ドラマチックな刑事の日常 - 踊る大捜査線の感想

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ドラマレビュー数 1,147件

踊る大捜査線

4.104.10
映像
3.90
脚本
4.40
キャスト
4.70
音楽
4.40
演出
4.30
感想数
5
観た人
7

ドラマチックな刑事の日常

4.04.0
映像
3.5
脚本
5.0
キャスト
5.0
音楽
5.0
演出
4.5

目次

音楽が彩る世界観

これまで様々なドラマを見ているが、好きな刑事ドラマの中で不動の一位に君臨し続けているのが、「踊る大捜査線」である。ヒットするドラマには、印象的な音楽がある。特に刑事ドラマには、事件が起き、それを解決するという絶対的の流れがある以上、シーンごとに視聴者を釘付けにする音楽が必要不可欠である。「踊る大捜査線」と聞いただけで、頭にテーマ曲が響いてくる。その音楽を聞くだけで、作品の躍動感が伝わって来て、興奮する。

織田裕二の歌うエンディングソング、Love Somebodyも、魅力的な曲の一つだ。この曲は、レゲエ・ラヴァーズ・ロックというジャンルのマキシ・プリーストが楽曲提供者である。音楽には詳しくないが、ジャマイカの血をひく彼のレゲエのリズムには、南国の海に来たような癒し効果がある。

この曲を聴くと、「今日も事件が解決したな。めでたし、めでたし」と肩をなで下ろすことができ、ドラマを見た後、日常に戻る心の準備をさせてくれる。

トレードマークをそれぞれ持ったキャラクター設定の巧みさ

トレードマークを人は追い求める。「この人と言えばコレ」と言われるような強い印象を持ち合わせる事はとても重要で、そういうものを持っている人は、人気者になる確率が高い。トレードマークは、人との距離を縮め、相手を安心させる効果があるのかもしれない。それは一つのドラマ作品でも同じ事だと思う。

織田裕二演じる青島俊作は、カーキ色の着古したコート。コートが風になびく姿がかっこ良くてたまらなかった。深津絵里演じる恩田すみれは、黒髪ストレート。柳葉敏郎演じる室井慎次は、特徴的な表情と眉間のしわ。北村総一朗演じる署長が率いるスリーアミーゴスには、青色の制服などなど。こういったキャラクター設定は、漫画やアニメの世界で良く存在するが、ここまで徹底的にキャラクター設定がされているドラマは珍しい。出演者一人一人が楽しんで演じているのが伝わってくると、見てる方も楽しくなる。

ドラマを見る時に、「このキャラクターはどんな過去を持ち、どんな性格なのか」分かりやすいと、どんどん内容に引き込まれ、はまっていく。もしかすると、キャラクター1人1人が生まれてこのドラマの年代になるまで、どんな物語があったのか。どんな人生を歩み、なぜこのような性格になったのか、全て脚本家・君塚良一氏の頭の中には有ったのではないかと思ってしまうほどの脚本だった。内容に入り込めないドラマは、大体はキャラクターがなぜその行動を取ったのか背景が読み取れない場面が多い。そうすると視聴者は疑問を持つから気持ちにブレーキがかかってしまう。その点、このドラマにはそのようなマイナス要素が無く、どんどん物語の中に入り込ませてくれた。

シリアスとコミカルが絶妙に交差する

刑事ドラマである以上、シリアスにならざるを得ない事件が起こる。それを追う登場人物にも切迫したシリアスさが付きまとうのが常である。深刻すぎては見てる方も疲れてしまう。ドラマへの集中を持続させるためには、飽きさせない場面ごとの変化が必要だ。

事件が起これば本気で立ち向かう刑事も、普段はこんなに人間的で面白いのかと笑ってしまう場面も数多く入っている。「警察の署長がこんなにおとぼけだったら、いざという時頼り甲斐が無いな」と思わせる、上司に媚を売ってばかりのスリーアミーゴスのコミカルさは際立っていた。

警察も、一つの組織である以上、他の企業と同じような人間模様や出世争いがあるのかと意外な印象も受けたし、その巧みなギャップが笑いを誘う内容だった。

警察に青島のような刑事がいたら、人情味があり正義感も強いから相談相手には良いけれど、どこかでとんでもないミスをしそうな危うさもある。最初の交番勤務が一番似合っている印象を受けるが、そんな青島だからこそ、他の刑事には出来ない捜査ができる。ユースケサンタマリア演じる真下も、エリートでどんどん出世していくが、警察が持ち合わせてほしい強さとは裏腹のひ弱な印象さえ受ける。

そのドラマの舞台には根本的に居そうも無いキャラクターが存在するからこそ、面白くなる。そしてそのキャラクターが個性には合わない環境の中、切磋琢磨してどんどん成長していったり、反骨精神で汗を流して頑張る姿に、人はどんどん感情移入をするのだ。ギャップがあれば、人は立ち止まり興味を持ち、そのギャップを理解し埋めようとする。そういう心理にも入り込んでくるドラマだった。

美しい師弟関係

「踊る大捜査線」には、主人公の青島に複数の師弟関係があった。今は亡きいかりや長介が演じた和久と青島の関係、青島と真下の関係、すみれと青島の間にも、姉弟のような恋愛のような関係性があり、想像をかき立ててくれた。

そして何と言っても、エリートである室井と青島の関係は、ただただ美しかった。どんなに階級は離れていても、見つめている方向が同じならば、あのような絆が生まれる。

お互いに事件解決のため、支え合おうとする。勇気づけようとする。その姿がたくさんの感動を残し、そのドラマを見た人を今でも勇気づけてくれているのかもしれない。

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他のレビュアーの感想・評価

青島俊作の正義感が好きでした。

1990年代に放送された刑事ドラマの中で、一番好きな作品でした。織田裕二さん演じる青島俊作は交番勤務から念願の刑事になり、希望に胸を踊らせて刑事になったのに、正しいことをしようとする自分の理想と現実の違いに苦しむ様子が印象的でした。水野美紀さん演じる柏木雪乃が父親を殺されたショックで、入院している病院に毎日のようにお見舞いに行き、雪乃を励ますシーンに感動しながら見ていました。雪乃が後に警察の採用試験を受けて、見事合格し、青島の同僚になるストーリー展開には驚かされました。いかりや長介さん演じる和久さんが素晴らしかったです。いかりやさんは、それまで私はドリフターズのコメディアンとしての一面しか知らなかったのですが、俳優としても素晴らしいなと感動しました。深津絵里さん演じる恩田すみれと、柏木雪乃のどちらかと、もしかしたら付き合っているのか、将来付き合うことになるのかなと少し期待しましたが、それは...この感想を読む

3.53.5
  • まなみまなみ
  • 152view
  • 560文字

子供でも楽しめる警察ドラマ。

警察ものって結構堅苦しいドラマが多いと思うんですが、この踊る大捜査線はひと味違うんですよね。よくある2時間サスペンスとか、今流行りの相棒とか大人向けなのじゃなくて、子供でも見ていて楽しめる内容なんですよね。私も実際放送していた当時は小学生だったと思いますが、毎週楽しみにしていたのを覚えています。たぶんそれは、殺人事件うんぬんよりも警察署内での人間模様を描いている部分が多いからだと思います。青島役の織田裕二さんが、本当にハマリ役でした。あんな熱い刑事がいたら面白いのに~なんて子供ながらに思った記憶があります。あと、やっぱりいい味出しているのが今は亡きいかりや長介さんですよね。本当にステキな役柄でした。あと柳葉敏郎さんもかっこいいですよね。田舎出身のエリートで青島と出会ったことによりどんどん変わってくるんですよね。やりたい事をしたければ、偉くなって上に行け。そんな台詞がありましたね。実際の...この感想を読む

4.04.0
  • foomyfoomy
  • 141view
  • 529文字

人間関係が面白い

この作品は刑事事件の内容として面白いというより、青島の周りの人間関係であったり、個々のキャラクターの味が濃くて面白い。主人公以外のキャラクターがこんなに濃い作品は、なかなか無い。そして個々の役柄の個性がきちんと確立されてるので、見てて裏切られない。現場で闘う青島と、上の立場で闘ってる室井との関係性は、どちらの立場も色んなジレンマを抱えながら社会と闘ってる姿が良い。なので働くサラリーマンにとって、どちらの立場になっても2人の選ぶ選択は共感出来る部分があるんじゃないかと思う。熱い青島とクールな室井の姿は2人ともかっこいい。わくさんもこのドラマには無くてはならない人!!こういう心の優しい刑事さんはきっといるはず!と思わせてくれるような、絵に描いたような刑事さん。現場は足を使って事件を調べる、といういかにも昭和な刑事さんを描いていて素敵です。すみれさんは男に媚びないサバサバ女子でカッコいいし、署...この感想を読む

4.04.0
  • りりか123りりか123
  • 88view
  • 536文字

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