電脳という世界観を作ったGHOST IN THE SHELL(攻殻機動隊)
電脳という世界観を作り上げた作品
1995年に公開されたアニメ映画である「GHOST IN THE SHELL-攻殻機動隊-」
この作品は、近未来を描いたSF作品で、本当にこのような世界が今後くるのだろうなと思わされるリアリティのある作品だ。
そしてこの作品がきっかけでマトリックスができたのは有名な話である。
この作品の一番の功績は、電脳という世界観を作り上げたことだろう。
電脳とは、情報の海(ネット)に脳から直接アクセスし有益な情報を引き出し恩恵を受けることである。
現在は、ネットを携帯やパソコンから視覚情報として認識し、キーボード、タッチパネル、音声操作により操作する。
このため、欲しい情報が見つからなかったり、タイムラグが発生するなど問題も多い。
しかし、この作品の舞台である2029年には、「電脳」があり、自分の意識を直接ネットにダイブさせ必要なサービスを得ることができる。
こういった背景の中で、物語ははじまっており、この時代設定だけでも興味が惹かれる。
そして冒頭のシーンで、外交特権で亡命を企てるターゲットに対し、政治的理由からなにもできない部隊(公安6課)。それを尻目に、光学迷彩を身にまといビルの屋上からダイブしてターゲットを暗殺する草薙素子。
法に縛られない超法規的な権力と戦闘力を所持していることを視聴者に紹介し今後どのような話が繰り広げられるのか興味がわかないわけがない。
本当に興味を鷲掴みにしその後も魅せる作品としてまとまっている。
登場人物が皆プロフェッショル
この作品のもう一つの面白いところは、登場人物が皆プロフェッショナルでリアリティーがある点である。
草薙素子は、全身義体で他のキャラクターを超越した身のこなしと電脳化による情報収集能力、そして素としての頭の回転力。
銃を発砲する際も、他のアニメでは、たらたらとセリフが長いが、最低限の警告、または即発砲し無力化している。
また、登場人物のバトーはかつて軍隊に所属しておりレンジャー部隊で培った戦闘技能と集団生活により体得した人間味というか人情を持ちあわせており、作品を人間臭く面白くしている。
この映画の監督がどのように取材したのかは、分からないが、9課側の登場人物の行動には無駄がなく常にプロフェッショナル。そして、組織で動く際も最低限の意思の素通でしっかり成果をだしているところが、ただただ脱帽である。
電脳という設定や背景がなくてもこの登場人物だけで十分楽しめる作品である。
人間とはなにか、個とはなにかを考えさせられる
うえの2点は、作品の設定や背景であったが、この作品のテーマは、究極的には「人間とはなにか」と問いているのではないか。
近い未来、電脳化、あるいは電脳化に近いことは起こると思われる。
その場合、脳の情報を電子化した場合、自分の記憶の情報は本当にオリジナルなのか。
ネットの海にダイブするなかで、知らずに外部から書き換えられているのではないか。
あるいは、そもそも自分というオリジナルはなく、作られた自我であったのではないか。
これは、近未来の科学へのアンチテーゼでもあり、電脳化への警鐘である。
全身義体で、自分を感じることが「電脳」でしかないできない草薙素子を通してこのテーマを探求している。
具体的には、草薙素子は幼少の頃、ある事情で身体を捨てなければならず結果的に電脳化し、全身を義体化していた。当時は義体化の技術は発展途上であったため、実験の面も多かったと他の情報で聞いたことがある。
このような事情から電脳世界とともに生きてきたため、他よりも巧みに義体を使いこなし電脳世界でもより自由に行動できた。このため、この能力をかわれ公安9課として活動している。
そしてこの映画の中で、他人の電脳の情報を書き換え操ったり、擬似人格を植え付ける事ができる「人形使い」が現れた。
実際に、操った男を利用したり、公安9課の義体を整備・支給している工場をハッキングして、全身義体を操作するなどの事件が発生した。
仮に自分が電脳化していたら、恐怖とともに自分を疑ってしまうと思われる。
そして、草薙素子はこの「人形つかい」に興味を覚え、最終的には、大型戦略型戦車に意識を移した人形つかいと草薙素子は対峙することとなった。
激しい戦闘の後、人形つかいと有線でつながり意識を共有し、覚醒したような描写があったが、どうなったかは、次作のイノセンスにつながっている。
仮に、電脳化を極めた、草薙素子と人形つかいは、自分の外部記憶と同じように、ネットの海の情報も扱えていると思える。そこには、様々な個がためた情報をすべて扱うことができ、個の集合である神のような存在に昇華(ネットの海に自我を共有化)したのではないかと思われる。
この作品を見終わった後にもいろいろと考えさせられる作品である。
是非、この素晴らし作品を見ていただきたいと思う。
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