天切り松 闇がたり
時は現在から大正へ戻る。老人、村田松蔵は雑居房で、思い出話を六尺四方にしか聞こえないという夜盗の声音「闇がたり」で物語が進められる。
つれあいは医者にも診せずに死なす、娘は女郎屋に売り飛ばす、酒と博奕に身を持ち崩したあげく、主人公、村田松蔵は数えの9歳のとき父親に、帝都に名を馳せた盗っ人の親分『目細の安吉』一家に売り飛ばされる。
目細の安吉親分を筆頭に、説教寅、振袖おこん、黄不動の栄治、百面相の常、一本筋の通った盗っ人一家の下っ端として迎え入れられた松蔵。なかでも説教寅はきっと、現代では嫌われるタイプの人間だと思う。けれど、怒るにしてもやっぱり一本筋が通っているから怒られてもきっと腹が立たないでしょう。
そんな一家は、盗まれても困らぬ汚職、悪徳で金を儲けた人や、天下のお宝を盗み取る一方、金に困った貧しい者には分け与える。
現代の盗っ人と言えば、オレオレ詐欺、ひったくり、スリや強盗もあるけれど、だませる人はだます、取れるものは取る。己の欲のために、弱きもの、守らなければならない人達でもだれかれ構わず、むしり取る。
犯罪を肯定しているわけではないけれど、平成の今、義理とはなにか、仁義とはなにか、人情とはなにか、粋でいなせな江戸っ子盗賊が教えてくれる。この本を読めば、「昔は良かった・・・」という、あなたの周りの年配者の気持ちが少しはわかるかもしれません。(全4巻)
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