新しいタイムスリップ映画
話題の映画ながら見たのはちょっと遅めでした
この作品のテレビCMや宣伝活動は変わったもので、きっと面白いコメディ作品なんだろうなぁ。という印象でしたが、わざわざ映画館に行ってまで見たいというほどではありませんでした。
私がこの映画を見たのは少し変わっています。そこは飛行機の中でした。イタリア旅行からの帰りの飛行機の中です。旅行してみて、イタリアにとても興味を持ちました。実際のテルマエの遺跡もみましたし、映画の設定になっている古代ローマ跡地にも行きました。旅行の思い出に浸りながら、あの遺跡だけの土地で一体古代ローマの人々がどんな生活をしていたのかを知りたくなったのです。
日本とローマの共通点はお風呂好き
古代ローマ時代の大浴場と、現代日本のお風呂をテーマにした時代を越えたお風呂物語です。古代ローマにはテルマエと呼ばれる大浴場がありました。そのローマのテルマエを作る、浴場設計技師のルシウスはマンネリ化したテルマエに悩んでいました。テルマエに入り悩んでいると、不注意からルシウスは溺れてしまうのです。
目覚めた先は日本の銭湯でした。銭湯には古代ローマ人とは全く容姿の違う、ルシウスいわく【 平たい顔族】が沢山います。見た目は貧相な平たい顔族のお風呂は、ルシウスが今まで見てきたテルマエよりも技術が進んだものでした。
ルシウスが銭湯中を徘徊して女湯に行くと、そこでこの映画のヒロインの山越真実に出逢います。漫画家志望の彼女は自分の書く漫画の絵に行き詰まっていました。真実はルシウスの絵を描きたいと思うのです。平たい顔族が奢ってくれたフルーツ牛乳を飲むとルシウスは古代ローマに戻っていました。
ルシウスは銭湯で見た、壁の大きな絵とポスター、洗面器にフルーツ牛乳を真似するのでした。それからというものの、ルシウスは新しいテルマエのアイディアに息詰まると、お風呂や池で溺れることをきっかけにして、現代日本にタイムスリップしてきてしまうのでした。そして必ずそこには真実がいます。真実はローマの言葉を覚えて、ルシウスが現代に来る度に手助けしました。
ルシウスは現代の技術、温泉卵、バブルバス、ウォシュレット、ジャングル風呂、薬膳温泉などさまざまな技術を持ち帰り、ルシウスならではの解釈でマネするのでした。親密になってきた真実はとうとうローマについて来てしまいます。ローマでは、一緒に来てしまった父親や近所の仲間のオジサンたちと一緒に、ルシウスを手伝い、新たなテルマエを作るのでした。
ロケ地やキャスティング、原作との違い
この映画のキャスティングのすごいところは、ローマ人なのに日本人が演じているということです。主人公に阿部寛さんをはじめ、市川正親さん、北村一輝さんといった顔の濃い俳優さんが勢揃いです。宍戸開さんが普通の人に見えてしまうほどのキャスティングで、実際イタリアにもあんな顔立ちの方はいらっしゃいました。その他大勢の方は外国の方なのに、みなさんは違和感なく溶け込んでいます。
阿部寛さんは日本アカデミー最優秀主演男優賞を受賞されています。阿部寛にとってもローマ人なんて役は初めてですし、よく演じきったと思います。
ロケ地は古代ローマの街中での撮影はイタリアローマの郊外にある撮影所で行われました。つまり、あの素晴らしいセットはCGではなく本物の古代ローマを再現した建物なのです。他の海外映画でも使われているそうです。
日本で行われたロケは全て本当の温泉や銭湯です。真実の実家には那須温泉が使われ、実際にそこに入浴することも可能だそうです。ルシウスが猿を追いかけたのは伊香保温泉です。その他にも銭湯なども営業中ということなので、ロケ地を巡って映画の世界観に浸ってみるのも良いかと思います。
漫画が原作になっているこの映画ですが、一番の違いは原作には真実がいません。真実はこの映画のオリジナルキャラクターですが、真実がいるからこそ、この映画が成り立っていると思います。それくらい、この映画での真実の存在感は大きいです。
原作と映画に共通しているのは、ルシウスの解釈。ということです。ルシウスは古代ローマに現代日本のお風呂技術を持ち帰りますが、もちろん古代ローマにはそれを作る工具や設計図すらありません。それをルシウスがうまく考えて作り出すのです。例えばバブルバスです。日本ではスイッチを押せば、お風呂にバブルが広がりお風呂についた装置が勝手にやってくれます。ルシウスはそれを奴隷たちにやらせるのです。奴隷にお風呂の下に入らせ、口でストローの様なものから空気を送ります。それでルシウス流バブルバスができあがりです。そこがまた面白いのです。
銭湯によくある富士山の大きな絵ですが、ルシウスはそれを見てポンペイだと解釈します。イタリアにはポンペイ火山という大きな山があり、実際このポンペイ火山のふもとにはローマの街があり、テルマエもありました。私が見てきたのはそのポンペイ遺跡のテルマエです。日本と古代ローマのお風呂文化の共通点以外に大きな火山がある。というもうひとつの共通点があったのです。もしも、あの遺跡に富士山ではなく、ポンペイの絵が描かれていたらと思うとロマンがあります。
時を越えて国が違えど、お風呂が好きという共通点でローマと日本は結ばたという映画でした。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)