さん自身しか本当のところは分かりません。しかし、それぞれの作品に深い愛情を込めている、ということを伺えるように思います。

 

ノリコの成長

「トップをねらえ!」主人公ノリコの成長は、著しいものを感じさせます。落ちこぼれで、未熟だったにもかかわらず才能を見出され、ガンバスターのパイロットに抜擢されます。そして、仲間の死や、自らの努力で才能を開花させ、大きく成長していく様子が印象的です。同じパイロットとして憧れで、雲の上の存在あったカズミに追い抜き、追い越していく成長の早さは、地球と宇宙空間で異なる時間の流れの相違では説明できる早さではないと思います。

カズミが教官オオタを想い、感情的に戦闘から逃げ出そうとした際、カズミのことを「お姉さま」と呼んでいたのに、「カズミ」と呼び捨てにした場面が胸をアツくさせました。落ちこぼれだったノリコは大きく成長して、あの瞬間にカズミと並び、追い越した場面だったように思うのです。アニメの中で、唯一だった呼び捨てにした場面は印象に残っています。

「トップをねらえ!」の中でも、一位二位を争う山場だったと思いますし、ノリコ・カズミで合体して、登場したガンバスターがカッコ良かったです。ある意味、あの瞬間はノリコも何かに目覚めていたし、カズミも自分自身の感情を乗り越え成長していました。

最高のチームワークで、アニメそのものの演出もうまくされており、挿入歌として流れていた「トップをねらえ!~Fly High~」にはカッコ良過ぎて震えました。

 

最後に思ったことは、SFロボットアニメなのに、描いている内容は「スポ根」に近いものがあって、その点においても斬新であるということです。

 

あなたも感想を書いてみませんか?
レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。
会員登録して感想を書く(無料)

他のレビュアーの感想・評価

関連するタグ

トップをねらえ!を観た人はこんなアニメも観ています

トップをねらえ!が好きな人におすすめのアニメ

ページの先頭へ