登場人物は全員キ○ガイ!(セラスを除く)な「ドリフターズ」の平野耕太による三つ巴バトル漫画 - HELLSINGの感想

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HELLSING

4.554.55
画力
4.13
ストーリー
4.48
キャラクター
4.70
設定
4.05
演出
4.42
感想数
4
読んだ人
11

登場人物は全員キ○ガイ!(セラスを除く)な「ドリフターズ」の平野耕太による三つ巴バトル漫画

4.74.7
画力
4.5
ストーリー
4.4
キャラクター
4.8
設定
4.2
演出
4.7

目次

主人公は最強(作品中だけでなくて漫画界最強?)の吸血鬼、まず死なない

HELLSINGといえばかなりの人気があるバトル漫画作品であり、全巻で10巻なので揃えやすく、また内容の充実度も高いので男性になら特にオススメしたい漫画である。子供には薦められないが。

某オモシロ大百科でも紹介されており、そこには「登場人物が全員チートを使っており、とりあえず死なない。死んだとしてもチートを上回るチートによって死んだだけであり、結局チートである」などとヒドい紹介をされている。まぁ実際にはほとんどその通りなので、言いたいことは分かるのだが…。ちなみに主人公のアーカードについては同ページでは「チートが多すぎてもはやバグ」などと書かれていた。初代ポケモンで例えるならセレクトボタン+Bボタンみたいな存在だろうか、これはゲームのデータではなく概念みたいなモノだが。

主人公のアーカードは作中で最強であり、大口径ハンドガンによる銃撃も強いのだが、まず死なない点が強い。普通、吸血鬼といえば日光を浴びて灰になる、銀の武器に弱い、心臓に杭を打つと死ぬ、十字架・聖水に弱い、聖書の内容に耳を背ける…などといった弱点があるが、このアーカードには何もない。日光でさえも「大嫌いなだけだ」などと言って受け付けない始末。吸血鬼の弱点の設定が生かされたのは南米に行く際、セラスが完全な吸血鬼ではないので「吸血鬼は流れる水を踏破出来ない」という箇所と、ミレニアムのリップ中尉の部隊が奪った空母イーグルで示威籠城戦を展開した時に使われた件くらいだろう。

ちなみにアーカードは殺しても死なないが、終盤で得た命の数を足した総数は342万4867である。他の漫画のキャラで比較すると、「鋼の錬金術師」のヴァン・ホーエンハイムが50万人分の命で、お父様の方は少しの間5000万人分の命を新たに手に入れたが、逆転の練成陣によりすぐにアメストリス人の魂が開放されたので、結果としてヴァン・ホーエンハイムと同じ数で間違いないだろう。50万と342万超の命のストック…もちろん序盤・中盤はもっと少なかっただろうが、何万回も何万回も殺さないと死なない設定の主人公なんて、HELLSINGくらいなものだろう。強すぎて誰も敵わない。

 

ここも見所、名言とポージングの多さ

「HELLSINGで思いつくことと言えば?」なんて質問をしてみたら、真っ先に少佐の演説を思い浮かべる人も多いことだろう。単行本4巻最後の話に、実に13ページもページ数を使って少佐が演説している一連の展開は他の漫画家には真似できない芸当だろう。平野耕太という漫画家を人がどのような思い入れをしているかは分からないが、こんな漫画を描けるのだから非凡な人間なのではないだろうか。

なお、一般的にはHELLSINGの名言で挙げられているのを聞いたことが無いが、個人的には単行本6巻に掲載されている第4話「THE SCREAMER」を挙げたい。12ページの話なのだが一話丸ごとが名言であり、セリフの長さと内容については少佐の演説に匹敵する(と思っている)。アンデルセン神父とイスカリオテによるモノで自分達の存在をとてもカッコよく表現しているので、気になった人はぜひ見て欲しい。

他にもHELLSINGの名言といえば「化け物を倒すのはいつだって人間だ。化け物は人間に倒される」、「見敵必殺<サーチアンドデストロイ>」、他にも数え切れないほどあるだろう。と言うよりも、単行本を手にとって適当にページをめくっていれば名言が見つかる気もする。ネットで名言スレなんかに書き込む機会があったら気に入ったこれらの名言を書き込んでみてはいかがだろうか。

また、キャラのポージングも魅力的であり、こちらも話題には上らなさそうだが、ジョジョやトライガンのキャラにも匹敵するステキポージングがあったりする。これもイチイチ挙げていくことはしないが、個人的には大尉とセラスの戦闘の、大尉がセラスに至近距離でメーターモーゼルを撃とうとするところなんかが印象に残っている。漫画であろうと映像作品であろうと同じなのだが、作り手は登場人物たちや持っている武器をコマや画面にバランスよく収めなくてはならないので、こういった部分はセンスや腕の見せ所なのだ。

 

キャラだけでなく、人類は全員戦争狂(ウォーモンガー)?

HELLSINGのキャラは全員生き生きとして戦っている、まるで戦争をするのが生き甲斐であるかのようだ。アンデルセン神父も最後の大隊もイスカリオテも、もちろんアーカードも全員だ。他にもインテグラ(何回か戦闘シーンがあるが)やマクスウェルも少佐も戦闘には直接は参加しないが皆楽しそうだ。戦争の暴力を楽しめるタイプの人間たち、ということを作者は描きたかったのだろうか。

キ○ガイだのウォーモンガー、ウォーマニアックスだのと書いたが、実はこういった事情は何も漫画だからとか、キャラがそういう風に描かれているといった事情ではないと思う。結論から言うと、我々人間は誰しもが暴力的な部分があるということだ、それが多いか少ないかだけの違いである。

別の漫画の世界にも暴力に関する名言はとても多い。Fate/Zeroでは(小説原作だが)衛宮切嗣が「人類の本質は石器時代から一歩も前に進んじゃいない」と戦いに絶望していたし、ヨルムンガンドではヨナが「悪魔みたいな力が武器にはあるんだ」と言っていたし、BLACK LAGOONでもキャクストン少佐がレイに「いつか本当に戦争がなくなると思うか」と言っていた。牙の旅商人ではゲンゾが「(滅んだ旧人類は)人殺しの道具作りだけはやたらと上手かった」とも言っていた。

これが知っている漫画の枠を超えて歴史上の偉人になると、どんな人物も「人間は暴力的に出来ている」とか「戦争はなくならない」というような発言をしている。間違っても「人間は平和的、友好的」とか「人類皆兄弟」みたいなことを言っていた偉人がいたのを聞いたことがない。いたとしたらそういう人間は頭がイカれていることだろう。おそらく人間は争い戦うように、神が下品に作り上げたのだろう。かといって命が保障されている人生も人間を腐らせる気がするので仕方の無いことかもしれない。ヒモの男みたいな人間だらけになったらなったで人類終わりのような気もするからだ。

HELLSINGには戦争というか、人間の本質が描かれているのかもしれない。作中でミレニアムは最終的に全滅し(シュレディンガー准尉はアーカードの中に存在するが)、イスカリオテもハインケル以外は全員死に絶え、主人公サイドの王立国教騎士団は当初からの3人とワイルドギースがいくらか生き残っただけである。人が死にまくった漫画として有名かもしれない。戦って皆いなくなって何も残らない、人類史でよくありそうな光景だ。HELLSINGという作品はこういう縮図になっているというか、人間は戦って数を減らし合って、生き残った者たちが苦い思いを抱えながら生きていくように出来ているのかもしれない。

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