受取り手に色々と考えさせますね~
きっと解釈は人によって違って構わないんですね
まずは、登場人物の名前が明確に設定されていないし、どのような意図で制作されたアニメ作品なのかも、よく分からないですね。原作の漫画や小説などが存在するのか調べてみましたが、どうやらないみたいです。(見付けられなかっただけの可能性もありますので、そこはご了承ください)
不思議な世界観で展開されるアニメ作品で、物語と呼べるものでもありませんね。
ストーリー展開という要素もほぼありませんし、時間尺が前提で制作されたアニメ作品なのか、それとも制作するうえで結果的に30分という枠になったのかも理解できません。しかし検索してみると、こんなに短いアニメ作品であるにもかかわらず、カットされてしまった場面が存在するようです。どのような理由や背景でカットされたのか分かりませんが、本当に色々と考えさせてくれるアニメ作品です。
色々と考えさせるがゆえに、解釈は人によって異なるでしょう。しかし、これだけスッキリした構成に仕上がっていると、制作側はそれを良しとしているようにも思えます。
まず面白かったか、ひどい作品のどちらに分類されますか?
私は新鮮・斬新な要素が多くて、良い意味で攻めた内容でもあると思えますし、面白い作品に分類します。攻めた、というのは、突拍子もない奇襲戦法という意味です。逆にそれを受け入れらない方もいるかもしれませんが、制作スタッフはそれを見込んで、敢えてこのような作品に仕上げているように思えるのです。
唯一笑ってしまった場面
汚職したことが原因で、このコロニーみたいなところにいた元軍人がいましたよね。他の登場人物に、過去に犯した犯罪を責められる場面があります。しかし、この元軍人は、世界中の金融機関のネットワークがダウンしなければ、みたいな発言をしますよね。
実はこの金融機関のネットワークがダウンしたのは、登場人物の中にいるメガネ少女が過去に犯したことです。
過去に詐欺をしていたと思われる金髪女性の登場人物と、それぞれどんなことをしてきたのか、お互いに打ち明け合う場面がありました。これが伏線となっており、元軍人が他の登場人物に責められる場面がトリガーとなって笑いを誘います。実際に、元軍人の発言があった後、金髪女性とメガネ少女は目を合わせて、お互いに「あっ」といいます。その微妙な間は、「笑い」を狙った演出・展開であったことは間違いないように思います。
この作品に、笑わせるという要素を含んでいると思っていませんでしたので、意外な部分でした。
物語のカギを握る老人
登場人物にいる老人は、このコロニーのような存在や、いきさつ、背景を全て理解しているであろう人物です。
しかし偏屈なのか、ほとんど何も語らないですよね。この老人をうまく利用することで、脚本としては、観る側に物語の中身や展開、設定などを伝えることができたと思うのです。しかし、口数は少なく、余計な話は一切しません。敢えて、このようなキャラクター設定をして、観る側に考えることを促しているように思えるのです。
また、この老人の口数が多いと、それはそれでアニメ作品のクオリティーという部分でも不自然さが目立ち、つまらない作品になってしまったのではないでしょうか。
この作品から受け取るメッセージ
感染して猛威を振るう病気、または人類の意図的な細菌兵器やバイオテロといったものへの恐怖が分かりやすい部分です。予防策を張っていたが、つまらないエラーで、細菌が世界中に広がってしまいます。隔離だけでは防ぎきれない自然の驚異、という部分も恐ろしさを強調することでメッセージにしていたのだろう、と考えさせられます。
「謎かけ」として一番強烈だったのは、コロニーから脱出してきた青年と、それを取り囲む軍人たちの顔がまったく同じだったことなのではないでしょうか。実は、このアニメ作品の一連のやりとりは、なにか黒幕という存在があって、意図的に、そうなることを見込み、仕込んだものと捉えることができます。サッと流される場面ですし、コロニーから脱出する権利を得たのは誰だったのか、明らかになる場面でもありました。
また身近で可愛い猫という存在を細菌感染の媒体とすることで、見た目では分からない本質という部分も描いていたのではないでしょうか。子どもたちが可愛いと声をかけて、無邪気に追いかける場面がありますが、そこに何も知らないことへの恐怖を感じさせてくれます。
そして、きっとこのアニメ作品では最後まで描かれていませんが、生き残る人は誰ひとりいないのではないでしょうか。そのように想像させるアニメ作品ですよね。
私がこのアニメ作品から読み取るメッセージは、人類のちっぽけさ、愚かさ、なのだと思うのです。争い合う人間、それぞれ立場が違う人間、また大人や子どもと、数多くの人間がこの世の中には存在します。またこれまで長かったのか、短かったのか、時間をかけて発展してきました。そして、これからも文明はまだまだ発展していくことでしょう。
しかし終わるときは、あっという間なのかもしれませんね。
かつて地球の生態系で頂上にたった恐竜たちは、地球に隕石が衝突したことによる環境の変化で絶滅しました。今の地球の生態系、頂上にいる人間たちは、隕石のような大きなものではなく、細菌という目にも見えない小さなもので、瞬く間に滅びていくのかもしれませんね。
そんなことを考えさせてくれるアニメ作品であったように思います。
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